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2016年10月29日

スポットライト 世紀のスクープ(2015)

Spotlight

- スクープ論 -

ボストンで特報を手がける伝説的なコーナー、スポットライトのスタッフが、カトリック教会に蔓延する疑惑を暴いた話。DVDで鑑賞。新作なのに7日間レンタル可能・・・ってことは、人気がないんだろう。まあ、テーマから考えて、そりゃあそうだろうけど。いちおう、米アカデミーの作品賞を取っているんだがなあ・・・と、思ってしまう。

緊迫感がラストまで維持され、作品全体の雰囲気が整っている印象を受けた。妙にドラマティックに演出しようと調子が外れたり、ユーモアにこだわりすぎたり、シリアスに傾きすぎない、抜群のバランス感覚が感じられた。日本映画では、この種の作品はもっと大仰になりそうに思う。客層や、権威に対する意識の違いがあるので、仕方ないかも知れないが・・・

マーク・ラファロは熱血漢の記者役や捜査官をやらせたら、最高に良い味を出す役者。記者役が必要となったら、最初に声をかけられるように決まっているらしい。良い味を出していた。でも、彼だけがヒーローになっていない点で、この作品はセンスが良い。日本映画だと、主役が活躍しすぎるパターンに陥りやすい。

マイケル・キートンがリーダー役に選ばれたのは、劇場主の感覚では意外。彼は喜劇のほうが得意なイメージがあり、この役に望まれる意志の強さ、熱心さ、周到さが彼の場合は滲み出ないのではと危惧される。でも、それは杞憂だったようだ。なぜ彼が選ばれたのかは分からなかったが。

彼が演じたチーフは、過去に性的事件の告発を受けていたのに忘れていたという表現内容だった。本当だろうか?本物の記者は、自分が書く内容を忘れないように思う。一流の人は、実に細かいところまで覚えているように思う。何百と書く記事の、細かいところまで覚えているくらいでないと、文章が重複する。実際は教会内部の事情を認識していて、迫害が怖くて黙っていただけではないだろうか?

この作品は子供が観るような内容ではないと思う。心理面に悪い影響があるかも知れない。家族で楽しく鑑賞するタイプの作品とは全く違う。やはり芸術的な作品を扱う小さな劇場で、静かに、高齢の紳士か、行かず後家、そんな方達に囲まれて鑑賞すべきタイプの作品であろう。

最近、週刊文春が様々なスクープをやっている。資金的にも人員的にも、今の文春は無双状態らしい。大手の新聞では、この作品のような大スクープはできないようだ。しがらみが多く、その力に屈しているのかも知れない。記者という仕事は大変だ。入念な調査が必要だし、圧力を受けながら記事を作らないといけない。ストレスが酷いだろう。

築地市場の移転先が汚染物質対策を怠った件も、最近では大きなスクープ的事件だった。都知事が代わらなければ、そのままだったかも知れない。おそらく、工事法の変更による実質の害はないように思うけれど、信頼度の点では酷く評判を落とし、商店によっては実質的被害を被る所もあるかも知れない。

威勢がよかった石原元都知事が、立場を悪くしている。小池陣営からの復讐、ボディーブロー攻撃と言えるかも知れない。まさか、過去の自分の問題を攻撃されると思っていたかどうだか?この調子だと今後、都知事が交代する度に、暴露合戦が起こるのかも知れない。

やがて日本でも、宗教団体の不正が暴かれる日が来るかも知れない。素人の我々でも、おかしい事象がありそうだと感じる事柄は多い。でも、個人でそれを取り上げると大変な目に遭うと知っており、なにかのきっかけがないと公になることはないのだろう。

性欲に関する規律が厳しい組織は、昔から隠れた行動が蔓延する伝統があったと思う。おそらく少年少女は常に犠牲になっていたはず。日本の寺でもそうだったらしい。ヌード雑誌もあるし、ポルノ業界も活発で、そこらじゅうに性的情報が蔓延している米国内の教会では、規律を維持するのは難しいだろうと思う。

日本の場合は、性的な問題より金の問題が大きそう。宗教団体は税制面で優遇されているから、巨大利権の温床になっている。財政が厳しい今日、資金的に余裕のある団体には課税が強化されても仕方ないのではないかと思う。もっと国民に収益を還元すべきでは?宗教家は、常に清貧であって欲しい。

政治と宗教の関係性についても、怪しい点は多い。宗教団体の立場に理解すべき点は多いとは思うものの、政教分離の方針をなし崩しにする態度は、なにかしら真摯さに欠けると思う。

カトリックの司教達は、おそらくは教会の組織維持のために、性的な事件は隠すべきと判断したのだろう。その結果、新しい被害者を多数生じてしまったのだから、司教は犯罪に荷担したことになる。事情があろうとも自らを律し、真摯に考えるべきだ。自分達を律するからこそ尊敬されるものではないか?

守秘義務というのも難しい。弁護士や医師には守秘義務があって、特に教会の側の弁護士の場合、再犯を予防するための道義的責任と、職務上の守秘義務が相反してしまうので、立場が難しい。犯罪者の弁護は、危険な仕事。この作品では脇役に相当する俳優達が、その微妙な立場を演じていたが、脇役にするのはもったいないほどの名演だった。

 

 

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