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2015年2月27日

グース(1996)

Sony

- 許可取れるか?-

父に引き取られた娘は、心を閉ざしていた。ある日グースの卵を見つけた彼女は、雛を育てる決心をするが、そのためには越冬地への冒険が必要となる・・・

・・・実話に基づいているそうだ。文部省など、何かの推薦だったとは聞かないが、美しい話。2月22日、衛星放送で鑑賞。アンナ・パキンが主演で、最近はSF映画でのイメージが強い彼女だが、当時は神経質そうな少女役が似合っていた。

グース達が空を飛ぶ映像が美しい。確か、テレビでこの作品のメイキング紹介の番組があったと記憶する。本当に人間に慣らすように、実際は大人の男なんだが、彼が育てて慣らし、パラグライダーのような乗り物の横を並んで仲良く飛んでいくのを撮影したんだそうな。

実話から企画が考え出され、それに合わせて慣らしたとしたら、相当な期間と金と執念を要しただろう。もしアカデミー賞でも取れれば、その努力への報いはあると思うが、逆にもしヒットも何もなかったら、かなり残念。結果的に作品は高く評価されたのだから、努力の甲斐はあった。

グースを守ることは、娘の心を守り育てることと共通していた。その点が作品の魅力になっていたと思う。話が美しくなる。もし動物愛護のために人を傷つけるような展開だったら、何か了解しづらい点が出てくる。この作品では警察を敵に回した描き方だったが、それすら痛快に感じることができた。そういうプロットがあったから当然だ。

ヒロインの父親役も良かった。人が悪そうな印象が全く浮かばない人物だった。他の役者でも好人物を演じきれる人は多いが、この役者は他の作品でもおよそ好人物だけを演じているらしい。ヒゲ面の大男なんだろうが、あんまり笑わなくても良い人そうな印象を感じさせるのは素晴らしい個性だ。

少女の感性の変化、成長や慈しみ、互いの思いやりなど、感じ入るものが多かった。加えて、可愛らしいヒヨコ時代のグースの歩き方、空を飛ぶようになると開放感、そして美しい空からの眺め、それらがイメージ通りだったろう、作品の中にあふれていた。良い企画で、良い演出。アンナ・パキンの個性による部分も大きかったろう。ただカワイコちゃんタレントにはない、悩みを抱えていそうな真実味が良かった。

この作品は家族で楽しめると思う。ワクワクするスリルなど全くないとしても、子供なりに感じる幸福なイメージ、達成感など、肯定的な要素がありそう。恋人と観ていたって、悪い感情が起こるとは考えにくい。内容が真面目すぎる点がちょっと玉に瑕だが、そんな映画も良いではないか。

日本でこのような作戦が実行可能だろうか?おそらく、役所への届出が必要だろう。飛行ルート、中継地点の届出、連絡を各地の管轄所にやる必要があり、前例がないからと引き延ばしか拒絶の方向に押しやられる可能性が高い。役人にしてみれば面倒だし、自分が評価される大事な仕事に集中したい。妙な計画は最初から無視したいのが本音。少なくとも担当して責任を問われたら困る。

飛行を許可したら、事故が起こった時に管理責任を問われる。電線などの建築物にぶつかる可能性はかなりあるが、どう予防できるか想像するのも難しい。公共の飛行物との衝突でも起これば、大惨事になる。役人の首が飛ぶのは確実。だから許可したくない。

小さなジャイロカイトはレーダーに写るのだろうか?写るなら大変、スクランブル発進した戦闘機に狙われる可能性もある。攻撃はされないだろうが、風圧で落ちてしまうかもしれない。落ちたら、そんな計画をやらかしたバカな父娘として、袋叩きになる。ワイドショーの良い題材になることだろう。

そして日本のグース達は、料理して食べられる結果になったとさ・・・うわあ、なんと夢のない話。日本では少女の心も引き裂かれ、立ち直れないだろう。

 

 

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