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2016年10月14日

男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け(1976)

- 飲み屋の善き女 -

衛星放送で鑑賞。シリーズ17作目という。

冒頭でサメを釣る話が出てくるが、かなり残酷なシーンもある。大人としてはギャグ的で笑えるが、おそらく外人の感覚ではグロテスクと感じそうな印象。この作品は夏休みを意識して公開されたかどうかは知らないが、あれを小さな子供が笑って観れたかどうか、少し疑問にも思った。

あらためて考えてみると、当時のギャグの中には、かなりの差別意識やブラック・ユーモアの要素があった。ドリフのギャグでも、明らかに卑猥なものが結構あったし、今ならネットで集中攻撃を喰らいそうなセリフも、ネットがないのを良いことに、堂々とやっちまっていた。

あの頃は、自由な雰囲気が今よりあった気がする。団体行動においては、今より厳しい規律があったと思うが、娯楽の世界に限れば、抑圧を発散させようというかのように、随分と激しい笑いがあった。一種の冒険精神のようなものだろうか?

この作品のヒロイン、太地喜和子が抜群に素晴らしい。宴会において中心となる、飲み屋の元気な女の雰囲気が充分に出ていた。身の上話の場合は一転して不幸そうな、いかにもありそうな感じが分かるし、様々な調子で演じ分けができるようだった。彼女が出たドラマはテレビではよく見ていたが、印象が強かったわけではない。でも、この作品の彼女は、もはや芸術的でさえある。

よくは分からないが、不幸を経験しているから、飲むと一気に陽気になるのか?あんな飲み屋の女、以前は時々それらしい人を見る機会もあったが、昨今は飲み屋街にいっさい行かないので、知り合う機会もない。宴が盛り上がり、楽しい飲み会になるので、客としては最高の店員になる。

そう言えば、熊本地震で建設関係にお金が流れているので、飲み屋の中には景気が回復した店もあると聞く。建設労働者は飲み屋が好きらしく、業界内部で動く金額も大きいから気持ちも大きくなるのだろう、盛り上がっているらしい。街のためには良いことだ。大地喜和子みたいなホステスが、頑張っているかも知れない。

岡田嘉子も出演していて驚いた。小学校の頃だったか、一時期日本に帰ってきて、その時の報道で亡命の経緯を知った女優さんだが、とてつもない経験をした経歴が、いかにも何か過去にあったのだろうねと思わせる雰囲気につながっていたかも知れない。

宇野重吉も左翼系の劇団員だったらしいので、詳しくはないが実際に岡田嘉子とは交流があっただろう。少なくとも、当時の一定以上の世代は、彼らのたどった道を知っていたはずだから、感じるものがあったに違いない。

今回の寅さんの恋は、途中から恋よりも金のほうに注意が移ってしまい、なんだか曖昧なままに終わってしまったようだった。大地は、シリーズでその後の出演がないようなので、非常に惜しい気がする。その後も恋模様があったら、いろいろ話が発展しそうだ。

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