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2013年11月27日

ヒッチコック(2012)

- ドラマスペシャル的 -

新作のサイコの製作のために監督は家を抵当に入れ、勝負に出る。しかし、妻との仲に波風が立ち、スケジュールもはかどらない。出来た作品は評価が低い。最悪の危機がやってきた・・・

・・・「サイコ」の製作中の苦悩や、夫婦、仕事仲間との関係をドラマに仕立てた作品。正直言って盛り上がりに欠ける印象も受けたが、話としての流れが自然で、監督の個性や映画の舞台裏はこんなものかもといった的確な演出で、よく出来た作品だった。

ラストシーンでカラスが登場するが、あれはいくら何でも安っぽいギャグのようなもので、監督のイメージには合っていない印象。カラスが登場するとしても、どこかの屋根で不吉な泣き声をあげるとか、影だけ見えるかフンを落とすなど、別なやり方があったと思う。

主人公を演じたアンソニー・ホプキンスは、相当なメーキャップを施してあったようで、体型は似ていた。表情は、本物はもっと気取っていなかったろうか?テレビで観た古い記憶では、眉毛を吊り上げ気味に、小バカにしたような紳士面だったような気がするが。

ヘレン・ミレンの芝居は日本人にもよく解るものだった。万国共通で解らせる演技は、たぶん相当な計算やセンスがないとできないだろう。彼女が出演した他の作品ではそうは感じなかったが、このドラマでは演技力をはっきり理解できた。

ジャネット・リーを演じたスカーレット・ヨハンソンは、もちろん非常に魅力的ではあったものの、もともと脇役ではあるし、添えもの的な感じもした。他の女優でも良かったかもしれない。

アンソニー・パーキンス役は、「クラウド・アトラス」で妙なメイクをしていたジェームズ・ダーシー。非常に雰囲気が似ていた。アンソニー・パーキンスはエイズで亡くなったそうだから、たぶん噂は本当だったということか。総て演技だったわけではなく、実際にも何か病的なものを持つ役者だったのか?短いセリフで、そのトラウマを紹介できていて、脚本家の工夫や演出も感じることができた。

表情がないかのような秘書役、いけ好かない脚本家、袖にされた女優など、脇役の存在感はとても感じた。写真だけで登場するグレース・ケリーも、妻の心境を表す良い小道具だった。

総じて、テレビスペシャルのドラマの作り方としては、この上ない良いできに仕上がっていたと思う。劇場映画としては、少なくとも子供といっしょに観る作品とは考えにくいし、恋人との鑑賞に選ぶにふさわしいとも思えない。古い映画好きな人が観客の中心と思われ、ちょっと興行面では疑問符の付く企画。

あざとい企画なら、犯人の幻影や殺意の衝動に恐れおののく監督を描く、または完全にSFチックでシュールな殺人映画、ギャグで次々と人を殺すような狂った作品などは若い世代にも受ける企画となる。最初から最後まで女優が悲鳴をあげ続け、血がドロドロ、首がコロコロ、とことんグロテスクにこだわってはいけなかったろうか?または、振られまくる監督を延々と写す物語など。

妻をどうやって殺すか妄想し、はっと気がつくと自分の怖ろしい衝動に愕然となるが、そのアイディアを映像化し、作品に役立てる。気味の悪い殺人妄想が延々と繰り返される、怖ろしい映画も可能だったと思う。誰も観たくないかも知れないが、シュールなサスペンス喜劇?ができたろう。

作品自体をヒチコック風にするというのも、よくあるアイディアのパターンだが受けやすい路線。ユーモアと恐怖、監督の姿の後ろになぜか監督の影が出現し、これがヒッチコック風の物語であることを表す。夫婦が互いに殺意を抱いてナイフを持つなど、演出方法を再現してみることもできたと思う。

ただし、そもそも若い人の中には、そろそろヒチコックを知らない方達も増えてきているはず。いずれにせよ、この企画は映画人の一人よがりの宿命を負っていたのでは?

ヒチコック監督の独創性は、どのように生まれ、映画に反映されたのか、彼に絡む作品を観るたびに気になる。つまり本当に異常者としての側面があったのか?または偶然受けた作品から、自然と作品の傾向が偏り、やがて自分の路線として決めたのか。伝記か何かを読めば解るかも知れないが、そんな暇もないし何も知りようがない。

それが気になるような作品を作り続けて、それで観客が気になることを楽しんでいるのでは?といった疑念すら生まれる。

 

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