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2015年12月 6日

下流老人 一億総老後崩壊の衝撃

- 朝日新書 藤田孝典著 -

年金制度や賃金形態の変化により、中流層が破壊され、生活レベルの低い老人が増えていくといった内容の本。

下流老人という言葉は、流行語大賞を取っても良いかもしれない。それくらい評判になった。この本は文章が非常に美しく、学者達が書いた本よりも読みやすい。学者の文章は難解で専門用語が多めで、その解説を怠る傾向があり、素人には理解しがたい。この本は読みやすいし、説得力もあった。

老人問題は、筆者も述べておられるように、結局は若者問題である。劇場主は、著者以上に若者の将来に不安を持つ。30年も不安を持ち続けて、気がおかしくなりそうなのだ。下流若者の今後のほうが重要と思う。我が子達の将来が心配なこともあるが、劇場主が若い頃から徐々に明白になりつつある長年の懸念でもある。

若者が低賃金になると、結婚、出産が難しくなり、やがて国力に影響する。これには反論する経済学者がいて、高度な理屈で解説している文章を読んだことがあるが、なんだか騙されたような気分になる文章で、心底から理解はできなかった。

普通に考えたら、人口が減って経済活動が大きくなることは稀だと思う。子供のために無理な借金をして家を建てたり、学費を出したり物を買うことが、金の大きな流れを生むので、その状況がないと、移民や画期的な投資を受けないかぎりは、経済規模の縮小が確実。日本に画期的な投資は期待できないと思う。

人口動態の安定、急な減少がないことが大事、それが劇場主の意見。30年間も前から対処すべき問題と危機感を持っている。学者の高度な専門的理論に耳を傾けても、結局は無駄になりそうに思う。普通に考えるべきだ。一般的な感覚のほうが正しいと、やがては判明するだろう。根拠は示せないが。

予算は、若者が仕事を確保し、家庭を維持できるように配分すべきと思う。本の筆者も、そこを基本と考えているようで、その意見には充分納得できた。その考えに、現状は反対する意見が多いということになるが、いったいどんな理屈を使えば、反論が可能なのだろうか?

反論の第一は、予算不足だろうか?今の予算に新たなものは加えられないので、若者支援は無理・・・そんな理屈が政府内では主流になっていることになる。将来のジリ貧を生む理屈だとは思うけど・・・

第二に、まず景気を改善する必要があるので、財政出動し、公共事業を復活させるべき。社会保障費は増やせないという理屈・・・それも、さすがに無茶であることに多数の人が気づいている。昨今は、地方の人だって公共事業が財政負担になることが気になっている。借金の連続を怖く感じるのが当然。景気は簡単に良くならないし、一時的に良くなっても企業や投資家に有利なだけという面がある。

第三に、やはり自助努力が必要だし、現在の保証制度でも、ほとんどの人は何らかの援助が得られ、最低水準に近い生活は可能という理屈もある。そして、その考え方は概ね正しい。役所の目が届かないところで貧困ビジネスの餌食を生んでいるのは事実だろうが、細かい点まで自治体が管理はできないというのが本音では?

第四に、現行の権益に触る部分の改正に反対する勢力があることも大きい。例えば住宅ローンのシステムを変えて、若者に安い家を提供しようとしたら、商売に影響する業界から反発が来ることは確実。そのほかにも多くの分野で、今日の体制を作っている利権があり、反発が来る。

第五に、国単位、企業単位の競争においては、低賃金の人間がいて、低コストで生産して他の企業と対抗する必要があること。低賃金労働者が、利益を得るためには必要という現実。労働者優遇の方向に変えると、企業が競争に負けてしまう。そうであっても、出産数が増えて来ないと、あらゆることが悪化するのは確実。企業や投資家が生き残っても、国民が減ればジリ貧は間違いない。やがて企業も投資家も消えていくか出て行くしかなくなる。それが望みなのか?

第六を忘れていた。自分や自分の家族が低所得になるのは嫌だが、他人が低所得であっても、それは努力が足りなかったか運が悪かったからで、仕方ないこと・・・・そのような意識が働くことも大きな要因だろう。「若者の未来を回復しよう!」といった意見には、自分で何とかせいよと無関心になる人が大多数。集団全体の運営や、基本方針には利害が関係しない限り無関心。なので、真に戦略的な政策を進める集団には、やがて敵わなくなるのが伝統。

結婚、出産、育児がスムーズにできるよう、若者の自助努力が可能なように、国も地方自治体も活動して欲しい。そのためには、あらゆるシステムの改正が必要。富める集団から若者へ、金の動きを作らないといけない。既得権益を持つ者、企業には耐えがたいことだろうが、行き過ぎた資産の格差は是正する必要がある。資産家でさえ感じることだろう。

実際の利害調整は、でも非常に難しいだろう。正当と思える権益を、考え方を変えて削り取られるという認識をされたら、激しく抵抗するに決まっている。国の状態を説明し、まだ起っていない危険を理解してもらい、協力しないと国も自治体も持たないのだと認識してもらう必要がある。認識を変えるのは、並大抵のことでは無理。

でも訴え方によっては、既得権益を持つ人達も理解を示してくれると思う。もう少し真剣に、政治家が述べるだけで、金を若者に配分することにコンセンサスが得られると思う。そして何より、NHKなどの放送局、週刊誌から新聞から総動員して、社会を維持するためにすべきことを訴えるべきだろう。

もっと早くからやっていれば良かったと思うのだが、数十年も遅れているので、かなり革命的な、激しい資産の移動が必要になりつつある。激しい変化は好ましくないと思う。早ければ、変化は軽くて済むはず。激しい変化は暴力沙汰を増やしかねない。

 

 

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