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2016年2月12日

誰よりも疑われた男(2014)

Presidioetc

- スリルたっぷり -

イスラム過激派の青年がハンブルクに出現。ドイツ諜報組織が彼を泳がせ、さらに大物の過激派逮捕を狙うが、他の組織との対立を生む・・・・

・・・・派手な撃ち合いはいっさいないのだが、スリルに満ちたスパイ映画。トム・クルーズのスパイ映画とは全く違った路線で、おそらくは興行的にマイナーな映画。でもDVDで静かに観るなら、これは素晴らしい作品と思う。

ジョン・ル・カレの作品は、「裏切りのサーカス」もそうだったが、本物の諜報員が体験しているかのような、リアルなドラマ展開が特徴だと思う。基本的には静かなシーンが長く、カーチェイスや殺人のシーンが中心になるようなことはない。頭能戦が中心だから、子供には受けないし、恋人と観るタイプの映画でもないと思う。

スリルたっぷり、でも、スリルのみだったと言うこともできる。タイトルにも改善の余地ありと思う。

主演のフィリップ・シーモア・ホフマンの演技、存在感が光る。肥満体で、追跡などが苦手な様子が、この役には似合っていた。おそらく独身と思える主人公が、一人部屋で過ごす様子が悲しい。あれが二枚目俳優だったら、逆に絵にならない。少し狂気が感じられるのは、本物のヤク中だったからだろうか?

ハードボイルドタッチになりすぎた感はあった。少し笑えるシーンもあったほうが良いはず。無言で何か考えているシーン、ちょっと気味の悪い目線の使い方など、迫力や怖さを演出するための演出が、テンポを損なったり、娯楽的な要素を失わせたりしたかも知れない。テンポを計算に入れながら、時々ユーモアや追跡や暴力、脅しや罵りあいを入れたほうが良いと思う。

それと、主人公のキャラクターを理解しやすくするためには、生い立ちやトラウマを念入りに解説したほうが良い。ベイルートで作戦が失敗した話は設定されていたが、それが彼の行動に与えた影響が、やや希薄にしか表現されていなかったように感じた。涙ながらに、過去の経緯を許せない!と、激しく表現したほうが良かったと思う。

この作品ではドイツスパイと警察とCIAと、もしかするとイギリス諜報部も連携していたようだったが、実際はどうなんだろうか?直ぐ近くで影響しそうなフランスだって介入していないはずはないようにも思えるし、ロシアの連中がウロウロしていないのも妙だ。

協力して行動することもあるはずだが、顔を始終合わせているなんて、本当だろうか?おそらく街中で食事などやっていたら、敵対勢力に連携ぶりが漏れてしまい、行動パターンを解析される。元々利害が完全に合致した国などありえないので、最低限の情報交換しかしないのでは?ドラマのための設定ではないだろうか?

もしかすると、主人公をヒロインの女性弁護士にしたらどうだったろうか?ホフマン君は悪役になれば良い。つけ狙って脅し、だまし、ひどい行動をとるが、それなりの倫理感に燃えており、情報源を守ろうとするなど、一概に言えない人物像はそのままで、少し視点を変えれば良い。

それによって、話が美しくなる。ヒロインが体験する恐怖に、皆が共感できる。残念ながら太った工作員に共感する人は普通は少ない。立派なヒップを持つ真面目な弁護士のほうが、一般的には同情されやすいと思う。それにしても立派すぎるヒップだった。少しシェイプアップを考えるべきかも。

また、今日の状況では、いかに本人が亡命を望もうと、過去にテロリストと認定された人物がすんなりパスポートをもらえるはずがない。拷問を自作自演でやって入国してくる犯罪者だって多いだろう。その人物が完全にシロと認定することは、ほとんど無理だと思う。監視を完璧にこなし続けることも無理。よって泳がせることなど、実際には許されないと思う。

 

 

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