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2014年12月27日

単騎、千里を走る(2005)

- クセあり -

息子が末期癌となり、父は息子の意志を継ごうと、単身中国奥地の農村に赴き、そこで住人の演舞「単騎、千里を走る」を撮影しようと考えるが、障害が次々と発生・・・

・・・DVDで鑑賞。美しい山々の光景が見事だった。農村の人たちの素朴さや国を越えた友情が上手く描かれていた。家族で観ることができる作品だと思う。

そのいっぽうで、役者の演技のテンポが遅く感じられ、演技の多くも自然さに欠けている印象を受けた。本職の俳優ではない住民の参加もあったのかもしれないが、学芸会っぽい動きが所々に見られて、やや興ざめする場面もあった。ラストで主人公が海を眺めるシーンが急に出て終わるのは、さすがに唐突すぎないか?

見方を変えると、素人っぽさが良い味を出していたと言える。現地ガイド役の男性などは非常に良い顔をしていて、日本映画でも時々登場する‘一般人役’専用の役者のような自然さが良かった。

監督のチャン・イーモウは国際的に高く評価されているらしいが、リズムやテンポの点でハリウッドの監督たちとは異質に見える。子供の頃から映画を見つづけた世代ではない関係か、妙な間合いで会話したり、くど過ぎたり独特に感じる。観ている側の慣れの問題かも知れないが。

昨今の日本映画の監督より優れていると感じる部分もあった。主人公の息子がとうとう登場しないのは、せっかくだから対決させて盛り上げようといったアザトイ演出が好きな日本の監督より技巧的で意欲的。小さな演出だったが、こだわりが感じられた。もちろん、日本の監督にも同じような演出をする人はいるが、安っぽい人も多い。

苦労して活動しているが、主人公の息子が本当に「千里走単騎」を見たかったのか曖昧になるし、現地の人達と非常に親密だったわけでもないらしいと分かるなど、主人公の行動の足を引っ張るような出来事が次々と発生する流れが非常に上手く出来ていた。意味がないかも知れない目標に執着する・・・そこには哀愁のようなものとともに、息子への想いや自分の過去の言動への反省など、漂ってくるものがある。美しい話になると期待できる。

途中で出てくる村人の議論が面白かった。日本の集落でも何かを決めようとする場合に、屁理屈めいた論理を長々と演説する人物は必ずいる。中国の場合、より主張の仕方が激しい傾向があるように想像するが、この作品の中では大声で怒鳴りあうシーンはなく、問答無用の態度に徹する役人もいなかった。

行ったことがないので解らないが、実際の中国では正論だろうと何だろうと、保身のために黙殺する役人が圧倒的に多いのでは?役所はどの国も酷いが、中国の場合は一党独裁で手続きの管理が厳しいから。

主演の高倉健は、年齢相応の役柄を上手く演じていたと思う。この役のキャラクター設定は、たぶん最初から高倉健をイメージして作られたのではないだろうかと思った。あまりに無言すぎる場面も多い。ビデオを作製するシーンは感動的だったが、でもかえってわざとらしく、韓国や中国流の盛り上げ方に過ぎないとも感じた。

いかにも盛り上げるか、そしてわざとらしくならないか、テンポ、観客の納得のいくような解りやすさなど、国によって差がある部分はまだ多い。やがてハリウッドスタイルの演出に皆が慣れて、同じようなテンポでないと違和感が感じられるようになれば、妙なテンポに戸惑うことはなくなるのだろうが、それはそれで寂しい。

当時はどうだったか知らないが、今の中国の農村に主人公が行っても、まったく相手にされないだろうと思う。通訳は契約事項以外のことにサービスしてあげることは考えにくいし、役人も交渉すら拒否、村人は白眼視では?暴力沙汰も、時期によってはありうる。

 

 

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