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2015年2月15日

細雪(1983)

Touhou

- 小津調 -

大阪の旧名家の4人姉妹。3女の見合いの失敗と4女の恋愛事件、かっての栄華、衰退する現状、互いの諍いや仲直り、のしかかる軍国体制などが描かれた物語。

2月10日、BS放送で鑑賞。過去に3回の映画化、数々のTVドラマ化があったそうだが、鑑賞したのは今回が始めて。細やかな心情の描写がよく出来ていた。ただし女心はよく分からないので、よく出来ていた気がすると言うべきかも。またいっぽうでドラマというのは全てそうだとは思うが、やや退屈になる遅いテンポは、人によっては好き嫌いがあるかもしれない。

着物を並べて陳列するシーンや、花見のシーン、雨の中の風景など、美しいシーンが多かった。惜しむらくは、もっと高性能のカメラで撮影できていたら、もっと味わいが感じられたろうにと思う。ノスタルジックな基調、独特の哀愁、美意識が素晴らしかった。

子供には受けない映画と思う。女の子にはどうか分からないが、少年には解読不能な世界感がある。恋人と観る映画としても、最適とは思えない。BGMは新たに作るべきではなかったろうか?クラシックの名曲には少し違和感を覚えた。

岸恵子51歳、佐久間良子44歳、吉永小百合38歳、古手川祐子24歳の頃の作品。年齢を考えると、大物女優達はさすがに実年齢が高すぎる印象もある。文芸作品、大作の場合はよく年齢が高めになってしまうが、個人的には有難くない。ピチピチした肉感的魅力、化粧ぬきの色気も必要ではないか?ポルノ路線にまでする必要はないが、この作品には目立った濡れ場もないので、実生活を描く作品として特殊であることは間違いない。

原作ではどうだったろう?やや変態趣味の気配が漂う作品だから、濡れ場は多いのでは?読んでないから分からないけど、作者には女装趣味や、何かのフェチ趣味がなかったろうか?感覚的にオカマ趣味のような、女性より女性らしい感覚の鋭さが感じられるような気がしてならない。

谷崎の家族が題材になっているらしいので、描写が細かい印象。モデルがいるといないとでは、表現に違いが出るのは仕方ないだろうが、それにしても細かい。書かれた本人達はどう思ったろうか?

最初と最後に、小津安二郎タッチの対面して交互に話すシーンがあり、オマージュにもなっていた様子。小津調は古いから、ノスタルジックな雰囲気を出す効果も感じられた。

石坂浩二が良い味を出していた。彼は婿養子のはずだが、次女の夫なのに婿養子として妻の姓を名乗るのは、私の感覚では変。大阪方面では複数の婿を迎えるのが普通のことなのだろうか?妻の姉妹たちに振り回される姿や、ちょっとした浮気心、理容師に本音を打ち明ける際の言葉など、実在感が感じられる役柄だった。温和な雰囲気の石坂には良く合う役だった。谷崎本人の分身でもあったろう。

同じく旧家の坊ちゃんらしい勘当される人物も、上品で生活力のなさそうな態度、声質や言葉使いが素晴らしかった。マヌケな人間の存在はドラマでは非常に大事と思う。マヌケが自分では自分を粋だと思っているように演じると、実在感が出る。さらりと、楽しそうに演じていた点が良かった。本業は落語家のはず。でも、本職の役者達よりも存在価値があったように思う。

伊丹十三が懐かしい。この後、彼は監督として急に脚光を浴びるのだが、当時は妙な声の個性派俳優、どちらかと言えば悪役のイメージがあった。この養子役も、演技よりも彼の生い立ちがあるからこそ成り立つ上品さが味につながっていたように思う。

旧名家の人間は、必要のない場面で過去の栄光、誇りを口にすることが多い。これは旧家出身でない自分の僻みかも知れないが、何か誇るものがないと人は自信を持つのが難しく、人と相対するのも辛くなるものらしい。圧倒的に優位でなくとも、一定の立ち位置があることが大事なんだろう。弱い立場では不安で仕方ないという心情が発生しやすいから。

