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2013年8月 5日

スチームボーイ(2003)

Steamboycomm

- 夢を感じる冒険活劇 - 

世界万博目前のイギリス。特殊な圧縮ガス装置をめぐり、巨大な軍需会社とイギリス軍、祖父と父親の対立に巻き込まれた少年の戦いの物語。

大友克洋の作品。DVDで鑑賞。詳細で複雑な機械がパワフルに動く様が素晴らしい。今だとCGでもっと迫力のある動画を作れるが、独特の軋む感覚までは表現できていないことが多いので、アニメのほうが優れている面はあると思う。やがて軋み感までCG化されれば、アニメの出番は限定されてくるかも知れない。

たぶん、スーパーコンピューターを使うまでもなく、‘軋みソフト’のようなものをちょっと操作するだけで、固い器材が歪み、たわむ微妙な様子を映像化できるはず。今でもかなり近い線いってる画像を時々みるから。

時代設定が良かった。文明や技術が進歩しつつあった時期のイギリスは、技術の害にまみれた時代よりも夢を語りやすい。設定が良かったせいで、冒険小説のような爽快な雰囲気を味わうことができた。少年時代に観た作品の感覚に近い。こんな活劇は久しぶりに観た気がする。

少年が主人公であったことも大事。青年では夢を語りにくい。恋愛の部分は強調されるが、ひたすら能力を試すといった夢の部分は、やはり少年が活躍しないと無理。

この作品は、子供が観るのを勧められると思う。アニメだから、血が流れるシーンがあっても、どぎつさが軽減される。文明の進歩と、その弊害に関して考えさせられることがテーマになっている点も、いたってマトモだと思う。子供映画だが、恋人と観ても、そう悪くないのでは?

キャラクター設定の面で多少の不満はあった。父親は、いわばダースベイダー的なキャラクターだったが、映画の冒頭部分では普通の人物であり、一貫性に欠けていると思う。不幸な事故を契機に主義主張が変わったら、その悲しみを表現していたほうが、よりダースベイダー的伝統に適う。

イギリス政府のスタッフのスティーブンソンや、その部下のキャラクターにも重みは欠けていたように思う。部下は凄腕の武闘派、もしくは狡賢いスパイのような人物が望ましい。ジブリ映画だったら、きっとそんな風に描かれていたろう。

財閥のスタッフの実行部隊の面々にも、それぞれのキャラクターがあったほうが良い。ぬけたヤツ、しつこいヤツ、バカ力など、それぞれの特徴をいかして描いたほうが、作品に趣きのような味が出る。省略しすぎていたと思う。

そして何より声優。祖父役、父親役は棒読みに近い印象。俳優が声優をする必要は全くないと思う。専門家に任せるべきだった。

第一回博覧会当時、モーリス(?)エンジンという巨大な装置が展示されたことを何かで読んだ記憶がある。作品にも水晶宮の内部の展示品として描かれていた。当時の蒸気機関車の製作者は確かスティーブンソンだった。つまり、実在の人物をモデルに映画に登場させているのかもしれない。

巨大兵器の排出するガスによって、ロンドンの町が氷漬けになるシーンがあったが、実際に極端な冷気を浴びたら、体内の水分が凍って瞬間的に死んでしまう人が多数出るだろう。建物もたくさん壊していたようだ。したがって、映画の戦闘に関わった人達は、全員が刑務所送りにならないといけない。

財閥も、きっと無傷ではおれないだろう。博覧会を攻撃する計画は、無理があった。大きな危機を設定するために、あんなストーリーにしたんだろうが、やはり無茶。子供映画としても、もっと高級感を狙って欲しかった。

また、ヒゲを生やした大臣は当然失脚。スティーブンソンも同様。少年だって、尋問くらいは受けたろう。哀れ機械は没収、監禁はされないとしても、監視の対象になったかも。

でも、彼ならきっと監視の目をくぐりぬけ、世界を駆け巡ることができそうな気がする。そんな冒険精神をくすぐる印象が、この作品の魅力だと思う。私も何か冒険したくなってきた。とりあえず、今度発売の宝くじでも買おう!

 

 

 

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