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2013年9月28日

半沢直樹(2013・TBSテレビ日曜劇場)

Tbs

- 日曜時代劇 -

銀行員の半沢はバブル時代に採用され、今は支店の係長。支店では5億円の融資が焦げ付く事件が起こり、責任は半沢に押し付けられようとしていた・・・

・・・彼の事を語らねばなるまい。当然ながらテレビで鑑賞。でも4回くらいしか観れていない。評判になるまでは観なかったし、途中も観れない日があったので、細かい部分は知らない。原作も本屋に並ぶようになったが、さすがに読む気はしない。

でも、とにかく面白いドラマだった。演出、俳優達の演技、顔を付き合わせる対決シーン、「倍返し」の決め台詞、それらが総て良い効果を生んでいたように思う。次の週を期待したくなるような上手い編集も良かった。

作り方のセンスは、完全に時代劇だった。武士達が主導権を狙って権力闘争を繰り返すお家騒動の劇画版のような印象で、水戸黄門が事をひっくり返す前の段階のドタバタを描いた感もあった。人情や友情にあふれるシーンもあった。つくづく、我々は時代劇が好きなんだと思った。

詰め腹を切らされる部下は、ちょうど出向を命ぜられる銀行員と同じ。上意でござる、ご無理ごもっとも・・・昔も今も、汚い裏工作で敵を引きずり落とそうと画策する連中は、大きな組織では必ず存在するんだろうけど、役者達の表情が激しくて迫力を感じた。

懸命に仕事し、出世を目指すが、どことなく女性的で、怨念に満ちたウェットなドラマ。外人には受けないかも。でも日本人になら受ける。子供も大人も、恋人とも爺さんとも、総ての世代に受けるに違いない。

大学の医局は小さな世界だが、似たような茶番劇はよくあった。自分も出向させられたクチだ。会議でつるし上げようと、策をめぐらす人物もいた。でも半沢のように反抗はしなかった。出向を持っていたからだ。小さな大学のまたさらに小さな医局で、時代劇のような行動に意味はないはずだが、自分が意欲不足だっただけかも。

そんな自分だって、一般の会社に入っていたら、きっと目の色を変えて競争していたに違いない。営利企業の場合は、利益を上げ、規模を大きくし展開していかないと潰れてしまう。社内では協力するとともに、競争するのが仕事の一環、義務のようなものだ。

でも、銀行に限れば出世の意味がよく解らない。一般企業とは事情が変る気がする。おそらく出世で年収は大きく違うのだろう。もともと銀行員は収入が多いそうだが、頭取クラスは数千万は確実。差の大きさが、出世の意味を成すのかも。一般企業の場合は、それに加えて達成感の違いも大きいと思う。どんな事業をなすかは、銀行よりも直接感じることができるはず。銀行員は、動かす金額で何かを感じているのだろうか?

金融庁監査や、銀行内部の資料の管理の仕方、会議の内容など、実態をどれくらい反映しているのか解らなかった。不正融資には厳しい目が向くと思う。取締役と言えど、無茶な行為は実際にはほとんどないのでは?

出世競争に血をたぎらせた経験のある人は、このドラマは非常に注目すべき内容だったはず。義憤に駆られるような仲間の失脚の数々、裏切られた経験、派閥争いに加担した経験など、何もない人はいないだろう。そんなドラマは、やはり日本の伝統に基づき、時代劇調に描くべきだ。

顔を突き合わすシーンのドスの利かせようは、ヤクザ映画から採用されたに違いない。実際の会議の場であそこまで顔を突き合わせたら、さすがに笑われてしまいそう。でも東映の映画を観てきた人なら、映画の約束として何の疑問もなく受け入れられる。

いまだに本当の喧嘩の前にも、あんな風に顔を近づけてくる人物、特に子供同士の喧嘩の場合は、あんなシーンが多い。さすがにスマートではないと思う。真に怖い欧米のビジネスマン達は、穏やかに挨拶をしながら死の宣告をすると聞く。法律を駆使して自分の手は汚さない。顔を近づけるセンスは持たないだろう。

書いていて思い出したが、大リーグやバスケットの中継で、時々顔を突き合わせて口論している選手がいる。でも、あれはビジネスマンじゃなく半野獣の別な人種に分類される。キロ単位でステーキを喰らい、肉弾戦しか頭にない連中であり、検討の対象外と判定されるのじゃ。

欧米の場合は活動する世界が広いので、会社を変える、職業を変える、国籍を変えるなどドラスティックに行動できるから、半沢のようにこだわる必要がない。昔なら銃で事を決し、今なら法廷闘争が戦い。顔を近づけても意味がない。風土の違いがドラマにも影響してるんだろう。狭い社会に留まっていた時代の感覚がないと、半沢の行動に共感はできない。

病院勤務の友人は、このドラマのヒットを全く知らなかった。子育てと研究で時間がなくてテレビを観れなかったかららしい。自分の場合は、子育ても徐々に手間が減っている関係もあって、時間を都合できる。しかし、いずれにせよ医者にとって、この作品に意味はない。完全な娯楽で、実像の一部を誇張したフィクション、チャンバラのないチャンバラ劇。

でも大好きだ。続編に期待したいし、ビデオ化も待ってるぜ。

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