その態度が上手く演じられていた。女中やかっての出入りの人間に対する態度や、家族内部でも入り婿の立場と本家、分家の立場など、細かい感覚の表現が実に上手くできていた。今日では意味を失いつつある観念で、くだらないといえばそうだが、そんなものにしがみつかないと誇りを損なう感情は、形を変えながら続くものと思う。

誇りを大事にするいっぽうで、実利に問題が生じた時は頭を整理し、バランスを熟考する・・・姉妹の判断には必ずそんな一面があった。心情ばかり言っていたら、姉妹はまず破産していたはず。店を整理したからこそ、今の生活があるじゃないか・・・長兄の言葉は正論で、だからこそ悔しい・・・そんな葛藤、バランスの判断が、ドラマの根幹と言えるかも。ドライに実利ばかり考えていたら、ドラマにはならない。

もし可能なら、極端にドライな人物を悪役として登場させて欲しかった。原作にいないのだろうか?悪役は必要。ロシア文学なら必ず登場するだろう、金儲けに徹し、成功した人物が。そんな人物が3女の見合いの相手として付きまとうなど、よくあるパターン。家族の浮世離れを悪役君の言葉が強調してくれるから、普通は必須のキャラクターのはずなのに。

産業構造が変われば、名家の没落、新興財閥の形成などは必ず起こる。ずっと繁栄を続ける家は珍しい。大阪あたりだと、大きな店が潰れては現れ、常に新陳代謝が起こっていたのだろう。商家→デパート→郊外のスーパー→最近では巨大なショッピングセンターも過当競争に入って業績がよろしくないそうだから→コンビニ+ネット通販へと、どんどん主流が移る。

熊本の県民百貨店も閉店になる。子供の頃恐竜展を見に行って、入場待ちのためにビルを一周し、数時間待たされたのが懐かしい。建物にスペース的な余裕があって、階段コーナーなど、個人的には鶴屋よりも豪華そうなイメージがあったが、ブランド的に鶴屋を凌駕するには至らなかった。ブランドイメージというのは難しい。高い物ばかり並べていたら買える人がいなくなる。安売りしたら、価格競争に埋没して利益を失ってしまいかねない。戦略を間違わないように、次の時代を察知して立ち回る必要があった。

百貨店の閉店は、旧大店の閉店ほど心に響くものではないと思う。でも、そこに勤めていた人達にとっては大事件。一消費者として、ダイエーや寿屋の閉店は非常に困った。あんな店があれば良いといまだに思う。今の店には国産で、綿が適度に混じっている品が少なく、ブランド品を探さないといけないので面倒。

SONYやシャープなどもどうなるのか気になる。まさかソフトバンクは大丈夫だろうか?借金は凄いはず。ただ、あの会社は仮に破綻したとしても、かっての大店のような哀愁を伴わない気もする。ソフトバンクは虚業ではないが、ネット会社のイメージが強いから。

農協はどうなるのか?7日頃の折衝の結果、農協の全中が権限縮小することになった。全中という組織の意味すら知らなかった私だが、今回の動きを見ていると、アメリカの意志がもろに反映されたと確信できた。政府のほうでは各地の農協が自由に活動するために必要などと説明していたが、明らかに詭弁。菅官房長官の話し方は、自分で言うのも嫌そうで、嘘は嫌いだ!といった雰囲気が感じられた。TPPの条件として、おそらくそれより前からも、農産物交渉、保険業への参入問題で、農協を無力化する必要があると米国が考えたのだろう。

主役は米国の保険業界だろうと思うのだが、たとえば逆に日本の農協が米国に進出することは難しいのだろうか?農協のような団体の商品、郵便貯金や郵便保険、日本型健康保険制度などは、輸出できるような気がする。米国の会社のようにハゲタカ的な強欲さがないので、収益の面では劣勢だろうが、格差に苦しむ米国の場合、日本型の貯金、保険制度は支持される可能性はあると思う。TPPの逆利用で、世界に進出できるのでは?

成功したら、米国の業界が黙って見ているはずはないが・・・

 

 

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