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2014年9月16日

鑑定士と顔のない依頼人(2013)

Pacocinemato

- アイディア勝負 -

ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品。高名な美術・骨董品鑑定士が、謎の依頼人から財産の鑑定を依頼される。そして依頼人と鑑定士は、ついに面と向かい合うことになる・・・

・・・DVDで鑑賞。予告編が良くできていたので観てみたいと思っていた作品。トルナトーレ監督作品なら、涙が確実な大悲劇がラストに来そうな気がするし、おそらく入場料くらいの価値は確実にあると予想される。でも上映時間が合わなくて観れなかった。

この作品は、アイディア勝負の映画だと思う。謎の依頼人はどんな人物か、依頼人が病気を克服することができるか、鑑定士が幸せをつかむことができるか、古い機械を修復し、動けるようにできるかどうか、そんな点に興味が湧くように作られていた。

数字に特異な能力を示す女性の存在も良かった。独特の雰囲気が出ていた。ただ、せっかく美術品を扱う映画だから、もっと重厚感のある暗い画質で描いても良くなかったろうか?静かさ、重厚感のようなものには欠けていた気もする。

まだ観ていない方にはネタバレになって申し訳ないが、途中から展開が変わって、予想とは違った方向に話が進んだ。でも一回流れが変ると、ラストの展開は読めてしまう。後半1/4くらいは興が冷めてしまった感もあり、盛り上げ方に問題があったかもしれない。余計な部分を省き、呆然とする主人公の驚きで話を終えても良かったのでは?

トルナトーレ監督は、アイディアに集中しすぎてラストの編集が苦手なのかも知れない。「ニュー・シネマ・パラダイス」でも、終盤は安っぽいドラマになっていた。強烈な印象を残してさっと終了するのが、客商売のこつのように思う。

さらに言えば、古い町の映画館や幼少時代の想い出、または極めて悲劇的な境遇など、誰もが共感するような強烈な設定があったほうが良い。はたして、この作品の主人公に多くの人の共感が集まると考えるだろうか?企画の基礎の部分が大事と思う。

主演はパイレーツシリーズで悪役を演じていたジェフリー・ラッシュだったが、動作が少々おかしい。長い顔、渋すぎる表情にいかり肩で、スタイルの面では魅力的とは言い難い。競りの壇上でも、さっそうとしているとは感じなかった。何かリズムや素早さに欠けていた。役柄から考えると、さっそうとしていないが有能、もてないし偏執狂のような愛情を美術品に持っているから、彼の演じ方で良かったかも知れないが、演出のちょっとした加減で、もっと良い味が出せたかも知れないと思った。

主人公は、観客に好感を持ってもらわないといけない。仮に悪役であるとしても、何かの魅力があるか同情を買わないといけない。この主人公の場合、例えば過去に不幸があったとか、女性恐怖症で話せないといった条件が必要だったと思う。上手く同情を買えていただろうか?

ジム・スタージェスが鑑定士の相談に乗る人物の役で、これは少々若すぎ、キャラクターとしても現実感があるのかどうか、ちょっと理解に苦しんだ。女性達に優しくして料金をサービスする人間らしいが、そのような信頼関係を作るには相当な時間がかかる。特に欧州の町の広い通りに面した場所で開業できるためには、商売として成り立つだけの原則があると思う。彼の店が成り立ちそうかと考えると、無理な気がした。客と話している時間があるようでは、基本的に経営は苦しいはず。

仕事上のパートナーのもう一人、ドナルド・サザーランドのほうは、大きな資金を持ってそうには思えない。主人公から得られる分け前だけが収入かも知れない。売れない画家は裕福ではないはず。彼が何か大きな計画を練ることができるだろうか?他に意外な黒幕がいたほうが自然な流れだったと思うが・・・

空き家に家具を持ち込んで古い屋敷に見せるとすると、埃や蜘蛛の巣など、様々なものをそれらしく仕上げないといけない。でも、それは現実的に難しいと思う。そもそも、そんな設定は必要ない。どこかの屋敷をそのまま使えば良い。

また、数年暮らした部屋には、それなりの臭いや汚れが生じるはず。自分で全て管理することは、どんな潔癖症の人でも難しい。家具の縁などは壊れるだろうし、天井なども汚れてくる。どれくらい暮らしているか、おおよその推測はできると思う。だから、その点に関しても設定に無理があったと思う。

古いロボットが大事な要素だったが、あれは元々は誰が持っていたものだろうか?考えてみると、これも少々不自然な気がする。希少価値のある物を元々持っていたなら、それを売ったほうが利益は確実で、しかも大きいのでは?もし最初から作ったなら、その色合いや肌触りは、プロの目をごまかすレベルで作らないといけないが、それは主人公の特殊能力から考えて難しいのでは?

主人公のキャラクターにも少し違和感を覚えた。欧米の場合は特異な能力があれば50代でも会社組織を持つ鑑定業者が誕生しうるのだろうか?日本では60代くらいにならないと、その道の大家としては評価されない気がする。美術品の場合は、おそらく長い伝統があることだろうし、相当な高齢者にならないと主人公のような立場にはならないのでは?

だから、そんな人物が若い娘と恋におちることは少し無理な設定。もう少し設定が違って、例えば新進気鋭の鑑定人で、大御所達から能力を認められているが、いっぽうで敵も多いような、もっと自信過剰でギラギラした人物のほうが自然だと感じた。

そんな男の失敗のほうが、ドラマとしても盛り上がるはず。生意気、強気の人間が失敗するパターンは、よくトム・クルーズの映画にあった。転落の大きさが際立つという意味では、主人公はもっと若い方が良い。

 

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