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2015年8月14日

アメリカはいかにして・・・・・続き

アメリカはいかにして日本を追い詰めたか(ジェフリー・レコード著)続き

劇場主の批評の続き。

疑問点②・・・日本を追い込もうと考えた理由。

本とは視点を変えて、経済的な理由を考えてみる。

両国の成り行きには、当時のブロック経済圏の間の競争が影響していたはずと思うのだが、良い解説を読んだことがないので、劇場主は理解できていない。石油の禁輸も、軍事目的に限らずブロック障壁の一環に過ぎなかったかも知れない。他のブロックを援助する理由はないから、自然に禁輸に向かうという理屈はなかったろうか。

政府の指導で輸出制限されたのか、経済人だけの思惑なのか、石油と鉄クズ限定の制限か、貿易全体の制限の中のひとつの項目だったのか等に関して、我々の勘違いがないか気になる。

ブロック経済圏が作られた時代でも、グローバルな投資をしようという企業は多かったらしい。フォードやGMがナチスに投資協力した時期さえあったそうだから、国と企業の方針が一致しているとは限らない。財界と政府が折衝して、日本への投資は止め、通商も制限すべきと徐々に決まっていったのではないか。どう決めたかは分からないが、互いに圧力をかけた結果ではないか。

真珠湾攻撃の直前、米英首脳は大西洋上で会談し、日本を追い込む方針を確認したらしい。でも、日本側の判断によっては欧州の戦争に間に合わないまま、追い込みが失敗する可能性もあった。よく思いきれたものだ。開戦が遅れた場合、日本が弱体化する点は好都合だろうが、ドイツに攻撃されているイギリスの立場は苦しい。ただ日本の出方を待っていたとすると、危険ではなかったろうか?

日本はナチス攻撃のための材料だったという記載があった。米国にとっては、歴史的に見て日本よりヨーロッパ事情のほうが大事なことは確実。米英は、資本関係が入り込んでいるから、行動を共にせざるを得ないはず。ナチスの排除が最優先課題だったと思う。本の著者も、そのへんを強調していたようだが、開戦の口実だけのために日本に戦争を煽るという意見は、ちょっと無理を感じる。そうそう上手く行くとは限らないので、その意図もあったという程度ではないか?経済上の利得も狙っていたはずだ。

米国は第一次大戦でも参戦が遅れた。兵士に犠牲が出るから当然だろう。だから、普通では考えられないような徹底した脅迫で、日本を確実に戦争に追い込み、攻めさせるために必要なことはやったはず。それでも、日本の首脳が想像以上に優秀だった場合、裏をかかれた可能性はある。

ドイツ軍が完全に欧州を支配下に置くか確認してから日本側の出方を決める・・・・そんな方針を徹底していたら、欧州の状況がどう転ぼうと生き残れる。考え方としては、それしかなかったはずなのに、感情に引っ張られて思い切り間違ってしまったように思う。

戦前の日本は米国の資源に依存していたから、日本との通商を止めることで、米国側にもロスが生じたはずと思う。ロスを覚悟で得るものがないと、戦争には踏み切れない。金勘定の分野で、米国側はどう考えたのだろうか?英国と共有する利益を確保する中で、日本と共有する部分が排除され、大きな流れが生まれたと想像するが、当時の米財界内部の交渉がどうだったかが気になる。

たとえば綿製品については、明確な貿易摩擦があった。その他の分野での、当時の摩擦の程度は知らないが、もし相当あったなら、それだけの理由で禁輸措置もありうる。第一次世界大戦当時の日本企業の躍進で困った米国業者、それに中国に投資したい企業は、日本の覇権が邪魔だし、米国政府の門戸開放要求を徹底するために、過剰にあおっただけかもしれない。

いろいろな企業があるから、米国の企業全部が日本を敵視するはずはない。石油業者の減収を何かで調整し、兵器業者の要求や金融界の支援をとりつけ・・・・結果があのようになったはずと思う。

アメリカ首脳の立場なら、自分らの主張を引っ込める理由はない。かの国の記録を見ると、ひたすら要求し続け、敵から譲歩を引き出すことを続けている。強欲の権化のようなもの。東アジアを米国のブロック内にすると狙ったなら、そう要求し続けるのが彼らの流儀。それが実行されただけかもしれない。

中南米の小さな国も、米国は徹底的な支配を目指している。バナナか何かを作らせるために大統領を次々代えたり、反対住民を殺すなど、常識では考えられないことを繰り返している。巨大企業のビジネスマン達の狙いは執念深く実行され、野望は飽くことがないように思える。

その勢いを考えると、日本への対処も想像できる。欧米のビジネスマンは、邪魔な勢力を彼らの流儀で徹底排除するだろう。まさか道義的な理由で日本軍の撤退を求めていたはずはない。

