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2016年8月12日

エール!(2014)

Jericomars_film_etc

- 家族の物語 -

農家の娘は、彼女を除く家族が聾唖者のため、家から離れられない。音楽学校への進学は諦めざるをえないのか、悩むヒロインだった・・・・

・・・・この作品は、他の映画のDVDを鑑賞していて、宣伝で知って気になって借りた次第。宣伝は往々にして長すぎて困るが、たまに良い映画を知る機会になるので、それなりの価値もあり、まあ全否定はできないだろう。

主役のルアンヌ・エメラ嬢は有名なシンガーだそうだが、この作品以外では評判を聞いたことがなかった。美人過ぎず、庶民的な印象が良い味になっていると思う。演技が上手いかどうかは分からないが、少なくとも自然に思えて、作品の出来映えに貢献していたと思う。

見た目の魅力、素晴らしい美貌、お色気などは、この作品では必要なかったかも知れない。恋人役の青年も、格好良いのかどうか判断できなかった。それで良かったのだろう。この作品の中心は恋の話ではなく、家族の物語だったのだから。

肝心の歌声は、劇場主としては過去のフレンチポップスの歌手ほどではないように思えた。You Tubeで彼女の曲を聴くとずっと美しい声なので、音響効果が足りなかったのではないか?何かの編集作業が欠けていた。アカペラのような曲には、それなりの音響処理方法があるはず。

エメラ嬢のプロモーション・ビデオはずいぶん大人しい。米国の若手ミュージシャンだったら、激しく腰を振り回し、攻撃的な歌詞をラップ調で険しい表情で訴えるだろうに、ほとんど学芸会なみの純真路線を貫いている。ビヨンセみたいに踊らない。

もし、この作品がハリウッドでリメイクされるとしたら、きっとディズニー・ミュージカルになると思う。そうなると、とてもこんな作品にはならない。歌声や迫力は素晴らしくなるだろうが、せっかくの味わいが薄れて、絵空事にしかならない。そう予想する。

ヒロインも自然な演技だったが、家族達の演技も不自然なところがなく、演出も非常に良かったのだろうと思う。あまり激しい名演をやってもらっても困る作品なので、適度の抑制が効いた演出は、見事だったと言うべきだろう。脚本原案には、実際の聾唖者家族を知る人が参加しているらしく、その実体験が効果的に働いたらしい。

この作品は家族で鑑賞して良いと思う。一部、性的な内容が出てくるが、ハリウッド流の変態志向、軽い調子とは違った暖かみが感じられる。恋人と鑑賞するのも非常に良い作品。激し過ぎず、軽すぎず、テーマが良くて品も良い。恋に悪影響を及ぼすとは考えにくいので。そんな映画だからヒットしたんだろう。

聾唖者が多い家系という設定は、どんな効果をもたらしたのだろうか?もし、この作品が一般の平凡な家庭の娘を主人公にしていたら、彼女が家を出ることにさほど問題はないから、全く盛り上がりを欠く結果になったろう。家族の誰かが反対したとしても、娘が悩むのはおかしいと、すぐ判断されるだろう。

きわめて珍しい設定を設けたことは、観客が状況を納得しやすいという効果はあったはず。しかも適切な描き方によって、悲壮感がない幸せな家庭であることが理解できたので、家族を見てこちらが勇気づけられ、こちらとしても応援したくなるような、そんな感覚が生まれた。家族のキャラクターが素晴らしかった。

珍しい設定は、作りすぎた物語という印象につながり、韓流映画の中でよくあるような無理なドラマに陥りやすい欠点もある。そんな悪い面を、良い面が完全に覆ってしまった印象。実話が元になったことのためか、企画の方針が正しかったためか、何かが良い方向に働いたのだろう。

フランスの高校生で、農作業をこなしつつ部活動もやる、そんなことは普通にありうることなのだろうか?劇場主の高校時代は、バイトをやっている同級生はいなかったようだし、部活動も非常に低調だった。実家の手伝いをやっている者がいたようにも思えない。

ヒロインの家族は広大な農地を持っていたようで、建物や仕事の規模が日本と全く違う点は関係するかも知れない。日本では、北海道など限られた地域しか、あんな光景は見られそうにない。農業立国が成功しているフランスだから、農家の収入は相当なものだろうと想像するが、それなら日本のように農業から脱出するために高校に行くような状況ではないのかも。

家業が続くなら、仕事に誇りも持てるし、手伝いにも納得できる。厳しい経営状況が多い日本の零細農家では、こんな幸福な家族の雰囲気は出てこないだろう。

 

 

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