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2015年7月18日

WOOD JOB!~神去なあなあ日常~(2014) 

Tbs

- 山の神とTPP -

大学進学に失敗した主人公は、林業研修を紹介したパンフレットの美女に一目惚れして、研修に参加。虐待のような修行を経て、神去村に居候するが・・・

・・・DVDで鑑賞。この作品はDVDの人気が非常に高く、長いこと総て借りられている状態だった。たぶん、若い人達に人気があったのだろう。筆者(劇場主)は、それこそ神去村よりもっと山に囲まれた地域が故郷だから、林業や村の維持に興味があっての鑑賞。

良くできた作品だった。話の流れが単純で、妙なえげつなさ、深刻さが出ないセンスの良いコメディながら、ちゃんと訴えるテーマのようなものはある。人気が高いのも分かる気がした。

原作の小説~漫画?があるらしい。撮影場所になった田舎に関係のある方が書いた本らしく、作者は実際の作業を見たことがあったかもしれない。

主人公の染谷将太は非常に素晴らしい個性の持ち主で、最近はさまざまな映画に出ている。女性的な顔立ちで、頼りない体型、若者を代表しそうな軽い雰囲気が良い。

ちょっと前だったら、こんな役は濱田岳や吉岡秀隆の守備範囲だった。ドジを繰り返し、皆からバカにされるイジラレキャラは、常に需要がある。濱田との違いは、顔立ちが美しいこと、体が少し細いことだろうか。年齢的にも、濱田では無理が感じられる。

ヒロインは長澤まさみ。今回の彼女は少し存在感が薄い感じ。キャラクターに合っていない面があったのかも。もう少し野性味のある女優の方がイメージ的には良かったかも知れない。ヒロインの魅力を出したければ、彼女もドジだったり、もう少し違う役割があったりしたほうが良い。例えば、コワモテの姉御風のドスを効かせていた女が、酔っ払って失態を演じるなど、彼女も笑いの対象にできる何かがあると良かった。

先輩を演じていた伊藤英明は、昨今は肉体派の上官役が定番になってしまった。海猿の効果らしい。本当の教官たちは、おそらく非常に丁寧で親切に違いない。まだまだ山仕事に人生を賭けてくれる人は少ないから、怒鳴ったり殴ったりはできないと思う。

5月の連休中に出雲大社を訪ねた。

出雲半島の地形は独特。平野から突然神社の裏山がそびえ立ち、おそらく縄文期は海だったろう平野から見ると、ちょうど空の世界に至りそうな角度で稜線が延びている。あの角度は、祖母山を岩戸の町から眺めた時とそっくり。宮島の厳島神社から裏山を観る時とも、よく似ている。

あの角度で山を見ていると、神聖な存在を感じてしまう。山は基本的に人間より大きな存在で、なんらかの威圧感を感じさせるし、昔は実際に事故で命を奪われることが多かったはずだから、畏敬の念は自然と生まれてきたに違いない。神の存在を感じる。

不思議に思うのだが、アルプスの山々を眺めた時は、あんな感覚が浮かばなかった。ヨーロッパの山の方がずっと高いし、壮大なはずだが、理由がよく分からない。ただ美しいなあとか、険しいなあといった驚きは感じても、神がいそうだという感情が浮かばないのはなぜ?

たぶん、そこに住む人が全く違う感覚で、違う神をイメージしているだろうという認識が関係していたように思う。スイスの山の前で、日本式の鳥居を建てるのはおかしい。日本の山の場合は、村人が筆者と同じ感覚を持ち、そこで神に祈りながら生活しているという認識がある。山だけじゃなく、そこの人間も、神聖なる雰囲気に関与すると思う。

若い男性が好んだ作品であるということは、主人公に等身大の自分を意識できたからではないか?林業で食っていけるなら、自分もやってみようかという意識が多少はあるに違いない。都会で派遣業者に登録していても未来は開けない、それくらいなら田舎に行きたい、それは普通の考え方だ。

田舎のほうに受け入れる力さえあれば、互いの需要はあるはず。それには木材価格が一定のレベルにあること、付加価値を付けて商品としてなりたつ物を出荷できることなどが条件になる。自分の山を持っていなくても、労働力として木々の世話をして生活ができるなら、そのやりがいは素晴らしいものだろう。

山の神には、ぜひ若者に力を与えて欲しい。

TPPが成立してしまったら、基本的に木材価格は低水準から回復するはずがないと思える。木材チップを燃料にするにしても、集製材で高層建築に参入するにしても、よほど運送や管理を合理化しない限り、価格で太刀打ちできないはず。

おそらく、林業を主業にしつつ、空いた田畑を無償で貸して農業収入がある仕組み、独自の融資制度などが決め手になるに違いない。そんな制度が、果たしてTPPで許容されるのか分からないけど。

 

 

 

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