映画評

  • 当劇場は劇場主のための映画館です。訪問者を期待しておりません。内容の客観性、正確性は保障できません。でも、真摯な批評を目指します。

劇場主

  • 乙女座 AB型 どの占いでも最悪の運勢 内科クリニックやってます。

Conflict of Interest

  • 特にありません。

おことわり

  • 当劇場は誹謗中傷を目的としておりません。もし権利を侵害されたと感じられた方は、申し訳ありませんが管理会社や公的機関に御相談ください。

« 武士の献立(2013) | トップページ | プレーンズ2 ファイヤー&レスキュー(2014) »

2014年7月24日

マージン・コール(2007)

Beforethedoor

- 脚本に感心 -

ケヴィン・スペイシー主演の経済問題が主題の映画。7月20日、衛星放送で鑑賞。

リーマンブラザースをモデルに、証券会社が破綻していく前、危機的状況が明らかになる様子を中心に描いていた。その視点が素晴らしい。実際には夕方から検討を始めて夜に事態に気がつくなどありえない。そんなに簡単なら、とっくに気づいているだろう。手計算ではどうにもならないほど複雑な仕組みを作ったことが、リーマンショックの真相と思う。

ポール・ベタニーやデミ・ムーアも出演していたが、重要な役所ではなかった。ケヴィン・スペイシーも主役というほど活躍したわけではないが、スペイシーが参画する作品には外れがない。大事な役所だった。特に悪役の場合がそうだ。今回の彼は、結局は生活費(たぶん離婚してるから慰謝料、奥さんの生活費)のために辞められなかったようで、情けない役柄でもあった。でも、それがリアルな姿だろう。

ザカリー・クイントという若手の社員役は、スター・トレックでスポック博士役をやっている独特の風貌の俳優だが、この映画では特殊メイクは使わず、真面目で優秀な会社員の役柄で、若いながら主役級の存在感があった。もしかすると、悪役としてどんどん存在感が増していく俳優かも知れない。大スターにはなりにくいキャラクターだと思うが、大事な役をやれそう。

リーマンブラザースの破綻が起こる2年前くらいから、アメリカの住宅ローン業界が危機的状況らしいという噂を時々聞くことがあった。政府も問題視していて、どのように軟着陸させるのか興味を持って見守っていたが、結局は大きな破綻ショックという流れになって、世界中に景気後退をもたらしてしまった。でも、素人の私でさえ知っていた危機だから、おそらく売り抜けた株屋は多かったに違いない。2年も待たなくても、各地で売り抜ければ、資産を守ることは充分出来たろう。

リーマンブラザースも、おそらく長期間かけて売る努力はしていたに違いない。一気にやると自滅するから徐々にやったろうが、もしかすると他の証券会社より判断が遅れ、他の会社の分まで背負ってしまう失敗をしたのかも。または米国政府が救済することを確信し、その当てが外れただけかも。だって、政府も危機を知っていたのだから、普通なら救済を期待するだろう。要は、政府の幹部が見限ったということかも。

とにかく、実際には一夜にして起こった危機ではなかったはず。危機を乗り越えるため、様々な工夫をやったものの、対処しきれなくて破綻したというのが真相で、そこをドラマティックに描くため、一夜に仕立てただけだろう。見事な描き方だった。脚本が素晴らしかった。

ポール・ベタニーがセリフで言っていたが、高い生活レベルを維持したければ、顧客がどうなろうと気にせず、良心を捨てて商品を売りさばき、利益を確保しなければならない。それが証券マンの仕事。そのために、結婚生活さえ犠牲になることもあるだろう。勝ち残るために、騙すことも脅すことも厭わないでやらなければならない。私のようなクリニックの方針とは真逆の生き方だが、仕事がら仕方ないかも。

住宅関連の市場は、日本だって巨大なもの。建設業界や、融資する銀行、不動産業など、多くの業種に影響が及ぶ、自動車や電気産業よりも影響力の大きな市場。家を維持するために多くの人が働き、節約しているのが現状だろう。ケヴィン・スペイシーが奥さんの家の庭に亡くなった愛犬を埋めようとするのは、離婚して家を出たこと以外に、彼が家に込めていた感情をも表していたかも知れない。彼は、おそらく今は高級マンションに住んでいるのだろうが、犬を埋めるとしたら、やはり自宅だった場所だろう。家はマンションとは違う。

感情の部分に着目すれば、家のローンは良い商品。複雑な構図を作ることによって、収入が少なくてもローンを組める仕組みを作り、大きな商品ができる。昔から複雑だったのだろうが、昨今のローンは複雑すぎた。考えた人達、それを可能にした計算の仕組みは素晴らしかったが、複雑になりすぎると危機管理も難しくなる。たぶん破綻や暴落というのは、同様な考えの及ばないレベルに発達した金の流れの中で起こってくものだろう。

アメリカの企業が生産現場を海外に移してしまったことが賃金の減少、購買力の低下を生んで、危険性を持つローンを作る誘因になったようにも思う。もし反省するとしたら、グローバルに生産拠点を広げる企業に対して、米国内に戻るよう、ある程度の規制をかけていく必要があったのかも知れない。日本や欧州の企業と競争するために効率を上げた結果、国内の購買力を低下させ経済全体を不安定化させたというのが大きな流れだろう。

日本の企業だってそうだ。危機を覚悟で中国に出ている企業が多いが、生産現場が減って、特に地方の仕事が成り立たなくなってしまうと、地方の人口が減り、それこそ住宅業界から何から、経済力全体が沈滞化してしまう。目先の競争に目がくらまないよう、経済モデルを考え直す必要がある。

次の暴落はどのように起こるのだろうか?中国の住宅市場、韓国の景気は日本にとっては怖い。ウクライナ情勢も、もしかすると意外に大きな変動をもたらすかも知れない。TPPの動きは、安定化を目指す必要性からも推進されているのかもしれない。ブロック経済を作れば、景気変動から一歩下がって壁を作ることができる。中国のような巨大で不安定な国の影響をもろにかぶるのは怖いから壁が必要。

ただ、実際にブロック経済を作ると、壁の外側との軋轢も必至だろう。かっての日本がそうだったから。

暴落を避ける仕組みも必要と思う。規制を緩めて金の流れを大きくすると、暴落の時の衝撃も大きくなる。サブプライムローンの危険性が高まった時点で、政府が介入できるような仕組みがあったほうが良い。日本の場合はアメリカへの依存度が高いので日本発の暴落は起こりにくいと思う。ほとんどはアメリカ発の景気変動になるから、アメリカの規制頼みになる。

 

 

« 武士の献立(2013) | トップページ | プレーンズ2 ファイヤー&レスキュー(2014) »