映画評

  • 当劇場は劇場主のための映画館です。訪問者を期待しておりません。内容の客観性、正確性は保障できません。でも、真摯な批評を目指します。

劇場主


Conflict of Interest

  • 特にありません。

おことわり

  • 当劇場は誹謗中傷を目的としておりません。もし権利を侵害されたと感じられた方は、申し訳ありませんが管理会社や公的機関に御相談ください。

« タンポポ(1985) | トップページ | 俺たちに明日はない(1967) »

2015年9月16日

クレイジー・ドライブ(2014)

Universal

- 背伸び -

リムジンの運転手が主人公。ギャンブルの借金を返す期限が迫っているうえ、解雇される危険、恋人との別れなど、厳しい現実に襲われている・・・

・・・DVDで鑑賞。日本の劇場では公開されなかった作品らしいのだが、非常にセンスの良いギャグに満ちた喜劇風サスペンス映画と思う。

原題はストレッチらしい。これは主人公が乗るリムジンの意味だけだろうか?日本語的な解釈の、‘危険な背伸び’の意味はないのだろうか?考えすぎと思うが。

主人公が理不尽な仕打ちや騙されることで酷い目に遭う流れと、そこから抜け出そうと懸命の努力をする葛藤、妙な人物達との関係など、よく出来た設定が素晴らしかった。もし大スターが主演していたら、結構なヒット作になっていたのではないか?

主人公がとことん不幸なところが、まず最高だった。行くところまで行くと、不幸な主人公を笑うことができる。ベン・スティラーのような情けない役を得意とする役者が演じると笑える役。だから、この作品でもスティラーのほうが役には向いていたかも知れない。意外性を狙ったのか、二枚目俳優のパトリック・ウィルソンが主役を演じていた。

一目惚れのようにして冒頭で恋人が現れていたから、見た目が良いことが必要だったのかもしれない。その場合、近年はブラッドリー・クーパーが、そんな役割を演じている。クーパー氏のスケジュールの問題でウィルソン君が選ばれたのかもしれない。でも好演だった。

思い出せば、「リトル・チルドレン」でもウイルソンはドジな二枚目役を演じていたから、このパターンのキャラクターは元々得意なのかもしれない。この作品でも充分に面白かった。

お色気たっぷりの恋人役デッガー嬢は、どこかイジワルそうな顔をしてる。ただのセクシーさ以外に、そんな個性が役柄に合っていた。別れを後悔する微妙な女心の表現も上手かった。

死んだ元同僚役は、「ハングオーバー」で歯医者さんを演じていた役者で、傑作の個性だった。もし、この作品に続編が作られることがあれば、彼にはぜひとも再度登場して欲しいと思う。

マッチョなレッカー車運転手も素晴らしい個性。実際にロシア系のレッカー業者がどれくらいいるのか知らないが、おそらくタフさを売り物にしたギャングのような業者は多数いるはず。また、あちらは勝手にレッカー移動していく連中がいると聞くので、その典型的イメージを表現するのに成功していたのだろうか。

主人公を苦しめた最悪の奇人はクリス・パイン演じた人物。これは、さすがにやりすぎの印象も受けたが、爆笑の路線を狙うなら、こんな個性の人物がひとりくらいいたほうが良い。変人を次々と出して、主人公が引き回される悲哀を強調できるから。

話の流れが素晴らしかった。

主人公は自分のふがいなさ、不運の理由を探り、なんとかしようと懸命に考えていた。その姿勢には共感を覚えざるをえない。笑いつつも、応援したいような気持ちが湧いてくる。彼の独り言による自己分析や、無理な挑戦に喝采を送りたくなった。

上手くいかない時に、人はいろいろ考えるはず。あの時こうしていれば・・・あいつは許せない・・・あれは仕方ない・・・いろいろだろう。総て願い通りに達成できてる人間はいないから、ありそうなボヤキをセリフに使えば、観客の共感が生まれやすい。

主人公がFBIのワナの中にはまっていく流れは、本当に起こりそうな設定だった。悪徳で成り立つ富豪の周囲には、どこかに捜査機関の囮捜査が隠れているような気がする。そこを理解せずに飛び込んでタフガイを気取る様は悲劇的。でも、面白い。

惜しむらくは、現金を強請るシーンの種明かしは、もっと早めの方が良かった。そうすると真相を知った観客は、タフガイを懸命に演じようとする主人公を笑うことができたはず。虚勢をはる人物をクールに見られたら最高におかしいのに。

劇画調の個性派たちが主人公を苦しめ、どんどん状況が悪化し、解決不可能な状況に陥る、そして逆転劇・・・それが理想の展開と思う。この作品は、その通りの流れに近かった。

この作品のラストは、完璧なハッピーエンドとは言えない結末だったかも知れないが、昔の映画のように主人公が億万長者になったりしていたら、さすがに虫が良すぎただろう。原題では、ほろ苦い勝利くらいがちょうど良いのでは?

 

 

 

« タンポポ(1985) | トップページ | 俺たちに明日はない(1967) »

無料ブログはココログ