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2016年3月 1日

ジュピター(2015)

Warner


- ヤキまわり -

ウォシャウスキー兄弟によるSF映画。人類は、宇宙企業によって栽培された存在で、生命の源としてもうすぐ収穫されようとしていた・・・・

・・・・DVDで鑑賞。この作品は、テレビシリーズの雰囲気がする。良いところで場面が変わって、次の場面に移る、そんな構成になっていたように思う。

ミラ・キュニスとチャニング・テイタム主演。手の込んだメイクで動物と人間の遺伝子を融合させた生物を多数登場させていた。街中で戦うシーンには凄い迫力があって、チェーン・アクションをやCGを相当ふんだんに使っている様子が見てとれた。制作費も凄い金額で、一億ドルを軽く超えているらしい。

アイディアの売りは、①人類が実は栽培されていたという設定、②女王バチのような存在が偶然登場したという設定、③王族内部の対立が、人類の運命にも関わってくるという王朝ストーリーの要素、④ヒロインと戦士の恋物語、⑤遺伝子融合された怪物達の個性、⑥戦いの描き方、CG技術、といったもの。

ただし、結果的には総合的な魅力を出すには失敗していたように感じた。まずヒロインの個性が、充分に表現されていなかったのではないか?

ロシアから亡命したらしい一家が、アメリカで家政婦の仕事をする一族の元で暮らしている場合、望みのない自分の境遇を嫌悪していることは分かるが、亡命や父の死と物語との関連性、いわゆる物語性が薄い。過酷な運命をたどってきたヒロインは、すべての運命が何かの理由でつながっていることが望ましい。

おそらく、生まれた時点で彼女の情報が何者かに伝わり、殺人集団が次々と襲ってくるのを護衛する側が救い出すことを繰り返すが、ヒロインはその理由が分からない・・・・そんな古典的な設定がないと、物語は盛り上がらないのだろう。

人類が収穫される恐怖を強く訴えることもできたと思う。血なまぐさく描く必要はないが、人間が襲われて工場に送られる様子などは何らかの表現をする必要があったと思う。作品の中では静かに横たわる人が何か処理されているらしいことは分かったが、何の恐怖感も感じないような描き方で、あれでは観客に訴えかけるものはないだろう。

女王バチの話を有効に使うこともできたと思う。蜂達がヒロインを守るために、敵の殺し屋を襲うシーンは使える。空を覆うような大群が襲ってくるシーンなど、いかにも使えそうな気がするのだが、なぜか登場してこなかった。過去の映画で使われたパターンを、ことごとく排除したいという考え方だろうか?

王族同士の対立が、安っぽさを感じさせるものだった。王族だから慇懃無礼な態度でクールに話すのは分かるが、交渉の顔と裏の顔を繰り返し写して、彼らの本音と言っている嘘が分って、対立の経過が明快になったほうが良い。

ヒロインが危機に陥って、はやくヒーローが助けに来て欲しいのに、なかなか敵との戦いが終わらない、観客をヤキモキさせるシーンが何度か繰り返されていたが、同じパターン、ヒーロー登場が遅れ気味になる同じ時間の使い方が気になった。アクションのシーンでは、基本的にパターンがバリエーションに富んでいないといけない。ギャグのシーンなら繰り返しはおかしいが、アクションには常に変化が欲しい。工夫が足りなかった。

面白いシーンもあった。ヒロインが登録の手続きをする場面で、いろんな担当部署をたらい回しにされるが、結局はワイロでスムーズにことが運ぶくだりは、現実世界を思わせておかしい。ロシア人家族が食卓でいろいろ議論する内容も、いかにもありそうな内容で笑わせる。あんなユーモアと、SFの激しい戦いが組み合わされたら、子供には受けそうな印象がある。

でも、この作品は子供でも満足できないのではないか?アイディアはたくさん積み込まれたが、互いの連携、相互関係の構築には徹底が足りないままに終わり、子供でも納得できない部分が生じてしまった印象がある。ウォシャウスキー達もヤキが回ったのか、あるいは彼らを支えていた有能なスタッフ、助言者がいなくなって、アイディア倒れを生じたのかと心配。

 

 

 

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