通常、政策は複数の因子を総合的に考えて決めるものと思う。思いつく事は、米国首脳と日本人とでそう違わないはずだが、その中で何を重視し、どのように論理立てて政策とするかは、立場も考え方も違う。米政府の狙いを想像しても無理がある。深く考えず事務的に処理したのかもしれないし、もしかして想像で思いつかないほど、彼らは大きく間違った選択をしていたのかも。

元々、オレンジプランは、開戦のずっと前に作られたもののはず。ソ連がどうなるか頭にない軍人が、単純に日本を追い込むことだけを考えて作製したものかもしれない。予定通り資源で日本を追い込む。そして状況が変わっても、承認された作戦をプラン通りに進める。それが軍の決まりというもの。国別のプラン同士を複合的に考えられなかっただけかもしれない。日本に勝って、結果として共産圏に負ける・・・要するに、そこまで頭が回らなかったのかも。

あるいは逆に、日本がソ連と共闘することは絶対に避ける必要があると考え、ソ連が進出する前に征服してしまうという意識があったのかも知れない。基地を東アジア各国に作らないと、支配権を確保できないのは確か。ソ連に来られたら困る。日本は、米国にとって良き基地でないといけない。想像に過ぎないが、実際に多数の基地を残しているのだから、支配域は欲しかったはず。

急成長した米国は、実力的に東アジアを征服できる力があった。軍人達は自信を持っていただろう。計画を改める必要性は感じなかったはず。フィリピンやハワイ、中南米を征服し、次にやるとすれば日本と考えていたはず。フィリピンより手ごわいから、チャンスを待たないといけないが、日本が増長してチャンスを作ってくれた、今しかない・・・そういう流れはありうる。軍人の感覚ではそうだろう。

あるいは真面目に、政治体制や価値観の面で、東アジアへの日本軍国主義の進出を危険視したのかも知れない。少なくとも嫌悪感を持つ人は多かったろう。当時の日本軍の行動は、愛国者である劇場主でさえ義憤に駆られるほど道理がない。米政府のスタッフの中には、米国流民主主義と相容れない日本を、いずれ倒すべきと考える人がいたかも。

日本は明らかに米国に頼る存在で、そんな相手を追い込む必要は、普通はない。ただし、米国は普通ではない。超のつく資産国であり、ゴリ押しの帝国主義者で世界の覇者。日本は元々狙っていた植民地候補地域であり、日本のブロック圏が大きくなることを許す理由もなく、何の感情も伴わず、ただ排除しただけかも。

疑問点③・・・・人種差別の影響

差別意識は根底にあったと思う。大きな理由のはず。ただし、ビジネスマンは普通は差別を優先しないはず。通商に関して言えば、日本の支配が多少大きくなっても米国は困らない。米国が完全に市場から排除されない限り、日本が中国本土に侵入しようとも、それによって日米の通商量は増えこそすれ減らないはず。それなら多少嫌な国でも、普通は戦争に訴えることはしないと思う。

商売抜きで、とことん許せない感情があったとすれば、人種差別の影響は疑わしくなる。日系移民への対応は、完全に特異的だった。彼らはクールな判断で動いていたわけではなく、差別が大きな比重で対応に影響していたのかもしれない。

人種がらみで言えば、オランダ系だったはずの大統領。オランダ系資本から、何も陳情がなかったはずはない。ボルネオの権益を守れといった陳情はあったろう。シェル石油などの有力な支持者から、強い要請があって断われなかった?

さらに、ユダヤ系の資本家達は、ドイツに利する勢力は総て徹底的にたたく必要性を感じていたに違いない。ナチスは最悪の敵なので、その同盟者日本は排除すべき対象となる。ナチスに対抗することはユダヤ系市民の強い願いだったはずで、そのために日本を戦闘開始の道具にして構わない、参戦を重視という意識があったかも知れない。

東南アジアでの覇権を狙う日本は、感情面でも排除したい相手だっただろう。米国こそが覇権を狙っていた。でも今日の状況では、だからといって軍を使って本当に戦うべき相手とは思えない。米国産の石油を買わせ、米軍の代わりにソ連などと戦ってもらったほうが便利で安上がり。どう計算したのだろうか?

