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2015年4月16日

インターステラー(2014)

Warnerparamount1

- STAY! -

食料不足と砂漠化で滅亡に瀕した人類。存続の希望を賭けて宇宙探検に出る主人公だが、娘とは辛い別れとなる。そして彼らが知った事実は、厳しいものだった・・・

・・・もし自分が人類を救うため、家族と別れる必要が出たら、そして旅が失敗と判明したらどうするか、自らのこととして考えざるをえなかった。個人的感情と、人類愛のバランス・・・映画の出来が良くないと、なかなか考え込んだりはしないはず。

インターステラーとは星の間の旅、もしくは旅する者といった意味らしい。「インセプション」という言葉もあったくらいだから、ちょっと気取った音の調子が気に入ってタイトルに使われたのかもしれない。一般的に使われるのは、おそらくスペース~とか~ワープなど、他の言い方ではないか?

この作品は変わっていた。普通は宇宙冒険の話の場合はヒーローと怪物や悪役科学者との戦いの物語が多い。その中で友情や愛情が大きな問題になることはあるし、悲しい別れや死の恐怖、または人類や生命に関わる深い哲学が語られる場合も多いが、この作品のように親子関係を中心に描いた話は少ないと思う。

宇宙の旅より、親子関係の比重が大きかった。

Warnerparamount

もしかして、スタッフの年齢が関係していたのかも。原案はノーラン兄弟が考えたものらしく、原作小説はないようだから、おそらく子育て世代のはずの兄弟には、娘との心の結びつきに関して思い入れがあったのではないか?あるいは、兄弟の親に対する独特の思い入れがあるのか?

子育てが終わった世代、あるいは若者世代の場合は、ちょっと感覚が違うかも知れないので、筆者(劇場主)が感じたほどの強い感情が湧いて来ないかも知れない。筆者には強い感情が起こった。子供との別れを連想させる話には弱い。

アイディアが素晴らしかった。愛、夢、冒険心、自己犠牲の精神、恐怖、別れ、それらが物語に上手く盛り込まれ、美しく悲しい流れになっていた。

映像も美しかった。ワープを映像化する方法には色々ある。スターウォーズのように放射線状の光で描くのが格好良い。でも怖さや迫力を出せるのは、今回のような手法だろう。もっと重力を表現できたら良かったかも知れない。ひずみを上手く表現したら、きっとさらに進化した映像が誕生するに違いない。

親子の別れの場面が秀逸だった。ただのお涙頂戴のシーンにならないようにと考えてあったに違いない。

娘がすねてとうとう顔を合わせないのだが、実際の別れもそんなもの。仲の良い友達と別れる時、うちの子供たちもプイとどこかに行ってしまったりしていた。挨拶しなさい、礼儀よなどという言葉を無視して行儀の悪い行動をとる、怒りと悲しみの暴風雨のような精神状態。あれを適切に表現できていた。

マシュー・マコノヒーの演技も素晴らしかった。近年の彼は凄いダイエットで病人を演じたり、ヤク中の異常者や犯罪者を助演したり、極端な役柄が多かった。元々はタフなヒーロータイプの役を演じたりもしていたのだが、それを捨てていることで次々と良い役が回っている。既に大スターになったと言える。

マット・デイモンが大事な役柄を演じていた。彼のキャスティングは意外性があって良かったかも知れないが、イメージとしては‘人類の存続のために主人公と対決するヒーロー的人物’が望ましかったと思う。好敵手が目立てば、作品のスリルは確実に増す。だから、とことん大真面目に対立する、タフな敵がいたほうが良い。

氷の惑星の撮影は、アイスランドの氷河を使ったそうだ。水の惑星も面白いアイディアだったと思う。でも、強い波が始終襲ってくる惑星の場合、やはり探査機の残骸は広範囲に拡がっていないとおかしい。作品中では時間の問題で片付けていたが、考え直すべきだったと思う。

そして重力や加速度の表現に関しては、おそらく改善できる点は多かったはず。CGでゆがみや軋みを微妙に描いても良いのでは?そして本棚を使った意志伝達の方法は、謎めいて印象的なイメージになりにくい欠点があると感じた。

宇宙を舞台にしてスリリングな映像を見せていた近年の作品では、「ゼロ・グラビティ」がある。あれも深遠な精神的要素がある作品だったが、この作品より単純でリアルだった。この作品は、下手するとオタク映画に陥ってしまう危険性があるところを、踏みとどまってまとめた点が素晴らしい。

現実問題、人類全体の存続を危うくする危険は、何が考えられるだろうか?

温暖化や寒冷化はまず考えうる。巨大隕石の襲来、過去にない規模の宇宙線飛来も考えられる。過去の映画はそのパターン。砂漠化、病害による作物の不振は、新味に欠けるし、恐怖の対象としてやや弱い印象もある。ただし、徐々に人類に迫ってくるという点から考えると、現実的な危機だったかも。

放射性物質はどうだろうか?福島原発から漏れ出た物質は、地球全体から見れば少量だし、急な害は出ないと思うが、海洋を通じて摂取され、積もり積もれば未だ知られていない病気が多発し、人類全体に及ばないとも限らない。でも、滅多にはないことだと思う。海洋の影響が少ない値域は生き残れる。

もし、本当に対処不能な問題が発生したら、多くの人は家族と過ごしたいと願うだろう。若者の中には無茶したいと願う人がいるかも知れないが、子供を持つ親なら、たいていは子供と過ごすことを選ぶに違いない。

家族の愛情が関係すると、人に強い感情が生まれる。作品中でも言っていたが、家族のためなら逆境にも耐えうるし、無理して会いに行こうとしたりもする。人類のためよりも強い行動への動機となる。それを大きなテーマとした点が、この作品の優れた点。

想いを伝えたいという願いや、それが達成されない場合の悲しさ、無慈悲な別れ、それらを表現する流れとして、この作品のストーリーは最高だった。SFに留まらない内容で、家族のドラマが心をうつ。

 

 

 

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