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2015年4月 4日

君よ憤怒の河を渡れ(1976)

Daie

- 熊も味方 -

検事の主人公は、仕事中に逮捕される。ワナにはまったようだ。逃亡した主人公は、警察の追及をかわしながら自分をはめた敵を捜査し、やがて黒幕にたどりつくのであったのじゃあ・・・

・・・DVDで鑑賞。この作品は中国では8億人が鑑賞したという噂の、超ヒット作品。当時の中国には外国映画がなかったことも理由だろうが、この作品でそんなに感動するのかねと、正直意外な印象。テレビの刑事もののほうがマシだったかも。

よくできた話ではあった。主人公が謎を解いていく流れは自然で、納得できるものだったし、主人公を助ける周囲の人たちも魅力的だった。敵のはずの刑事も格好良く、真の敵はあくまで憎々しげで、役割分担が明確。皆が良い仕事をしていた。

出来すぎた面も多かった。熊さんが主人公に都合よく出現してくれていた。ヒロインとめぐり合うために、熊と対峙するのは良いシチュエーション。しかも、主人公が逆襲されて意識を失うのも好都合。また、逮捕された主人公が逃げ出すきっかけにも役立っていて、あの熊公は高倉健のファンではないかと想像。きっとそうだ。

検事のくせに、この主人公は体力が素晴らしく、複数の刑事が追いかけても銃撃しても逃げ切れている。おそらく、司法試験はカンニングか何かで運よく合格しただけで、普段は充分に運動していたのではないかと思う。検察庁で見かける検事さんたちは、どなたも運動不足でストレス過剰、血圧が高い。仕事のし過ぎで顔色も悪い。この検事は特別な存在で、仕事してなかったのでは?

そもそも検事が主人公というのは、話としておかしかった。検事は捜査が終わってから出てくるもの。ある程度、結論が出た段階だから、既に犯行はおよそ周知していることが多いと思う。刑事のほうが良かったのでは?

高倉健の演技は、その後の渋い路線とは違って、やや味気ない印象も受けた。完全にテレビドラマ向けのアクションヒーローであり、後年のような影のある人物ではない。だが、中国の人たちには格好良い勧善懲悪の大ヒーローに写ったのだろう。後年の方だけが良いとも言い切れない。

最後には勧善懲悪のリンチシーンがあった。よく問題にならなかったものだと思う。あれはいかんでしょう・・・あのシーンは、おそらく学生運動に敗れた元闘士の恨みがこもっていたに違いない。文化大革命に通じるノリだ。悪徳権力と戦うために、無法な行為もためらわない、過激派的なセンスが感じられた。

中野良子がヒロイン役。中野良子は不思議な女優で、見ようによっては美人とは言えないようにも思うのだが、声や表情が色っぽくて好感を持ってしまう。筆者は子供の頃から、子供なりにだが、彼女のお色気に悩殺されていた。筆者だけじゃないと思う。子供でも色気は分かるものだ。

超美形でなくても色気のある女性がいるが、あれは何から発生しているのだろうか?声の要素は大きいと思う。少し低めだったり、ハスキー。あとは身のこなし。柔らかさを感じさせると色っぽい。体型は細いか太い、どちらもありうるようだ。フェロモンの名残りのような匂いもあるかも。

中野の場合、演技以前の魅力が感じられる。この頃はテレビで見かけることは少ないが、たしかに独特の風貌で、そう言えば中国の奥地の少数民族にも見かけそうな顔立ち。ただし馬を走らせて主人公を救うなんて、目立ってしまって本当なら大変だったろう。しかもアスファルトの上の馬は走りにくいのではと、要らぬ心配。ドラマのための設定で、現実感は完全に失っていた。今日の感覚で言えば笑ってしまうだけのシーンだったが、あれは中国の人には「なんて勇敢な女だ!」と、賞賛される結果と相成ったのだろう。

刑事役の原田芳雄は、声といい風貌といい、松田優作そっくり。本当は原田のほうがオリジナルなんだろうが、それにしても格好付け過ぎている。あんな刑事いるはずがない。今日だと警察内部からも一般市民からも批判されて、倉庫担当か何かに押し込められてしまうだろう。もう少し現実的なキャラクターのほうが良かったと思う。

熊や馬まで味方につける主人公に呆れないなら、この作品は娯楽作品として今でも鑑賞可能かも知れない。子供にはどうかなと思うけど、恋人と笑いながら観る映画としては結構いい線いっている。

 

 

 

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