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2016年10月26日

戦争の社会学 はじめての軍事・戦争入門(2016)

- 光文社新書 -

橋爪大三郎という学者が独学で学び、まとめた内容らしい。戦争に焦点を絞って国際交渉の歴史を整理したといった内容で、簡潔明瞭だった。

戦争の理論に関して、一般人が学ぶ必要は通常なら全くない。平和な時に、戦争の理屈を学んでも役に立たないし、理解も難しい。でも、戦時においては一般住民が当事者になる可能性もあるので、そうも言っていられない。昨今は政府要人のきな臭い言動が続いているので、安穏としているのも気になって、この本を買った次第。

したがって政府には、この本の代金を請求したい。

今日の戦争の多くは、資源の権利をめぐる争いなど、経済的な対立が主な原因となっているはず。他は宗教、人種、領土そのものの争いが多少関係している。経済的な面から戦争を論じる学問、戦争経済学とでも言うか、それがあれば、さらに理解が深まるように思う。経済の分野に関しては、この本には書かれていなかった。

話は変わるが、診療所には政府からの指示書が送られてくる。たいていは厚労省のなんとか局から、「・・ワクチン接種においては注意しろ」「・・・病の疑いがあれば適切に対処しろ」といった内容を、可能な限り読み辛くした文章。要点が曖昧で、誤解を誘導し、責任はとらない表現方法に終始している。

もし戦争が起これば、おそらく同様の文書が部隊の司令官や、各自治体、もしかすると情報端末を介して現場に送られてくるのだろう。たぶん指示書は同様に意味不明の内容で、読んで理解する間に、敵にやられてしまいそうな気がする。大事な文章では曖昧さをなくし、責任の所在も明確、指示された側が対処しやすいことが必要。そうでないと現場は動けない。命令が間違っていて、後で自分に責任を押しつけられるのが、兵士にとっては一番困る。

戦争理論の本では、その点を強調してもらいたい。過去の命令書、指示書を分析し、その欠点を明確にしておくことが勝利につながる。その点も、この本には書かれていない。命令の正しさ、根拠を理解できることなどが実戦現場においては戦争理論より大事なのかも知れないのに・・・

戦争理論の勉強は、あらためて思ったが必要である。世論というのも、戦争の約束事を理解していないと正しく成立できない。敵国が何か仕掛けて来た場合に、ただ憤慨するばかりでは敵の思うつぼ。意味合いを理解し、厳重に抗議すべきか無視すべきか、対抗措置をとらないといけないのか、そこを理解できないといけない。

それを分からないままで作られた世論は、国の進路を危うくする。国民の意志が一致していないと、大国と対峙することは難しい。だから対外的な政府の見解として官房長官が語る内容は、各種の条約、戦争理論などから考えての解説であることが望ましい。そしてできることなら市井の井戸端会議でも、戦争論を高いレベルで語れるようにしないといけない。それは国のレベルに直結するはずだから。

ただし思うのだが、本にとりあげられていた理屈は、欧米の理屈でもある。植民化された地域の都合や、イスラム諸国の理屈が反映されたとは言えない。正しいか正しくないかといった観点ではなく、実力や戦争の結果が成したコジツケ理論体系のようなもの。常に都合良く変化させられていく類のものと思う。

おそらく独自の戦争理論を、各国が論じているのではないだろうか?北朝鮮も、軍人達が懸命に理論を進化させ、自国の正義、権利の追及を目指しているに違いない。もし北朝鮮が世界制覇に成功したら、その理論こそが戦争論の正道となるはず。基本は実力が全てを決めると考える。

だから、戦争に関わる理屈は全て、個々の交渉における参考ルール、表向きのお題目にすぎない。過剰に期待してはいけない。力の裏付けなしに、理論だけを追及してもいけない。その点も、本では触れられていないようだ。

戦争理論は、そもそもが屁理屈と言える。同じように兵器を使って戦い、ある場合は捕虜となり、ある場合は問答無用で銃殺、その違いを規定するルールなど、人道に反していないはずがない。戦争は違法でないという理屈は、あくまで勝者側の理屈。仕掛けられた弱小国側から言えば、戦争は不当に人権を侵害しているから、絶対に違法である。

戦争は最悪の人道違反。これは基本である。もちろん現実的には、歴史的力関係によって成り立った観念には、とりあえず表面上、公的なコメントとしては従うしかない。だが、それはやむを得ずである。非人道的な連中が聞いておいでで、スキを突いてくるからだ。でも、我々の脳の奥底まで非人道的理論を浸透させてはいけない。その点も間違わないように表現すべき。それを怠っているように思う。

 

 

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