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2014年8月 5日

アンコール!(2012)

Stillmilletc

- マリオンに捧ぐ歌 -

コーラスグループに参加していた主人公の妻は、病状が悪化し亡くなる。主人公は子供やグループと対立しながら、徐々にグループと関わりを深めていく。そんな別離と再生の物語。テレンス・スタンプの主演。

非常に静かな、落ち着いた雰囲気のドラマ。派手な喧嘩、乱闘、大げさな芝居はほとんどない。映画館で上映する場合にも、名画座のようなこじんまりした場所が選ばれそうな、そして実際にもそうだったような、マイナー路線の作品。似たようなストーリーは過去に何度か観たような気がするが、この作品もなかなか良い話だった。

「アンコール!」というタイトルは、少し無理があったかもしれない。マリオンのための歌、またはマリオンに捧ぐ歌という意味の原題も、日本語の場合そのままでは使いにくい。‘年金ズ’ならユーモアがあって良かったかもしれない。

大手のシネコン映画館の上映作品は、どこも同じ作品であることが多い。チェーンだから当然だが、観る側としては千差万別であったくれたほうが絶対に良い。熊本市の場合は、電気館くらいしかマイナー映画をやる施設がないし、しかも電気館の上映時間は暇な人たちをターゲットにしているらしく、私の時間には全く合わない。

以前は市内にも独立した映画館が色々あったので、リバイバルの黒澤映画や実験映画みたいな作品を鑑賞できた。でも、それらはビデオ屋さんで鑑賞するものになっているから、新しいマイナー映画はビデオ待ちの状態に最初から決まってしまう。上映時間を改善して欲しい。

主演のテレンス・スタンプは皺だらけで、苦みばしった表情が素晴らしい。悪役としては最高の役者のはずだが、オカマ役を演じてもおかしかった。蟹江敬三のような、得がたい個性だと思う。いかにも家族と険悪な雰囲気でありそうな、そんな顔、そんな態度が役柄にぴったりだった。

奥さん役のバネッサ・レッドグレープは、大柄で独特の目つきで笑う表情が健在だった。体力が衰えて、動きがままならない様子が非常に上手い。この作品の中では、末期の苦しみや痛みを表現するシーンはなかったようだが、テーマと外れるから割愛したのだろう。おそらく、末期の症状を表現させても上手かったに違いないと思う。

病気の再発を宣告された時の彼女は、意外に嘆き悲しんでいなかった。実際に、患者さんに宣告しても、泣きわめくのは家族の方が多いように思う。年齢のせいか、体力気力のなせる業か、あるいは一度癌の宣告をされると、肝が座るのか知らないが、静かな人が多い。その点はちゃんと再現されていた。

ただ、コーラス活動にしがみつく人が多いかどうかは判らない。家族との時間の方を大事にする人の方が多いかも。

先生役は良い顔をしていた。いかにも、あんな雰囲気の女性は、万国共通で指揮棒を握っていそうだ。よく選んできたなと感心した。ただし、都合よく失恋してたのは演出過多だった気もした。猛烈に勝気なキャラクターの女性なら自然に感じたかも知れないけど、あのキャラクターでは無理だった。

いっぽうでコーラス仲間には、際立つ個性を持つ人間はいなかった。この点は少々気になる。せっかくだから、個性派の俳優を集めて、それぞれのエピソードも加えると話の奥行きが出ると期待した。普通は嫌味な仲間や恋敵がいるものだ。まあ、そんな手法に飽きたのも確か。

演出には他にも無理があったと思う。妻との別れ近く、ソファに座って頭を寄せる場面では、角度に無理があった。自然に演出するためには、何度かリハーサルをやって、首の角度などが老人にも無理のないように定めておくべきだった。若い監督には分からなかったのか?

全体のリズムを上手く作れれば、歌のシーンは凄く盛り上がると思う。主人公が歌う曲は美しい曲だったが、コーラスで大きな声をあげる場合の、音響による感動は得られない。詩の良さと、子守唄であることの効果だけが望みとなる。良いシーンになっていたが、歌の素晴らしさが充分だったかと言うと、不満足とも思えた。歌い方は古臭い方が良く、また子守唄ではなく、ラブソングのほうが効果的だったように感じたが、どうだろうか?

この作品はテーマがよく、出来栄えも素晴らしいが、子供はさすがに退屈するかも知れない。恋人と観るのは、個人的にはお勧め。「あんな夫婦を目指そうね。」といった会話もできる気がする。・・・・「まさかあ、私は嫌だわ。」といった返事が来たら、二人の関係に早々と止めを差されるかも知れないけど。

 

 

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