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2014年8月29日

アメリカン・ハッスル(2013)

Corumbia

- 味が不足 -

詐欺を生業とする男女二人組みが、FBIや政治家、マフィアと絡んで大きな勝負に挑む話。詐欺師の妻が肝心なところで足を引っ張り、計画は危機に陥る・・・

・・・ハッスルは、この場合詐欺や強奪を意味しているようだ。

この作品はアカデミー賞の候補に挙がっていたそうだが、確かに賞に相応しい出来栄えと感じた。有名俳優達が大勢出演していたし、ストーリーも演出も完成度が高く、ワクワクするような緊張感を上手く出していた。家族で楽しむタイプの映画ではないと思うが、エログロのシーンはなく、血なまぐさいシーンもぼかしてあったので、子供でも観れるかも知れない。恋人と観るのは悪くないように思う。

詐欺師を扱った過去の名画だと、「スティング」をまず思いだす。危機に陥って絶体絶命の主人公らが、複雑なトリックで最後に成功する爽快感は実に素晴らしかったが、この作品もあれをイメージしていたのではないかと思う。爽快感に少し欠けていたかも知れないが、かなり良い線行っていたように思った。「スティング」にあった味のようなものが欠けていた点はあるかもしれないが。

ジェニファー・ローレンスの悪妻役が素晴らしかった。「死ぬのは奴らだ」の曲に合わせて踊るシーンだけはいただけなかったが、それ以外の場面では見事な悪妻ぶり。攻撃的な口調、その話の内容はまるで筆者の奥様を連想しそうな内容で、わがままとは万国共通のものであることを理解できた。

「世界にひとつのプレイブック」の時には無理してエキセントリックな人物を演じようとしているかのような印象を受けたが、今回は本当に普段からあんな口汚い調子で話しているようにさえ思えた。こちら側が慣れてしまったのか、彼女がより上手くなったのか分からないが、とにかく役柄にはまっていた。

デヴィッド・ラッセル監督作品。最近の彼は次々と有名作を出している。でも「世界に・・・」は、完璧な出来ではなかったと思う。決定的なのは、主演の二人のダンスが上手くなかったこと。つまり、主人公達の努力が足りなかったかのような印象を受けた。安っぽい青春映画のような適当さが垣間見れるような気がした。今回も、ジェニファー嬢の踊りのシーンは安っぽい。BGMに流すのは構わないが、踊ったりする必要が全くなかったと思う。

セリフが素晴らしかったので、脚本が良かったのだろう。それを勢い良く、的確な表情と口調でわめくローレンス嬢も良かったと思うが、主人公が口論に負けてしまう様子がおかしい。悪妻には、彼女ら独特の理屈があって、おそらく万国共通のものだろうと思うが、理屈が正しいかどうかより、自分の感情が満たされるかどうかに重点を置いた論理を、執念深く展開するのである。

相棒のエイミー・アダムスの仕事ぶりも素晴らしかった。捕まって窮地に陥った時の表情は、メイクも良かったが、焦燥した様子が非常に出ていて分かりやすかった。本名を明かしてしまう流れも、険しい表情などからよく理解できた。ただの悪女ではなく、強い野心と優れた能力・・・犯罪者としてのだが・・・を持っていそうな人物を表現していた。彼女はいろんな人物を演じるから凄い。

主人公のクリスチャン・ベイルの芸も凄かった。特殊メイクをやっていたのだろう、見事な老けっぷり、体型や動作も本人を参考にしたのか、徹底していた。

ブラッドリー・クーパーも実に良い味を出していた。「世界に・・」に続いて一種の悪役、妙な人物を演じているわけだが、主人公を脅迫し操る敵であるにもかかわらず、こちらが憐れさを感じさせる段階にまで演じきれていたのは、立派な仕事だった。

これだけ素晴らしい条件に恵まれていながら、「スティング」ほどの味わいを感じないのは何故だろうか?古い時代を扱っていない点や、最後まで起承転結を明確にしない点や、大スター二人を共演させるという意味での興味や、音楽の使い方、そして元々が実話で、小さな悪人しか捕まっていない点など、爽快感に至る要素が多少違っていた関係かも知れない。

演技の仕方も、「スティング」時代とは違う。よりリアルで、実在感にあふれている。その分、観客には夢の世界から遠ざかるような悪い面があったのかもしれない。難しいことだが、リアルだから良い効果が出るとは限らないようだ。詐欺師の映画にも伝統がある。過去の作品を連想させるような演出があると、もしかして味が出たのかも知れない。

 

 

 

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