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2014年7月 6日

ナポレオン・ダイナマイト(2004)

Foxparamount

- バス男 -

主人公はアイダホの高校生で、特技がない男。彼はメキシコ人の友人を得て、生徒会長選挙を手伝うことになる・・・

・・・何のとりえのない高校生役を演じた主演のジョン・ヘダーの表情がおかしかった。話す時に目をそらしたり目を閉じたまま話したり、まともに見ようとしない点が素晴らしい。よく表現していたなと感心した。

対人表現に何かの障害やトラウマがあると、まともに目を見るのが難しくなる。うっかり入った店の客を見ると、明らかに‘その筋’の連中がひしめいていた時などは、私も急に障害が発生する。まともに目を見ていたら、因縁を吹っかけられるから仕方ない。警察官が来ると、なぜか視線を外してしまう。あれも、何かのトラウマがあるからかもしれない。

それを普通の人間に対してやってしまうのは妙だが、もちろん相手が悪意を持つ悪辣なクラスメートの場合は、自然な反応と言えるかも知れない。いじめっ子に理性を求めても無駄である。真に病的なヤツも多いから、基本的に目を合わせてはいけない。怖れや自分を守りたいという感情がそうさせるのかもしれない。彼の場合、特に素晴らしいのは時々イジメに反発して戦うこと。戦った後は直ぐに逃げ出してしまう点も笑える。

また、主人公は妙な嘘をついている。誇大妄想的な、強がった大嘘を恥ずかしげもなく話す。普通はそれがイジメの要因になるし、自分でも情けなくなって止めると思うが、極端に追い込まれるとクセになるのかもしれない。そんな主人公が存在しうることに驚いた。およそヒーローの枠を外れた存在なのに。

この作品の原題はナポレオン・ダイナマイトだそうだ。なんという凄い名前。ふざけたタイトルだが、キャラクターにばっちり合っていた。ジャレド・ヘスという人が監督らしいが、全く知らない。この作品はオリジナルのアイディアなのか?そのへんもよく分からない。バス男という邦題は、当時の電車男を真似たようだが、冴えない点だけは似ていたものの、営業に役立ったかどうかは分からない。

アンチヒーローを描く伝統のようなものがあるようだ。日本の場合は、孤高の殺し屋が代表で、米国の場合は同様のクールかつタフな路線と、変態やオタクの類も多い。この作品の主人公は後者だろうが、本当に情けないヤツだった。

主人公の会話のテンポがおかしい。ノリの良い会話が出来ない点は、作品のノリをもおかしくしてしまう危険性があると思うのだが、この作品の場合は主人公らのキャラクターの多くがおかしいので、独特の味になっていて違和感がない。ただし、この作品以外でこのようなテンポの会話をやられると、興味を維持できないと思う。この作品限定のおかしさだろう。

漫談の業界にも、テンポのずれた男がつっこまれるタイプの芸人コンビがいる。最初はおかしいが、同じ路線だと飽きてしまう。基本的に会話はテンポ良く進まないと、こちらにイライラ感が生じやすい。この作品は会話だけじゃなく、微妙なエピソードが散りばめられていたので、奇跡的に興が冷めなかった。

兄貴役のキャラクター、叔父さん役も素晴らしかった。特に叔父さんは、過去のスポーツの失敗が未だに尾を引いているという、ありそうな個性を強調している点が見事。一種の悪役のようなもので、存在感が素晴らしい。しかも、ラストで彼にも何か良い話が舞い込んできそうな予兆をみせていて、とことん不幸に終わらせなかった点にも感心した。

ただし、その点も繰り返し使いうるパターンではないかも。残念だが、こんなリズムに欠けて大人しい風変わりな作品は、そう何度も作れない。企画が通って作品化されたことすら奇跡的だと思う。

この作品では血まみれになるほどの暴力のシーンもない。映画では珍しいのでは?普通はブザマさを強調するために、主人公は鼻血を出したり、足を引きづったりするパターンが多い。それで悲しい印象を得てしまうこともある。そこを避けている点が良いのか悪いのか分からないが、結果的に子供も観れる作品になっているようだ。きっと恋人といっしょに観ても笑えるのでは?

アイダホというと、見渡す限り広大なポテト畑が広がっていそうなイメージがあるのだが、この作品の舞台は直ぐ背景に岩山があったり、砂漠に近い荒野が見える。アイダホも広くて、風景にも色々あるだろうが、あんな場所でバス通学を小学生といっしょにやれる主人公は、本当にダサくて格好悪い。まるで若い頃のさえない自分を見るようだ。

自分の高校時代も酷かった。さえない上に偏屈で攻撃的な態度、焦りや自信のなさが表れた態度で、モテる要素が全くない、ひどい状態だった。主人公も極めてダサいが、私よりは行動的。あのダサイ状態で、クラスの女子に声をかけるとは!その勇気~もしくは勘違いには敬意を表したい。私は女の子を誘ったりできなかった。何か偏った考え、諦め、思い込みのせいだと思う。今思えば良い娘がいっぱいいたのに、残念なこと。

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