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2013年12月15日

AKIRA(1988)

Toho

- 歯がゆかったのでは?-

核戦争後に復興したネオ東京。そこには謎のパワーを秘めたAKIRAが格納されていた。暴走族の一員だった鉄雄は実験に使われ、超能力を発揮するようになり、日本の支配構造にも変化を及ぼす・・・

・・・大友克洋作の有名な劇画の映画化作品。劇画は非常に細かい部分まで描かれた一種の芸術作品だったが、この作品はほとんどはアニメスタッフによって作成された印象。登場人物の個性まで解るような微妙な絵にはなっておらず、青年向けというより少年向けの劇場版SFアニメと言える。

子供には興味が沸くかも知れない内容。恋人と観る作品ではないような気もするが、SF好きなら構わないかも。家族で楽しむタイプの映画とは思えない。

アイディアは、今になって思えば特別な物ではなかったのかも知れない。でも本の発売当時は、マンガの画質、描写の細かさ、人物の内面まで表現したかのような毒のある画風が素晴らしかった。人間の浅ましさの表現力が、当時のマンガの中では際立っていた。

少し懐かしい印象すらある反政府デモが、無力感をともなう描き方をされていて、大友世代の感覚を表しているように思える。今の若者にはちょっと理解できないセンスかも知れない。この映画では重点が置かれていなかったが、妙な恰好の宗教の存在も、実在する数々の宗教団体のいかがわしさが凝縮された印象。そういった細かい観察眼が、劇画の場合は生きていた。

アニメ化にあたっては、やはり大勢のスタッフを使って作画しないといけないので、単純化され、シーンによっては縮尺を間違ったのか頭でっかちな人物が描かれたり、幼稚な印象を受けた。狡賢い表情よりも、単純な怒り、恐怖といった解りやすい表情が中心にならざるをえないので、特徴が出なかったのではと思った。当時の技術的問題だろう。きっとスタッフも歯がゆい思いをしたはず。真のクリエイターだったら、作品の質を落とすことは耐え難いだろうから。

AKIRAの正体が解らないままでも良かったような気がした。劇画でも、当初はなかなか正体は出てこなかったはず。そもそも、正体不明で、格納庫に入ってるはずなのに外を支配する怖ろしいパワーのままのほうが、観客には受けたような気がした。正体をばらしたら、お子様映画になる運命だった。この作品で全体を描く必要はなく、混沌としたまま終わっても良かったように思う。

巨大な物を表現させると、大友作品は迫力が上手い。「スチームボーイ」の時にも感じたが、建物、戦闘機、そういった構造物の振動、ゆっくりした動きの表現が素晴らしいと思う。映画作りのイメージがないとできないアニメだろう。

バイク少年である金田のキャラクターが、よく解らなかった。彼のキャラクターは非常に大事だと思う。本来なら彼こそが主人公ではなかろうか?

彼が女の子の尻ばかり追いかける青年であるか、タフさと冒険心あふるる男か、もしくは鉄雄と固い友情で結ばれた男であるか、その辺の設定に微妙な狂いを感じた。時にチャラチャラした行動、時にはただの乱暴者、時には友情にあふれ、でも友人を殺そうとするなど、統一性に欠けるキャラクターだった。

普通に考えるなら、金田は鉄雄にだけは深い友情を持つキャラクター、鉄雄と対決する際には激しい悲しみをともなう、女の子を追っかけるのは暴走族仲間の一人、その彼に引っ張られて金田も反政府ゲリラと行動を共にする・・・そんな流れのほうが自然では?金田がケイに惹かれるのは、もっと真面目な純情で描いたほうが良いと思う。

マンガの鉄雄のキャラクターは映画でもかなり再現されていたと思うが、ひねた雰囲気、例えば鉄雄が好きな少女は金田に気があって、何もかも自分は金田の影でしかないなど、もっと描き方があったのでは?表情で表現するのはアニメの場合は難しいので、会話や設定で観客に訴える必要があったはず。それができていなかった。

鉄雄のひねた怒り、底の深い暗い感情が、映画を暗くしてしまうと思うが、作品全体の雰囲気をより重々しい、レベルの高いものにする働きを持ったと思う。ダークヒーローとなる目標は決まっているのだから、セリフを減らし、怖さに徹するべきだったと思う。

SOLという武器のアイディアは素晴らしかった。実際には、エネルギー源が何なのかなど、オタクでないと納得できない点も多い。似たような宇宙の武器で「GIジョー バック2リベンジ」の金属棒は単純なアイディアだったが、確かに実在しそうな点では優れていた。

 

 

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