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2016年8月18日

アメリカン・ドリーマー 理想の代償(2014)

Filmnationetc

- 非武装 -

80年代のアメリカ東部。石油運搬業に参入した実業家は、会社を急成長させたものの、謎の敵によって絶体絶命の危機に陥る・・・・

・・・ハードボイルドタッチの推理小説のようでもあり、夫婦や家族の関係を深く描く話でもあり、ギャング団が暗躍する暗黒街映画のようでもあり、上級のビジネスマン映画あるいは法廷闘争になる話かと思われたり、それぞれのジャンルの間隙を狙ったかのような、独特の映画だった。

似たジャンルで言えば、「ウォール街」は近いかも知れない。黒幕が誰かを探る展開の中に、ビジネスの成功、親子の断絶、騙し合いや裏切りなどの要素が絡む話で、ビジネスに成功するか失敗か?という緊迫感に満ちた点が同じ。

主役はオスカー・アイザックという俳優で、最新作のスターウォーズで格好良いパイロットを演じていた。でも、この作品ではキャラクターが全く違う。

個人的には、彼はこの役には若すぎたかと思えた。あるいは、役柄としてもっと弱い個性か、あるいは逆に激しい個性に設定されたほうが、リアリティが増したのではないかと思った。主人公は意志の力が強い魅力的なキャラだったが、深く洞察力を働かせ、逆転を狙っていく能力がありそうな迫力には欠ける点も感じた。

「ゴッドファーザー」におけるアル・パチーノは、少し似たキャラクターだったが、冷酷さがもっと強く感じられ、必要なら人を殺すだろうと思わせる、そんな迫力があった。そんな印象がないと、社員は従わない傾向があるものだ。実際、従わない社員が出ていた。それが現実。理想の代償があった。

業界の連中を集めて強奪を止めろと忠告する場面は、いろんな意味でよろしくなかった。映画にとっては、主役の迫力不足を露呈してしまう。根拠のない脅し、相手が困らない主張は効果がないことくらい、観客だって知っている。ただ警告だけするのは、弱さを意味する。個別に会って探りを入れ、敵の動揺を誘うといった戦略が普通の道だ。

演技力より、元々の設定の問題もあったのだろうか?例えば、怪しい人物を追跡して倒す人間は、主人公以外の人物が良い。ボディガード担当者か、それこそ逃げていた社員などの若い人物が最適だ。頭脳で勝負するタイプの人間に、アクションまで求めてはいけない。007のような映画なら構わないのだが、この話の性質上、スーパーマン的な大活躍をさせると、かえって漫画的になってしまう。この作品は強いて非武装の方針をとるヒーロー像にこだわっていたから、過去のヒーローとは性質が違っていたのだろう。

ジェシカ・チャスティンは、近年最も売れている女優。確かに、売れるのも当然の存在感を感じた。この役は一種の悪役でもあるので、迫力が必要だった。彼女は、一般的な感覚では悪女の顔をしている。そこが迫力につながっている。美貌は、あまり必要ない。人を殺しそうな迫力が欲しかった。充分に役柄に合致していたと思う。

逃走することになる若いドライバー役の名前が分からなかったが、素晴らしい演技だった。ラスト近くの緊迫した画面では、過呼吸になっている状態がよく理解できた。

この作品の一番の魅力は、苦難にさらされた経営者の恐怖、あがきではないか?会社を興して運営、発展させていくのは本当に大変で、経営者の一人として、劇場主も自然と共感していった。・・・・と申しても、劇場主は呑気にブログなんぞを書いているくらいで、時々経営をほったらかしにしている。普通の会社の場合は大成功か破産か、勝訴か示談かといった厳しい試練を経ている。厳しさが違う。

石油業界というと、巨大企業が独占的に支配し、この映画のように個人が参入できる余地はないもののように思っていた。まず仕入れの段階で大手の会社に管理されているはずなので、新規にルートを作り、メジャーから独立したタンカー運営会社と交渉し、さらに他の会社と競争して販路を開拓しないといけない。一代でそれを成し遂げるのは非常に難しいはず。

おそらく凄く成功したとしても、40代後半か50代でやっと台頭したというくらいがせいぜいではないか?IT業界と違って、急成長にも限度があると思う。二代目なら分かるが。つまり、設定にリアリティが欠けていたかも知れない。または、実際に急成長した会社があってモデルがいるのに、劇場主が知らないだけかもしれないけど。

急成長に対しては、抵抗勢力も凄いと思う。銀行を強請って、融資を引き上げさせるくらいは平気だろう。ギャングを使っての車の強奪、営業部員への暴行なども、ビジネスの一環として、ごく普通に行われるものと思う。

その際に武器を携行すべきかどうかだが、主人公が言っていた通り、銃を持てば殺し合いになるし、大事故につながって命取りになるのは確か。普通はガードマンを雇おうと考えるだろう。二台以上で移動することを原則にして、単独で移送する車にはガードマンをつける。二人が乗っている車を襲うのは、簡単なことではない。

近年なら、カメラで撮影すること、GPSで追跡できるようにすること、そして犯行の証拠が残ることを犯罪者側に分からせると思う。おそらく、犯行に使う車は道路の監視カメラで直ぐ特定されるから、この作品のような犯行では直ぐ捕まる。銃は、かえって危ないし、使い慣れていないと抑止効果に乏しい。

しかし、銃なしで敵と向き合うのは勇気がいる。不安でしょうがないだろう。緊張状態にある海域で、敵の軍艦と向き合う海上保安官達もそうに違いない。ついつい先に発砲・・・ってことはありうる。よほど厳格な職場管理をし、シミュレーション訓練を施し、法的な確認をがっちりやらないと、日本側から攻撃したといった宣伝にやられてしまうだろう。それをいかに徹底できるかが、勝負になる。

理想の代償がどのようになるか、そこを心配している。

 

 

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