映画評

  • 当劇場は劇場主のための映画館です。訪問者を期待しておりません。内容の客観性、正確性は保障できません。でも、真摯な批評を目指します。

劇場主

  • 乙女座 AB型 どの占いでも最悪の運勢 内科クリニックやってます。

Conflict of Interest

  • 特にありません。

おことわり

  • 当劇場は誹謗中傷を目的としておりません。もし権利を侵害されたと感じられた方は、申し訳ありませんが管理会社や公的機関に御相談ください。

« 僕達急行 A列車で行こう(2012) | トップページ | スタンドバイミー ドラえもん(2014) »

2015年4月22日

八甲田山(1977)

Touhou

- 別な演出は? -

日露戦争前の演習目的で八甲田山に登った陸軍部隊。しかし、彼らは暴風雪に巻き込まれて道を見失い、山中を徘徊することになる・・・

・・・撮影が非常に大変で、難行苦行だったという。高倉健がインタビューに答えていたが、3年間かけて時期を選んで作ったらしい作品。資金や時間によく余裕があったものだ。会社から文句が出たろうと思う。

雪の中で立ちすくんで休憩をとるシーンがあったが、あれは本当に風雪の中でたたずんでいたから、一時のことでも寒くないはずはない。しかも、撮影に至る前、準備やセッティングなどの時間も必要。待ってる間に凍傷になってしまう。本物の映像を撮るためとはいえ、病気は覚悟しないといけない撮影だったろう。

悲劇だけで終わっており、希望につながる話や、小さな幸運のようなエピソードがなく、救いのない話といえばそうであった。何か別の終わり方がなかったろうかと、少し考えた。子供が楽しむ内容にはなっていない。恋人と観ても、悲しくなるだけかも。軍の演習も、この作品の作り方も、別な方針はありえなかったろうか?後の世代に何か引き継がれた、役立ったといった結論が望ましい。

女優たちが少し出演していたが、添え物的な扱いだった。当時は実際にそうだったかも知れない。村人の扱いもぞんざいで、実際に軍部からの強要、脅迫があったのでは?誰だって吹雪の中の雪山には行きたくないはず。口封じに殺された人間もいたかも。

想像に過ぎないのだが、この演習は日露戦争に実践的教訓をもたらしたのかもしれない。無茶な演習であったことに軍が気づき、実際の戦争での配慮に影響した可能性はある。気候をなめてかかると、戦争の前に自然に対して負けてしまう。それを確認できたのだから、演習は大きな意味を生んでいたのかも。

基本的に上層部が南国の出身者であったはずの当時、雪や高度、風に関する認識を確認するのに、あれほどの犠牲を要したのかも。実戦での数万単位の命を救う効果はあったのではと、せめて亡くなった方達をなぐさめたい。生還した隊員が実戦で死んでしまっているから、彼らが周囲の兵隊を指導できた点もあったのでは?

信じ難い事件。おそらく軍の幹部も、出動した本人達も思いもよらぬ、想定外の事件だったに違いない。当時は天気図を衛星情報から確認することなどできないから、気圧の変化で低気圧が来たら分かるといったレベルの対応しかできなかったとは思うが、演習で遭難するなど無駄死にも良いところなんで、上層部にもう少し配慮が必要だった。

この作品の原作は新田次郎らしい。山岳小説のスペシャリストである彼ならではのテーマだった。自然に発想が浮かんで来たに違いない。彼にとっても理解に苦しみ、義憤にかられる事件だったはず。憤りを覚えないとおかしい。

部隊の片方はルートや気候条件が違うとはいえ、無事に山を越えているのだから、おそらく道に迷わなければ生還できたのだろう。決定的なミスは、道案内を頼まなかったことのようだ。実際にどのような判断があって案内を確保しなかったのだろうか。悪役の連隊長だけのせいではないかも。

不思議なのは、平地を目指さなかった理由。地形から考えて平地に降りることは可能だったはずなんで、よほど崖が多いのか?平地も寒いが、山地と比べたら気温も上がるし、濃霧から逃れる可能性も上がる。迷ったと判断した時点で、基本方針は山を下ることにおくべきでは?

もちろん沢によっては断崖で降りられない場合もあるので、事前に降りやすい川を調べていないと難しい。せめて川があれば、水の保温効果によって低温が和らぐことが狙える。ただし事前にこの場所で迷ったらこちら、ここでならこちらに向かうと決めていないと怖い。完全に迷ってしまった場合は、安全な沢を選ぶのも困難。尾根を選びつつ、風を避けられる場所で休養し、視界が確保できたら交替で確認し出発、または風を避けて救助を待つのが鉄則ではないかと思う。

霧が出ると雪山でなくても怖い。視界が確保できているか、視界がなくても位置が確認できているのでないと、動くことは危険。そこらへんの周知徹底ができていなかったのだろうか?

子供の頃、何度か山の中で道を迷ってしまった。今思えばバカみたいな間違いをやっただけで、人里のわきを回っていただけだったが、当時は遭難したのかと恐怖におののいた。険しい山の中では四方が山なんで、奥に入っているのか出つつあるのか分からなくなる。地図が頭に入っていること、勘の良さ、準備、経験が必要。

阿蘇の砂千里に一泊した青年を診察したことがあるが、あんな何もない場所でマイナス10度近い寒気の中、普通のブルゾンの格好であったにもかかわらず、青年は何も後遺症を残していなかった。窪みに縮こまっていたからだそうだ。風を避ければ、体温を少しは保てる。映画のように風に当たりながら待つなど、あリえない対応。

 

« 僕達急行 A列車で行こう(2012) | トップページ | スタンドバイミー ドラえもん(2014) »