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2014年11月 9日

ラッシュ/プライドと友情(2013)

Universal

- 古いタイプ -

ニキ・ラウダとジェームズ・ハントがF1の年間チャンピオンの座を争った時期を中心にライバル関係を描く作品。DVDで鑑賞。

よく出来た作品。当時の映像もかなり挿入されていたようだが、再現したと思える映像にも細部までのこだわりを感じた。メジャー路線ではなくても、良い作品を作りたいという意志を感じる。その意味では職人的な古いタイプの映画。子供だましでも売れれば良いというスタイルではない。

題材を上手く脚本化したと思う。ニキ・ラウダは有名だが、彼とライバルの関係に焦点を当てるのは脚本の勝利。アイディアの素晴らしさが活きている。CGなどを売りにした作品ではない。

したがって、この作品はたぶん子供には全く向かない。マセガキには最高の大人びた映画になりうると思うんだが、小さい子には向かない。恋人と観るのも良いか悪いかよく分からないタイプの作品。完成度の高い映画とは思うが、観客を選ぶタイプでもある。

主演のダニエル・ブリュールという俳優は記憶になかったのだが、過去の出演作を調べたら、結構見たことはあったはず。独特の個性がある、悪役向きの役者の印象。今回の役柄には仕事やプライドに固執する部分で最高の味が出ていた。キャスティングは大成功だった。

クリス・ヘムズワースのキャスティングも大成功だったと思う。役としては、こちらのほうが難しい。モテそうな圧倒的な雰囲気がもともとないとおかしいし、タフな部分や、緊張で吐いてしまう弱さも表現できないといけないし、少しでも臭い芝居をしたら映画全体が大きくダサい方向に陥ってしまう役だったはず。よく演じていたと思う。

構成も考えてあった。重要な転機となるドイツの試合の前から話が始まるので、ここで問題が発生すると誰にでも分かるようになっている。古典的な手法に忠実に作っているのだろう。ただし、それは人によっては古臭いという感覚につながるのかも。

ニキ・ラウダを知ったのは事故の後。やけどの跡が目立つドライバーの映像を観て気になって始めて知った次第。でも、私達の時代のチャンピオンはアラン・プロスト。やや遅れてアイルトン・セナ。ラウダは過去のスターであった。自分が車に乗れない時代は、F1への興味も持ちようがない。その後、シューマッハが強い時代は、今度は強すぎて興味が失せるという妙な現象もあった。

自分で金を工面して売り込むという話は本当だろうか?まるで独立プロダクションを作るハリウッドスターのようだ。映画ではあまり出てこなかったが、きっとエージェントとなる弁護士達を複数有する有力ドライバーもいるのではないか?エンジンメーカー、車体の工作者達、ドライバーや宣伝担当者、税務や収支関係の専門家など、多数の人間が互いに売り込む世界なんだろう。

F1に限らず、プロのドライバーがまともな感性を持っているとは思えない。仮にチャンピオンになれても通常の尊敬の対象とは違い、偏執狂、オタク、異常者の雰囲気が漂う連中。極度の興奮と緊張状態の中で耐えられる点は凄いが、どんなに念入りに点検していても、劣化した部品によって突然車がコントロールを失う危険性はあるから、自殺行為を競っている状態に近い。

筆者は4駆の車でダート走行をするのは好きだが、高速は出さない。万が一エンジンが止まっても何とかなるような状態でないとテクニックを試す気にならない。車で命を落とすなんてバカバカしい。だが、好きな連中は極端なスピードやGの体感に酔っているに違いない。

雨の中、高速でサーキットを走るなんて普通の感性ではやれない。おそらく強烈なライバル意識、成功への欲、それとツッパリ全開の向う意気、スリルへの中毒、そんなものによって頭がおかしくなった状態では?

ハントがレース前に吐くというのは、たぶん自律神経の興奮で胃腸の動きがおかしくなるということを表している。そんな状態で能力を発揮するのは、たいていの人は難しいのではないか?少なくとも球技の世界では力が入りすぎてミスをしやすい。カースポーツの場合もハンドル操作が過剰になりそうな気がする。そこをトレーニングでコントロールするのだろうか?

彼らの間に友情があったかどうか、本当のところはよく分からない。互いに強く意識し、競争意識を持っていたのは間違いないし、商売敵としての意識は強く持っていただろうが、それも一種の友情なんだろう。仲良くするばかりが友情とは限らない。戦いが終わった後、相手への強い意識を懐かしく思えば、やはり一種の友情なんだろう。

そのへんの複雑な感情を上手く表現できた作品だと思う。男っぽい映画。この作品を女性たちはどのように感じるだろうか?・・・「アホ同士の変態的関係よ!」って、思うのか?女性にもライバル心はあるはずだが。

個人的には、レースの迫力、加速力や風圧、振動の表現に、もう少しの工夫が欲しかった。あんまり過度にやってしまうと画像が激しすぎて吐き気が出るほどになるから、時間やカットを工夫して、顔の肉が歪み、恐怖が明瞭に写る、そんな細かい演出を工夫して欲しかった。今の技術なら、もっと迫力を出せるはず。

 

 

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