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2016年11月 7日

ズートピア(2016)

Disney


- 寛容、協調 -

ディズニー製のアニメ映画。動物たちが仲良く暮らす街で、凶暴化、野生化する動物が出現。捜査を担当するのは、夢を実現するため努力を続けて警官になったウサギ娘。

・・・・DVDで鑑賞。実によくできた話だった。世界中でヒットしているのも分かる。トイ・ストーリーやファインディング・ニモのような感動作とは路線が違うかも知れないが、健全な精神に満ち、家族で楽しめること、ユーモアに満ちていることなど、ディズニー調の独特な伝統に則っていた。

ジョン・ラセターが制作総指揮者になっている。メイキング編を見たら、以前よりさらに猛烈な肥満体になっていて、彼の成功の代償か、あるいは産物そのものの巨体と思えた。しかし、いかに肥満体になっても、彼が参画する作品は様々な面から検討され、観客の喜ぶツボを逃さないようにできているはず。その期待通りの完成度だった。

ナマケモノが役所の窓口を担当し、主人公をイライラさせるシーンはおかしかった。動作がゆっくりであるだけじゃなく、表情の表現も素晴らしく、劇場では大爆笑が起こっていたろうと想像できる。あのシーンのために、この作品はあるのかと思ったほど。相棒となるキツネの詐欺ぶりも、よく考えられていた。

主人公のウサギとキツネの間に友情は芽生えたが、恋心は生じなかったようだ。この点はどうすべきか、きっと検討されたはず。恋愛の要素を排除したのは、作品のテーマを絞る意図があったからではないかと思う。でも、面白さや感動を生むためには、二人を同性にして喧嘩をやらせるか、異性の間で誤解や別れがあったほうが良い。おそらく、同性の幼なじみの間柄のほうが、中心人物の関係としては理想的だったのでは?

アメリカ社会を表現しているのだろうと分かる設定。特に人種のるつぼと言われるニューヨークが、小動物の町並みなどで再現されていた。人種間の対立も、やんわりとだが皮肉をこめて表現されていた。表現のセンスが素晴らしい。見た目や伝統が異なる人種が、どのように折り合いをつけていくか、その点に関してどう表現すべきなのか、そこを考えてあった。

この作品は、イスラム圏ではどのように観られるのだろうか?上映されない国も多いらしいが、想像するに一般の住民、普通の子供達なら、たとえ中東の子供でも理解し、共感する子は多いと思う。劇場主の感覚では、イスラムの教えに反する内容と感じない。でも、過激な連中からすると、おそらく偽善性にからんで、この作品は攻撃対象と考えられなくもない。寛容は、都合が良すぎる面もあるものだから。

寛容、協調の精神は、野心を持つ人達からは攻撃されやすい。宗教的教義に反することや、純粋さを失って易きに流れるから寛容をウリにするのだ!といった批判は、やろうと思えばとことん可能。批判をする人は、それを怖れる人達から畏怖され、力を得ることができる。寛容な勢力に何かの小さな欠陥があると判明すれば、一気に批判勢力が力を増し、世論を席巻することもできる。寛容は攻撃に弱い。考え方がいい加減だ!と言われやすい。

しかも寛容は賛同者からも利用されやすい。寛容な状況は、商売が自由に行われるのに便利。広範囲に利益を求めたい勢力や、現在の体制を維持したい支配勢力には好都合。鎖国に近い体制で国民を守ろうと考える国に対して、寛容さがないことを問題視し、自分らの商圏に取り入れようと攻撃してきた歴史がある。人種差別に寛容だった歴史もある。腹黒い連中に、寛容さは利用されやすい。

利用されずに寛容精神を発揮したいなら、おそらく相手の隠れた腹黒い思惑を明白にできること、その意図する狙いを公開できることが必要だろう。攻撃してくる人間には一定のパターンがあり、方法を間違えなければ対処はできるはず。ルールを作って攻撃や悪用を防ぎ、利害を調停することも可能と思う。つまり寛容=思惑の公開義務が必要と、しっかり認識する必要がある。でも、そんな認識を持つ人は少ない。

寛容精神に基づく場合は、どのような調整努力にも常に激しい抵抗、暴力的批判が待っているだろう。調停を無視して、より大きな利益を目指し、力関係でことを決したい勢力は必ず存在する。想像を絶する強欲、狂信は珍しいものではない。この作品では敵意と悪意が敗北したが、なんだか都合の良い幸運にしか見えなかった。 

 

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