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2015年3月 5日

主人公は僕だった(2006)

Sony


- 主人公殺すべし -

税務署勤務の真面目な男。ある日、彼には空耳のような声が聞こえてくる。声は彼の日常を丁寧に解説している。分裂病かも知れない。彼は専門家の文学者に相談する・・・

・・・3月1日、衛星放送で鑑賞。放送は、何が違うのか分からないが、DVDで観るより高級感が漂うような気がする。画質も微妙に違う。圧縮ソフトの影響か、音響に違いがあるのか?あるいは、かってビデオがない時代がそうだったが、「うわあ、洋画劇場で今日、〇〇があるってよ!」という期待感がそうさせるのか?でもビデオ世代の我が子達も、家にビデオがあるジブリ作品を、テレビの放送でわざわざ観ている。どんな理由だろうか?

主人公を演じていたウィル・フェレルの風貌がまず素晴らしい。巨大な体格。明らかに女性にもてそうにない長い顔、小さな目。喜劇専用の顔だと思う。ただし、この作品は後でも述べるが、文学的な演出によって悲劇的ニュアンスが加わり、かなり美しい話になっているので、彼の風貌にも悪い印象は感じなかったし、彼が女性に好感を持たれることを祈りたくなった。

この作品はラブストーリーでもあった。したがって、恋仲の二人が鑑賞しても良い作品。子供が観ても、特に悪いようには感じなかった。美しい話であったから。そして、最初から良いアイディアの話だった。ヒネリが効いている。

ヒロインのマギー・ギレンホールが、また素晴らしい。‘レーア姫’とよく似た顔だが、敵意や皮肉を実に適切に表現していて、並みの演技力ではないと思った。ただし、彼女の出演作では、この役が一番素晴らしいかもしれない。他の場面では、この役ほどの魅力を感じなかったので。

ストーリーよりもまず、この日本語のタイトルには感心できなかった。ストーリーのネタバレになり、意外性や期待感などの魅力を損ないかねないタイトルだと思う。むしろ、「恋する税務官」などのように、ラブコメかなとボカしたら良かったのでは?

また、ストーリー的にも中途半端な印象。悲喜劇にしたほうが絶対に作品の後味は良くなるはず。したがって、やはり主人公には死んでいただいたほうが良い。死から逃れようと、いろいろ工夫して成功したかに思えたが、結局予想できない不運で亡くなってしまう・・・そんな話にしたほうがまとまるし、少なくともヒットはしたと思う。

この作品には文学的匂いが感じられた。本当の意味での主役に相当するのは作家だったし、微妙なニュアンス、表現にこだわって原因を追求する学者の存在は、文学的なセンスがないと考えつきにくいと思う。脚本家は、相当な学者~文学者タイプかも知れない。

欧米には、格言などがスラスラ出てくる文芸チックな人物が多いらしい。学者に限らないようだ。それぞれ弁舌が得意な人間や、純文学の方向に進む人間など、様々なバリエーションはあるようだが、明らかに日本よりも文学表現へのこだわりが目立つ気がする。それによってセンスが生まれ、イノベーションへとつながることもあるかと思う。純粋に技術的な思考だけしていても、何が必要かといった分析には文系の発想が必要だから。

新しいアイディアは、結局は脳の中において、言葉で構築される。スティーブ・ジョブスも、きっとヤク中になりかけながら、新しいアイディアを考えついたに違いない。その際、彼の教養がきっと役に立っていたのでは?文芸だって、何かの発想や、プレゼンの言葉に違いをもたらしていたのだろう。

 

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