映画評

  • 当劇場は劇場主のための映画館です。訪問者を期待しておりません。内容の客観性、正確性は保障できません。でも、真摯な批評を目指します。

劇場主

  • 乙女座 AB型 どの占いでも最悪の運勢 内科クリニックやってます。

Conflict of Interest

  • 特にありません。

おことわり

  • 当劇場は誹謗中傷を目的としておりません。もし権利を侵害されたと感じられた方は、申し訳ありませんが管理会社や公的機関に御相談ください。

« アメリカはいかにして日本を・・・・続き | トップページ | 眼下の敵(1957) »

2015年8月17日

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅(2013)

Paramount

- 名作一丁あがり -

高齢の男に賞金の通知が来る。男はそれを信じて、モンタナ州からネブラスカ州に息子と旅をする。親戚や旧友たちから金を要求されつつ、ついに目的地を訪れるが・・・

・・・・DVDで鑑賞。実にドラマ的なアイディアに満ちた作品。後味が非常に良い。アイディア、脚本、センスが素晴らしい。カンヌ映画祭で、主演のブルース・ダーンが男優賞を獲ったらしい。

白黒映画。白黒は、カラー撮影より心象の表現には向いていたかも知れない。仮にカラーだったらどうだったか考えてみたが、例えば「リトル・ミス・サンシャイン」は似たような性格の作品だったが、あれも充分に魅力を出していた。カラーでも充分にやれたのかも。

モノクロの場合、何も話さずにただ見つめあうようなシーンでは、より相手を思いやっているかのような、静かな雰囲気を感じやすい。この作品でも、運転しながら相手を見つめる際に、独特の間が成立していた。あれはモノクロ独特の効果かも。

おかしかったのは、親戚や友人達が老人を祝福しつつ、しっかり金を要求する態度。理詰めで過去の世話を根拠に、相応な謝礼を要求するセリフは、洋の東西を問わないものらしい。おそらく日本においても、全く同じセリフでドラマが成立する。これは覚えておかないといけない。

もし筆者(劇場主)が宝くじで大金を得たら、家内を始め家族の誰にも内緒にしないといけない。あらためて、そう思った。仮に自分の親戚が大金持ちになった場合、筆者の心に分け前を要求する野心が働かないという保証もない。ついつい、「あの時、俺は君を助けたよねえ~。」などと言いかねない。

かって奪われたコンプレッサーを盗み返す行動も面白かった。兄弟の意見が一致する点がおかしい。およそ盗むなど似合わない兄貴が、何のためらいもなく行動に走るのは、やはり親子の情のなせる業と思う。ということは、家族のために大犯罪を犯す場合も当然ありうるということ。世の中の犯罪の多くも、そんな理由で起こっているのかも。

親戚が大勢集まって何をするか・・・黙ってテレビでスポーツ観戦というのも笑える。実際にもそんな家族は多いかも。家族によっては、若い連中はひたすらスマホいじり、年寄りは焼酎飲みつつバカ話、子供は黙々とゲーム、そんなものかも。

劇場主が親戚と会うと、必ず病気の相談受け付け係になってしまう。これは内科医の宿命かもしれない。いっそ精神科医にでもなっていれば、随分と寄り合いが楽だったかもしれないが、そうすると悩み相談室が誕生していたかもしれない。楽な親戚付き合いができる職業は何だろうか?無職?

登場してくる人物達の体型も笑えた。恋人からしてジーンズがよく履けたと驚くほどの見事さ。従兄弟の兄弟も凄い肥満体。あちらでは一般的かも知れない。米国で出会った人たちは極端なスリム体型と、力士以上の肥満体が混在していた。

車に対する感覚もおかしい。どれだけのスピードで走って来たか、妙に気にするのは日本でならカーキチ、暴走族あがりがほとんどと思うが、あのあたりでは車への依存度が高く、かなりの修理もできないと日常で困る人も多いはずなんで、感覚が違うのだろう。

日本車と韓国の車との区別がつかないのも、いかにも彼ららしい。どっちでも、サービス内容が同じなら気にする必要はない。たぶん、世界地図を見せても生産国を区別できないかも知れない。

ピックアップトラックが米国では大きな市場を占めるらしいが、どうも理解できない。本格的なトラックには実用面で敵わないと思うし、実際にピックアップの荷台に何か積むことは、そうそうないように想像する。トラックのほうが便利では?でも、主人公らには独特の思いいれがあるようだ。何か、そんな伝統があるのだろう。

ネブラスカ州はグレートプレーンズに位置しているようだから、本当に広大で、地平線まで畑が広がったような風景。よく家が飛ばされないなと思う。竜巻がなくても、ちょっとした低気圧で凄い風が来そうなものだ。さえぎるものは何もない。日本の考え方だと、なるべく二階建ては避けて、防風林をしっかり周囲にこしらえ、家を破壊から守ろうと考えるだろうに、やはり歴史の知恵が足りないのか?

あるいは、竜巻が凄すぎて家は吹っ飛ぶものと諦め、防風の工夫を破棄しているのか?

ブルース・ダーンは懐かしい俳優。「ファミリー・プロット」では彼がなぜキャスティングされたのか理解できなかった。「帰郷」では、実に最悪の情けないキャラクターだったが、当時の彼の風貌では役柄に非常に合致していた。今回の役は、演技の跡が分からないくらいの名演。

聞こえたのか聞こえないのか分からないような表情、間の取り方が抜群に素晴らしかった。

アレクサンダー・ペイン監督は、「ファミリー・ツリー」の監督だそうだ。偶然か知らないが、ネブラスカ出身らしい。現地の雰囲気は熟知していたわけだ。あちらには車で移動しつつ、家族愛を確かめるコメディという確固たる領域があるようだ。ナンセンスギャグ、ちょっとした失敗、勘違い、諍い、それらによる事件をつなげれば、次々と名作が誕生するってわけらしい。

 

 

 

« アメリカはいかにして日本を・・・・続き | トップページ | 眼下の敵(1957) »