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2013年12月12日

キャプテン・フィリップス(2013)

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- 武器輸出は  -

貨物船が海賊に襲われた。船長は人質として海賊に拉致され、海上をソマリアへと向かう。米軍はそれを阻止しようと、特殊部隊を投入・・・・

・・・劇場で鑑賞。観た限り、この作品に大がかりなCGは使われていなかったように思うので、DVDで観ても良かったかも知れない。艦船の映像には迫力があったが、画面の迫力より人物達の表情のほうが重要だったので、特に大画面でなければならないとは言えない気がする。

犯罪者側のリーダーである細身の黒人の表情が素晴らしかった。よく選んできたものだと思った。演技はやや過剰な気もしたが、目つきや体型だけで充分な存在感。主人公のトム・ハンクスや他の白人の俳優達は、期待された役柄を必要かつ充分に演じていたとは思うものの、印象には残らなかった。

トム・ハンクスの演技が悪かったと言ってるわけではない。素晴らしかった。若干、芝居臭い印象を受けただけ。銃を突きつけられた人間にしては、表情がオーバーな感じを受けただけ。

私自身は銃を突きつけられたことはない。もしも実際にそうされたら、おそらく顔面蒼白になり、恐怖で妙な言動をとってしまうと思う。動悸、口渇で話はスムーズにできないだろう。支離滅裂なことを言うかも。いかに訓練を受けていても、実際とは違うものだろうと思う。

船長自身のノンフィクション作品が原作らしいので、あまりかっこ悪い言動は最初から難しかしかったのかも知れない。でも、ちょっとしたシーン、例えば口が渇いた様子や手の震えなどで、人間らしい部分を描いても良くはなかったろうか?

緊迫感の持続は素晴らしいと感じた。原作が良かったのか、シーンごとの組み合わせ方、ちょっとした会話、小さな諍いなどが上手く散りばめられた構成が素晴らしかったのか、殺し合いが繰り返されなくても、ちゃんと緊張感が感じられた。ジェイソン・ボーンシリーズと似て、スピード感覚が優れたスタッフが揃っているんだろう。

シールズ部隊が何をやっているかは解った。ただし、あの描き方が良かったのかどうかは解らない。

まず思うに、主人公の船長にしてみれば、外部の兵士達が何をやっているのか解らないはずで、それが一番怖いのではなかろうか?目の前の犯行グループは、見える分だけ理解もできるが、米軍のほうは解りようがない。いきなり爆撃されたら、自分もいっしょに死ぬことになる。見えないことは恐怖。

映画の画面では兵士達に焦点を当てず、彼らが何かを画策している様子を、直接ではなく断片的に、あえて不明瞭で観客が不安になるように見せて、最後の一瞬になって彼らが何を狙っていたのか解るよう、不気味に描いても良くないかと思った。

見方を変えると、この作品を海賊達が観たら、部隊側の戦略が解ってしまうのでは?例えば、曳航されたら終わりだから、近くに寄ってきたら人質を傷つけて脅せとか、爆弾は最小限でも必要だとか、人質は複数必要であることや、逃げ足を確保するために一隻は船を残すとか、教訓はいくらでもありそう。良き教材になってしまうことは確実。

もちろん米軍のことだから、さらに上を行く工作をやってくるとは思うが、相手がレベルを上げてくるのは嬉しいことではないだろう。この作品が米軍の力を見せ、海賊行為の抑止力になることはまず期待できないので、描き方は少し変えても良かったのでは?

海賊と米軍が何か交渉しているが、船の内部にいる船長には進展具合が解らない。何か大声が交わされていることは解るが、内容が断片的・・・そんな緊迫感は、一般の観客には受けないか?

この作品ではむごたらしい殺人は描かれていなかった。だから、子供も観ることができそうに思ったが、暴行や脅迫は普通に描かれており、子供向きとは思えない。恋の映画でもないので、恋人と観るために選ぶべき作品とも思わなかった。良いテーマだったけど。

フィリップス船長はヒーローだろうか?船員を守り、船を守ったので、職務を果たした優秀な船長だったことは間違いない。企業的観点から言えば、凄いヒーローだ。船長にしておくのは勿体ない。重役のポストが必要だろう。

視点を変えて、海賊やソマリアの村民から見たら、どうだろうか?会ったこともなかった船長に、もちろん最初から個人的恨みはないだろうけど、船長は上手に嘘をついていた。「嘘は言わない」というのも嘘だった。「騙すなよ」なんて言う素朴な犯罪者達・・・もちろん相手は凶悪な犯罪者なんだが、素朴でもある・・・を、騙したことには違いない。

海賊したくてなったわけではなく、命をかけてでも犯行に及ばないと生きていけない者達にとって、騙すというのは心情的には許しがたいものがあっただろう。犯罪者を許してよいわけはないが、騙しに長けた世界の人間が犯罪の原因を生んでいる現象も少しは考えないといけない。「あいつらは常に嘘をついてきた」と。

もともとイギリスやイタリアがソマリアに進出しなければ、おそらく今日ほどの国の混乱は起こらず、海賊の数も違っていたのでは?武器も、彼らが作っているわけではないだろう。因果応報の部分はある。海賊行為を支持するわけではないが。

海賊がいなくなる日は来るのだろうか?ソマリアに安定政権ができること、武器商人を取り締まること、経済的に上向きになること、各国の艦船が監視を怠らないこと、どこかの国が海賊を支援したりしないことなど、難題ばかりでは?

海賊の正体は、色々だろう。おそらく本物の兵士や、もともとの盗賊もいると思うし、船の操縦は漁師がやるだろう。漁師が英会話を上手にできるのはおかしいので、たぶん兵役の経験のある人物が面に立つと思う。

武器は、もともと軍事政権時代に多数輸入されたはずだし、武器商人達は暗躍しているだろう。この作品の海賊には爆弾がなかったようだが、普通は持っていないと脅しにならない。ロケット弾も欲しいと思っているだろう。

変なところが気になった。主人公の車はトヨタのミニバン、ソマリアの村を脅す兵士達が乗るのも日産や三菱の車。日本車は、犯罪者の役にも立っているとは!ついでに日本製の巡視艇を売れば、そりゃあ喜んでくれるだろう。今回のようにヘマせず、2隻で強襲して、あっと言う間に強奪できたに違いない。

加えてtoyota製高性能ロケット砲などを作って売ったら、ブランドイメージが良いので売れるだろうか・・・怖ろしいことだ。

 

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