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2013年12月21日

鬼が来た!(2000)

China

- 異質 -

村の一人の男の家に、拉致された日本軍兵士が送られた。管理に失敗すれば命はない。日本軍による殺戮におびえる村人達は、苦心して対処するが・・・

・・・有名な作品で以前から観たかったのだが、ついつい忘れていた。DVDで鑑賞。

主人公と監督は同一で、才能ある人物のようだ。残念ながら、その後メジャー作品を売り出してハリウッドでも一流という身分にはなれていないようだが、確かな眼力を感じる。でも役者としては、この作品を観る限りは、表現力や一貫性、スターの魅力は感じない。

香川照之が出演していた。熱演だったが、日本映画では使われないほどの激しい表情は、やはり中国独特の演出があったためではないか?日本人からすると、リアリティを失う言動が目立った気がした。もっと恐怖の表情を目立たせ、それを隠そうとする様を写すべきではなかったろうか?

捕らえられた日本兵が最初にする表情は、あのような怒りに満ちたものだろうか?村人に向かって口汚くののしれば、どんな結果になるかは普通なら解るだろう。映画の村民は殺しを怖がっていたが、殺戮の長い歴史を有する国民のこと、手際よく殺すに違いない。映画のような態度は少数派。だから、恐怖の表情を浮かべつつ強がるのが正常の反応ではないか?

中国人の監督からすれば、勇ましいことを言っていた兵隊が、やがては命乞いをするように変身することで、滑稽さや人間的な面を表現できるといったイメージがあったのかもしれないが、一般的な展開ではないと感じた。喜劇的な部分や演出は多いにやってよいが、基本がリアルであったほうが良いと私は思う。

後に日本軍の部隊長が登場するが、この俳優もヤクザ映画のようなキャスティングによるものだった印象。リアルさは全くなかった。仮に脇役であってもリアリティはある程度は欲しい。あまり派手な芝居をさせる必要はない。この作品は中国人が中心の映画なので、日本兵の多くは感情の乏しい人間でも良かった。

終戦を知った兵隊は、安全に撤退することしか考えないと思う。周囲を敵に囲まれた日本軍は、ゲリラ達よりも国民党の正当な軍団に投降したい。村に入って村民と宴会を開く、その後何かをやらかす、そんな行為は絶対にやらない。いたずらに死を招くからだ。ストーリーは、だから荒唐無稽過ぎた。

私がこの作品のアイディアを使うなら、捕まった日本兵は強がっていたが、やがて命乞いをするようになり、通訳の中国兵は泣いていたが逆にどんどん立場を強くして、村人を騙したり脅迫したりする。最初と逆になるほうが面白い。二人の漫才風の演技が欲しい。

日本軍が村人に感謝し、宴会が開かれてもいいと思うが、部隊ごと行くことはありえないし、宴会は昼間だろう。夜はテロが怖い。

和やかな場面に終戦の通知が来ると状況は一変、威張っていた怖い隊長が急に弱々しくなりといった展開か、もしくは宴会はそのまま、仲良く酔っ払って踊って終了。その後に激しい戦いが巻き起こる・・・そんな流れでも良かったと思う。

急展開は必要だが、ヤクザがドスを利かすかのように、急に村人に武器を向けたり、陸軍士官が自分の気持ち次第で海軍の士官に命令して良いとは思えない。海軍の隊長の行動には悲惨さや非道さを強調する効果はあったが、映画全体の中での位置づけについては一貫性を損なう気がした。急展開の前に、心温まるエピソードが複数あって、そこから殺戮に向かえば一貫性があるのだが。

この映画は中国本土では公開が制限されたと聞く。日本兵が子供を可愛がり、途中まで村人を虐待しないからだろうか?日本人の娼婦が登場するからだろうか?イメージ戦略を考えると、日本兵は子供をなでたりしてはいけないのだろう。この映画は、だから相当に異質。

おそらく多くの中国映画、ドラマでの日本兵は、香川が最初に登場した時のような無茶苦茶な人物で、人を殺すことしか考えない極悪な存在というのが一般的では?にこやかに子供をなでるなど、当局が許さないのではないか?

考えてみると日本映画に登場する外国人も、本来とは違った異質な描き方をしているのかも知れない。私達には解らないだけかも。日本の観客の感覚では、なるべくデフォルメしない姿の外人を描いて欲しいと願うが、作り手はそうではないかも。

そもそも、この作品は誰が楽しめるだろうか?子供には見せたくないと、私は思った。残忍なシーンもあるから。恋人と観るのは勧められるか?恋の話はなく、美しい物語ではなく、感涙は期待できない、爆笑するシーンが多いとも思えない。恋の場にはふさわしくない印象。かなり限られた状況でしか、この作品は楽しめないように思う。

心に残る味のような物は感じられなかった。悲劇だろうと喜劇だろうと、悲しみや憤り、最高のギャグの記憶だの、何か残るものができると思う。そういった名作に必要なものは、あまり感じなかった。

演出には優れた点も多かった。特に村人達がこっそりと話し合うシーン。下からのライトで強調された表情、狡さや恐怖、隠しあう本音などが実に上手く描かれていて、感心した。ヨーロッパ映画の古典か、黒澤映画の影響を受けていたのかも知れない。

せっかくだから日本兵達もリアルに描くと良かったのに。中国政府に許されるならばだが。

 

 

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