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2014年6月 6日

ヘンリイ五世(1944)

- 古さも効果的 -

イングランド王ヘンリー5世がフランス領に進出し勝利する過程を、劇中劇の形で表現した作品。ローレンス・オリヴィエ監督、主演。

・・・製作当時は戦争中だったらしい。そのわりに新しい。

ロンドンの街並みの模型が登場するが、芝居小屋にカメラが移る流れのために作っていたようだった。あれが必要な演出だったのかは分からないが、ラストで出演者の名前が出る前に、空から紙が降って来て急に画面に広がり、そこに名前が書かれているという細かい演出には役立っていた。

劇中劇の形が、他の映画よりも効果的に使われていたように感じた。微妙な演出の上手さが、無理な劇中劇か高級感のある劇中劇になるかの分かれ目らしい。近年のCGが使われた劇中劇は、どうも安っぽさにつながるような気がする。

原作も劇中劇形式になっているのかは知らない。たぶん、映画限定の演出ではないかと感じたが、他に先行した劇があったとしても不思議ではない。舞台となった芝居小屋に雨がふるシーンなどは、無駄な時間のようにも思えるが、雰囲気作りには効果的と思った。

舞台に出て行こうとする時に、ローレンス・オリヴィエが咳払いをする。あれはリアルさを出そうと考えてやったことだろう。センスと意気込みを感じた。

おそらく今なら、デジタルの鮮明な画質で、気どった仕草の役者が劇を演じるリアルな舞台劇として作れる。コンピューターで制御された立体的なカメラワークを使い、役者の汗まで映せるだろう。さらにリアルで高級な作品を作れる。

DVDは韓国製の安物で、画質は良くなかったが、鑑賞には耐えられるレベル。音もこもったような印象を受けたが、これはおそらく原版もそうだったのでは?何といっても戦中の作品だから。

この作品は家族で楽しめるとは思えない。画質や音質の問題もあるし、古めかしさがもろに出てしまう内容だから、子供達は退屈してしまうだろう。恋人とこの作品を観るシチュエーションも想像できない。大人がひとりで観ること限定の作品と思う。

古い映画でも、その古さが高級感につながることがある。舞台での芝居に特徴的な、回りくどい説明、かしこまった仕草が、伝統的な重厚さをかもし出す場合がそうだ。この作品は劇の部分で、それが感じられる。

凝った演出は他にもあった。フランス軍が攻め込んで来るシーンは、たぶん西部劇映画を参考にしたのではないかと思うが、騎士といっしょに横に並んで撮影しており、ダイナミックな感じが良く出ている。作り手の意図がよく分かる。

フランスの将軍達が馬に乗ろうとする前に、気どった振りで彼らを案内する芸人のような人物がいる。当時の趣向かも知れないが、無骨なイングランド軍とはセンスが違っていたのか?

戦意高揚の目的で作っているのに、相手がフランスで良いのか気になった。フランスは同盟国でしょう?心のどこかに、同盟国といっても敵愾心があるんじゃないの?さっさと占領されやがって、もっと持ちこたえろよと思ってたのか?と疑ってしまう。

イギリスとフランスの戦いについては、日本人の私にはピンと来ない。広大なフランスが、イギリスの一部に過ぎないイングランド王によって支配されたり、フランスの一部に過ぎないノルマンディ公がイングランドを支配するなど、軍事力次第で攻め手の入れ替わりが激しい。

日本の戦国時代も攻守が入れ替わった例は多いから、騎馬戦と城の攻防を主体にした戦の場合は、今の戦争とは様相が違っていたんだろう。桶狭間の合戦のような劇的な展開が起こりうるのだろう。戦士が揃った時に優勢になり、伝統が廃れたり戦力が育っていない時に攻められる・・・なにかプロ野球の球団の盛衰と同じような感じかも。

映画の中で主人公が話す演説のセリフが素晴らしい。「命が惜しい者は必要ない~」から始まって、「聖クリスピアンの日を子孫が讃えあうだろう。」といった戦意高揚を謳う場面は、原作にもあったセリフだろうが、当時のイギリスの世論にも通じるものがあったのだろう。

本当のヘンリー五世がどんな人物だったのかはよくは知らない。少なくともフランス征服の野心を持つ、好戦的な人物だったはずである。フランス側からすれば明らかな侵略者。姻戚関係や先祖の所有地の関係で、フランス内に権利はあったと思うが、今日の感覚ではプーチン的・・・というと失礼になるが、拡大主義の軍国主義者のようなものだろう。

当時のイギリス経済だと、羊毛を輸出してベルギー辺りから代価をもらうことと、農業が産業の主体ではなかったかと思う。いずれも土地が広い方が有利だから、土地を確保するために言いがかりをつけるのも正当と感じていたのかも。

今の時代だと、土地のような管理が面倒な実物より、利権や動かせる金額の大きさ、通商のルールなどに関心が集まっていて、国境争いは意味を成さない傾向がある。領地や国境で争うと、悲惨な戦闘が必要になってくるから、実利に走るのは賢い。

ロシアや中国のように土地がらみで動くほうが、もはや珍しい。ウイグル自治区での中国の対処法は、いかにも中世から帝国主義の時代のようだ。資源を確保する必要があるのは分かるが、ウイグル人に管理させても良くないのか?利益だけ中国が頂けばよい。

ウクライナに対して、ロシアが望むものは何だろうか?ウクライナ全土を管理するのは大変だろう。ロシア人へのテロも増えてくると思うし、管理のための予算が嵩む。普通なら圧力だけかけて、利益を確保して手打ちを目指すしか考えられない。クリミア半島を併合する必要があったのか?

占領はできるとしても、昔より高度な武器が出回っている今日、管理や警備、テロ対策に膨大な人員と予算を要する。そこまで考えて支配しているのか疑問に思う。

 

 

 

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