人種差別のせいで万単位の兵士を犠牲にするのは、普通の感覚では大失策だが、兵士も奴隷の類似品のように考えるビジネスマン達にとっては、必要経費か消耗品のような感覚かも知れない。

筆者は世界的富豪になった経験がないし、植民地で原住民を使って生活したこともないので、米国の支配層の考えることは分からない。不快に思った→潰そうと思った→軍隊を使ってそうした、感情は伴わず、犠牲も気にせず・・・単にそれだけかも知れない。少なくとも、日本人に同情する理由はなかったのだろう。

疑問点④・・・悪意

そのほか疑わしいのは、景気対策としての戦争。雇用や投資の問題を一気に解決できる戦争は、当時の米国政府にとっては至上のチャンスで、ぜひとも導入したい公共事業。その際に、最も簡単で分かり易い敵は日本。誰が大統領でも、この理由だけで参戦の誘惑を感じてしまうだろう。

欧州と違って、日本の勢力範囲には投資に関してのライバルがいない。欧州では英国やフランス系資本がきっとライバルになる。助けてあげても、直ぐに米国資本を排除したがる。せっかくなら、戦後の支配権を狙いたい。朝鮮から東南アジアまでの広範囲な経済圏を入手できるほうが有意義だから、紛争をふっかける意味はある。

また、政権の態度が軟弱と思われたら困るので、余計なくらいに強硬な態度をとり、勇ましいところを見せつけて選挙に利用したいという思惑もあったはず。景気を良くし、選挙も勝つ、これ以上のチャンスはない。

選挙に勝つために、後でアジアが共産主義化しようと、米軍兵士が万単位で死のうと構わない、後のことはまた考えよう・・・・そんなノリがあったとすると怖いが、米国の選挙で勝とうと思うなら、戦争は有効。したがって選挙の都合が開戦の理由かも知れない・・・それはつまり我々からすると、悪意に他ならない。

ちょうどイラク戦争と同様かも。あの時に派手なプロパガンダが組まれたように、日本を狙った可能性もある。ただ、当然ながら確証はない。「日本をワナにはめようぜ」といった会話が公表されたわけではないから。さすがに、そんなセリフは隠すだろう。イラク戦争の情報だって隠されたのだ。

戦後にイラク情勢が混沌とすると分かっていても、政府が行動しないと選挙では確実に負ける。後の問題はともかく、動かないといけない。4年単位で考えざるをえない・・・あの時のブッシュ政権の考え方は、たぶんそうだった。短期の戦略しか描けない、そんな米国独特の政治機構上の弊害が、日本との戦いでも影響したかも知れない。

あるいは優れた投資家が、日本を支配下に入れて投資すれば、大きく儲けると確信を持ったのかもしれない。人口はかなりあるし、技術があって仕事を頑張る連中だから生産性だけは高い、投資効果が期待できる。日本の植民地としての価値に気づいた・・・その可能性もないとは言えない。戦後も不必要なほどに基地を残しているし、政治的支配は続けているから、完全支配下の市場の確保という大きな目標が浮かんだだけかも知れない。投資市場として日本を狙ったのか?

政治家や検察を支配し、基地を置くことは南米諸国への政策と同様だが、なぜか日本のほうが上手く行っている。資源がない日本の場合、米国の支配下のままのほうが商売には有利で、日本側に経済面の利益が大きかったからと思う。文化が違う日本で支配が成功すると考えた根拠はよく分からないが、良好な関係を保っているから、結果的に彼らの狙いは正しかった。

あるいは中国の支配を目指すビジネスマンの要求が強烈だったのか?門戸開放を求めていた米国は、それを邪魔した日本を宿敵と誤認したのかも。誤認とも言い切れない。門戸開放の要求に敵対する行為を日本側がやったのは確かだから。ただし、実は最初から同盟したほうが簡単だったかも知れないのに、判断ミスをしただけかもしれない。中南米と同じような手法で、邪魔者は冷酷に処分する、ただそれを繰り返すだけしか戦法を知らなかったのかも。

巨大市場の中国は、ビジネスマン達の夢舞台。投資に成功すれば大きく返ってくるはず。日本とフィリピンを支配しておけば、海上封鎖によって中国市場も支配できる。確証がある話ではないが、その狙いが皆無だったとは考えにくい。でも、そんな考え方も実証は難しく、肝心の「なぜ、ああまで日本を追い詰める必要があったか?」について、納得はできない。

疑問点⑤・・・共産圏の戦略

当時の米国の上層部には、かなりの共産シンパがいたという。明白なスパイも複数いたというし、大統領本人も結構怪しい。当時の先進的経済思想は共産主義だったから、エリートは興味を持ちやすかったろう。

ソ連のためには、日本と米国を戦わせたほうが良い。日本はシベリヤに野心を持っているし、皇室に忠誠心が高く、軍国主義で相容れない異質な相手。いずれ叩くべき。それを第一に考えるなら、米国世論を動かし、人種差別を利用し、色々理由をこしらえて経済封鎖するのは合理的。

封鎖すれば米軍が介入せずとも、日本は弱体化する。仮に戦争になっても米軍が負ける可能性はないから、最終的な損はない。満州から朝鮮半島までソ連が進出していける道が決まってくる。首脳の全員がそう考えていたとは思えないが、一部のスタッフは狙っていたとしても不思議ではない。

少なくともスパイがいた以上、共産主義が政策決定に関係した可能性はある。まったく荒唐無稽な話ではない。この本にも、そんな解説は載っていた。

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