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2016年9月 2日

男はつらいよ 奮闘篇(1971)

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- マンネリなし -

シリーズ7作目という。8月9日、衛星放送で鑑賞。

寅さんシリーズは数作観たが、この作品の質の高さは今まで鑑賞したものの中で一番と思った。他の作品ではオーバーな動作が目立ったり、年齢的に完全に役は無理と感じたりするものもあった。この作品では、それがない。時代も合っていた。この当時はズッコケヒーローが色々いた。モーレツの裏返しのズッコケに、人気があったのだろう。

ヒロインの榊原るみは、劇場主には歌手かテレビタレントのイメージが強いが、この作品では素朴そうな表情が素晴らしく、役柄を充分に表現して実力のある本職の女優のように感じた。小さい頃から劇団で活躍していたそうだから、現場でもまれた演技力だろう。大スターが軒並み出演している印象のシリーズで、彼女の出演は例外的だったかも知れない。

このヒロイン像も変わっている。知的障害者のヒロインとは、ともすれば憤慨する客だって出てきそうな話。障害はあっても愛想は良い娘であること、演じる女優の可愛らしさ、そんな条件がうまく揃わないと、恋物語が成立するはずがない。主人公とどのように別れるかも、描き方が難しい。

この作品では涙のお別れシーンが結局なかった。そこらへんを考えてのことだろう。喜劇で別れのシーンは基本的に難しいものだろうが、この作品の演出の仕方は、実によく考えてあった。

寅次郎の母親役のミヤコ蝶々も実に味のある役柄だった。息子が情けない能なしぶりを示すのを見た時の反応、古里で無理をして金をかけて裕福な姿を見せようとする姿、そしてそれを慮る店の皆々など、細かいセリフの内容、設定に感心する。

7作目くらいは、一番乗っている時期かも知れない。シリーズが数十作に及ぶと、さすがにマンネリ化が生じるだろうが、この頃は新しいアイディアをどう盛り込むか、いかに過去の作品とつながりを維持できるか、パターンをちょっと変えられるかなど、やってて楽しい部分も多かったと思う。作り手も歳をとる前でないと、体力的能力的な無理も来るだろう。

寅さんの個性はどのように考え出されたのか知らない。監督が中心になって考えたのか、渥美清の元々のアイディアなのか?本職の芸人だった渥美清は、おそらく長いことかけてテキ屋の口上、仕草などをモノにしていったと思うのだが、本職とは微妙に質が違う気がする。本職は、もっとガナリ声で迫力があることが多い。一日中声を張り上げるから自然とそうなる。渥美の場合は、まるでインテリ青年のような声でやるから、その違和感がおかしい。

そういえば最近、祭りでテキ屋の口上を聞くことがなくなった。露店はたくさん出ているが、皆静かに座っているか、ただいらっしゃいなどと言うばかり。子供達相手に即興でのやりとりがあれば楽しかろうと思うのだが、どうして今は見かけなくなったのか?

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