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2013年7月25日

レント ライヴ・オン・ブロードウェイ(2008)

Rent_2 - 火をつけてよ -

ミュージカルRENTのブロードウェイラスト公演の舞台を記録した映画。初演は1996年だったそうだから、場所を替えながら12年間もロングランを続けてたことになる。

衛星放送で鑑賞。その後、レンタルビデオ屋さんでも見かけた。映画版は既にDVD化されていたが、舞台版は最近のことだろう。

俳優達は映画版とは随分違っていた。映画よりも、本来の魅力が感じられた気がする。その代わり、完全にミュージカルなんでセリフで良い部分も歌になってしまい、映画のほうが表現力を感じた部分も少しあった。狭い舞台では空間的な表現には限界がある。

この作品はアイディアや音楽が素晴らしいのだが、子供用の劇ではない。気の毒ではあるが、性倒錯者たちが多くを占めていると言えなくもないので、大人限定だろう。恋人と観るのは今のところ悪くないように思うが、時代限定の作品のような気もする。

今エイズが猛威をふるっているアフリカや東南アジアでは、古典的かつ現実の話。我がことを語った名舞台と言えるだろう。ホモセクシャルな関係に限らず、一般的な友情、愛情と人間的な思いやりが根底に感じられる。

ヒロイン的な役割を演じるミミ役は、映画版では人気の関係でか知らないがロザリオ・ドーソンが演じていたが、この舞台では知らない女優さんだった。歌や見た目の印象では確かにより舞台に向いている印象で、スタイルが良くて役柄に合致し、何か薄幸な印象を受けた。ドーソン嬢は、なにか健康的な印象がある。

ライト・マイ・キャンドルとアウト・トゥナイトという曲をミミが歌うが、どちらも非常に上手く、声量もありそうで、たぶん歌手としての力が舞台版の女優のほうが上ということなんだろう。歯が出ているせいか、そこらにいそうな庶民的印象を受ける。それが、この舞台には好都合。

ライト・マイ・キャンドルは、仲良くなりたい、触れたいという感情をよく表現している。自分に感染性の病気がある場合は、関係を持つ異性は限定される。単に仲良くなりたいという感情よりも、何か非常に切ない飢えた感覚が伴い、かなり悲しい曲になる。この曲を若い女優が歌うと、その後の厳しい運命が予想できるだけに、よけい悲しい。逆にアウト・トゥナイトは若さと、たぶんヤクで興奮した状態を表現してるんだろう。

パーカッショニストのエンジェル役は、この舞台版の俳優は逞しすぎた。映画版は細身で動きもよりオカマチックで、役柄にぴったりだった。見た目では解らないが、映画版の彼は本物かも知れない。

シーズンズ・オブ・ラヴが、このミュージカルを代表する曲で、テーマ曲と言えるようだ。2~3回使われている。その歌詞や、あの当時のエイズに対する恐怖、若者の希望や悲しみ、当事者でないと解らない独特のセンスが感じられる。

しかも、極めて不幸で救いようのない設定ながら、最後に希望的展開に持っていっても文句が出ないような雰囲気が素晴らしい。そこで「あんな奇跡なんて、おかしいよなあ、気楽過ぎるよ。」といった感情を浮かばせては、作品を作った意味がない。真に共感してもらう必要があったのだ。それくらいエイズは深刻な病気。

とにかく、これらの曲を書いたジョナサン・ラーソン氏の才能には感嘆する。特にそれまで目立った経歴があるわけではないらしいので、バイトで生活費を稼ぎながら大変なハードワークをこなして完成させた渾身作だったのだろう。改めて思うが、本当に見事な仕事だった。

RENTには中毒のようなファンがたくさんいるそうだ。特典映像には、RENTの中毒になった連中が大勢出ていた。中には本当にホモセクシャルでエイズ患者という例も出ていたが、堂々としていて感心した。

他のロングランミュージカル、「コーラスライン」「キャッツ」などは、洗練さの度合いが違って感じられる。完成度や格調の面ではRENTはまだまだなのかも知れない。だから、極めて優れた芸術性を持ちながらも時代は限定され、残念ながらやがて消えていく運命にあるのかも。でも、あの恐怖の時代を知っている人にとっては、心に染み入る傑作だろう。

 

 

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