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2016年11月22日

ヘイトフル8(2015)

Thehatefuleight

- 安全確認の必要性 -

吹雪で密室状態になった宿に、賞金稼ぎや保安官、犯罪者達が集まった。不穏な雰囲気・・・やがて殺し合いが始まった・・・

・・・DVDで鑑賞。実によくできた話だった。人物の個性、話の設定、進行具合も非常に良く考えてあって、6つの章に分かれた古風なスタイルと、残虐な殺し合い、差別用語満載の毒々しいセリフなどがアンバランスなので、常に悪趣味な笑いがあるように仕組んであった。

主役は一応黒人の元兵士で、賞金稼ぎの男らしい。演じたサミュエル・L・ジャクソンの表情が、役柄と非常に合っており、最初から彼をイメージした役だったのかも知れないと感じた。毒のあるセリフが実に素晴らしい。シチューの味や、床に落ちたジェリー粒などに注目する鋭い視線が、彼の元々鋭い目によって印象的なものになっていた。

こちらも実質的な主役に近いのが、カート・ラッセル演じた賞金稼ぎの白人。カート・ラッセルもタランティーノ映画ではお馴染みの俳優だが、今回の役は最高の存在感だった。彼の年齢、髭面メイク、元々の顔が悪人面であることもあって、どうみても西部の人間にしか見えない。いかにも残酷そうな、荒々しい雰囲気が漂い、個性が最もリアルに見えた。

この作品は、ほとんど全員が悪役。保安官らしき人物が結局は大事な人物になるんだが、ほとんどの時間は弱めの立場の、小悪人的な役割を負っていた。演じていたウォルトン・ゴギンスは、あまり度胸がありそうに見えない。腕力があるタイプでもなさそうで、主人公をいじめたり、邪魔したりする役を得意とする俳優。今回の役も、複雑な立場だったので、彼の存在が作品の出来映えに大事だったと思う。

もしかしてだが、違った個性の俳優のほうが、作品の出来映えは上がりはしなかったかと、すこし思った。もっと大柄の俳優を使い、残虐そうなマッチョに見えて、途中で命の危険が及ぶと外見とは違って弱々しく命乞いを始め、毒で死にそうになったら恐怖におののきと、だんだん弱い個性に変身すると面白い。この役がもっと目立ったら、作品は違ったものになったかも。

悪女役のジェニファー・ジェイソン・リーも素晴らしい出来だった。この年のアカデミー助演女優賞は、彼女ではなかったそうで、ノミネートだけに終わったようだが、ぜひ彼女にも差し上げたかった。彼女の今までの出演作を観た記憶がないが、今後は期待できそうだ。だが、こんな良い役は、そうそうあるもんじゃない気もする。

この作品の音楽はモリコーネが担当し、作曲賞を取っている。確かに印象的な曲が多かったが、個人的には作風が映画と合致していないようにも思えた。この作品の場合は、奇妙な偶然やアンバランスなおかしさが大事なんで、曲もふざけた調子が感じられたほうが良い。「ジ・エンタテイナー」のような曲が欲しい。だから、必ずしも作曲賞に値したか疑問で、モリコーネの業績に対しての敬意の意味合いではなかったろうか。

もし、自分が犯罪者を護送中なら、どのように行動すべきであったか、そこが気になった。カート・ラッセル演じた賞金稼ぎ氏は、コーヒーやシチューを口にする際は、必ず犯罪者で試すべきだった。レディー・ファーストにもなる。また、小屋に入ったら、トイレや床下、天井まで一応は探索しないといけない。銃を奪っても、安全確認を怠ってはいけない。

安全確認を怠った状態でブランデーなど飲んでいたサミュエル・L・ジャクソン氏も、やはり注意が足りなかった。銃を奪っただけで優位に立ったことは確かだが、敵は先に小屋に着いていたわけだから、銃やナイフをあちこちに隠している可能性は高い。顔をそばに寄せて話したら、危険と考えないといけない。状況から考えて、皆を縛って動けなくするのが正解だったろう。

安全確認の重要性に関して、あらためて認識させてくれた。教育上、良い映画である。これはぜひとも少年少女に鑑賞させ、鑑賞後には分析して、彼らの正しい対処法を考えるべく、教室でとりあげて欲しい・・・・が、残念ながら映像表現が残虐すぎて、それが難しい。わざわざ残虐に描かなくてもよかったのに。

タランティーノの毒が蔓延している。アイディアだけ盗んで、他の監督にやらせたらよかった・・・・この作品は、実際にもそんな事件があったと聞く。惜しかったねえ。

 

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