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2013年6月13日

他人をほめる人、けなす人(Francesco Alberoni 草思社文庫 )

Soshishafalberoni- 悲観主義論 - 

楽観的な人、悲観的な人、皮肉っぽい人、熱狂する人・・・そろぞれの性格的な特徴を、ミラノ現代語大学社会学教授の著者が解説した本。 

ミリオンセラーという宣伝文句に踊らされて購入。すると、さしずめ私は‘踊らされる人’か・・・ 

この本は雑誌に連載されたコラムを本にしたのだそうで、一編一編は短く、読みやすい。でも後半部に入ると、「真の認識に達する人」といったふうに、やや難しい例も出てきて、無理しているような印象も受けたので、より一般的な前半部分のほうが面白い。

本を購入したのは、自分には改善すべき点が多いと自覚しており、本を参考にしたいと願う意識が働いたせいだと思う。つまり自信を消失していることの表れだ。自分を改善して誰かに褒めて欲しいのだ。そんな意識の連中を獲物にした本と言える。

反省が好きな人は、こんな本を買いやすい。自分に直すところがないか常に考えてしまうクセがあるので、本を参考に客観的な観方を得たいと思う。そんなこと気にしないほうが、かえって楽観性につながって良かったりするのは皮肉な結果だが・・・おっと、悲観的。

この本は、いわば他人を悪く言う本である。性格を分析しているからには、良いことばかりは言えないから当然そうなる。他人をけなす人は嫌われて孤独になりそうだが、必ずしもそうでないことが多い。悪く言われたくないために仲良くする反応が起こって、周りに取り巻きが集まる傾向がある。本を私のような人間が買うのも同じ理屈であろうか?

群れの中で孤立したくないので、取り巻きにはならないまでも本で状況を知りたいと考える・・・そんな弱い立場のサルが私。ああ、またまた悲観的。

私は人を批判することは少ない・・・(家内だけ例外だが) 批判を避けるのは、それが美徳だと思うからだが、相手から見れば反論してこない意気地なしとなる。口喧嘩の場合は、勢いに乗って相手を非難し続ける必要がある。口論を嫌えば、すなわち立場を悪くすることに他ならない。相手を慎重に選んで、口でやり込めるクセがある人は取り巻きを得ることもあって成功する傾向がある。それは人間社会も動物の群れの延長にすぎないせいだろう。美徳は、群れの中ではあまり役に立たない。

楽観論者は、責任を回避することが多いように思う。言い訳は楽観者に限らないのだが、彼らは特に普段の言動が都合よすぎるので、生き残りの本能から言い逃れを求めるように思える。正直といった美徳を気にしていたら、楽観的にはなれない。「そんな意味では言っていない」「想定外の事態」「当時の認識では許容される」「混乱を避けることを優先した」・・・言い方はたくさんあるが、過去の楽観的観測を言い訳する言葉。潔い態度は、立場上の失脚とともに、楽観論者からの転落、考え方の大転換を意味するので、いろいろ辛い。

家内と意見が対立した問題を後で検討すると、ことごとく私の予想が正しい(と、思う)のだが、「そんな意味では言っていない」「想定外の事態」「当時の認識では許容される」「混乱を避けることを優先した」・・・の後に、「古い話をネチネチ蒸し返して」、「はいはい、どうせ私が悪うございました」「人の気持ちも・・・」ウンネンの決まり文句で、改善につなげるための話し合いが解散する。本能的に責任を回避する手順が備わっている。

楽観論者が会社社長などに多いという記載があったが、楽観的だから成功したか、結果的に楽観できるほど運が良かったのか、一概に言えない面もある。ナポレオンやダイエーの中内氏などは飛ぶ鳥を落とす勢いから失墜しているが、人生の途中では大勝負を勝ち続け、楽観的だったと思う。図太さと自信があったはず。でも晩年はそうでもなかったろう。常に楽観的ではおかしい。こんな見方は悲観的すぎるだろうか?

この本はコラムだから、学問的に分析した結果を書いてはいない。そうかもしれない程度に思うしかない。一面を捉えたにすぎないと思うのだが、なるほどと納得できる表現も多かった。私の悪い点をズバリ指摘しているようで、ドキッとする表現も多い。だから、人によっては読むのが嫌になるかもしれない。批判されてバカにされたように感じるかも。

本を読んで、私には人を元気づけようとする意欲が足りなかったと感じた。嘘を言いたくないせいで酷いことを言ってしまったり、妙に気を使いすぎてかえって傷つけたり、全く感情を害してばかりの酷いジョークを飛ばしたり、無茶苦茶だった。今書いている文章も、読んで楽しくなるような書き方をしていない。でも調子良過ぎて嘘っぽくなったり、演出過剰な名文になるのは気が引ける。

楽観論を述べる人は邪悪な人・・・そんな意識が自分にはあるようだが、どんなものだろうか。確信はないのだが、楽観論者は嘘を言って自分の立場を良くする利己主義者のような気がしたのかも。向こうから言えば、私こそ人の気分を悪くさせる利己主義者の偽善者、独りよがりとしか思えないだろうから、どっちもどっち。どう考えれば良いのか解らない。

自分の悲観的な観かたが嫌だ。昔から悲観的。その結果、自分の予測、分析を正直に話すと相手は気分が暗くなってしまうだろうと思い、正直に話すことができない。逆に人の気持ちに害を与えないようにしたいなら、調子を合わせるだけになり、真摯な態度は諦めないといけない。そんな風な調子の良さは情けないことも確か。元気づける言葉は、基本的にはしらじらしいものが多いから。

自分も社会も何か間違っている、でも改善は望めない、そんな世界でも生きていかなければならない・・・そんなセリフが最近の映画でもあったが、仕方なく生きてるような感覚だから楽しいはずがない。

自分が悲観的すぎるのは嫌だが、昨今の地震や原発事故、中国や朝鮮半島との緊張関係、対米関係、経済的な変化などをみていると、そう悲観でもなく、ただ正確に分析していたことに気がついた。怖いほど正確で、無駄な詳細さをもって予想していた。でも正しいなんて事前に証明しようがないから、その状況にまた悲観する・・・そんな悪循環に陥っていたと解った。

普通に考えれば多少は予測できる。問題は悲観的な認識を、そのまま態度に反映するか、隠すか無視して自分の生きる道に集中するか。悲観的であっても気後れすることはないが、楽観論者や他人のことを悪く言う人にどう相対するかに気を使うべきではあった。悲観的な面が嵩じて、社会から排除されては困る。

悪いことが実際に起こって証明されるなんて、やはり悲しい。できれば大事故や、自分が所属する社会全体の凋落は予防したい。悪いことが起こりそうでも、とりあえずオレのせいじゃないからと無関心でいるのは、倫理にもとる考え方ではないか。もともと楽観視には、潜在的に邪悪な面、無関心な面があると言える。子供のように無邪気な邪悪性かもしれないが。

悪いことを避けようと考える人が多数派にならないかぎり、悪いことを防止するのは難しいだろう。多数決をとらなくても、人間社会は数がものを言うことが多い。発展と事故防止のためには、多くの人間が悲観的な観点を持って真摯に分析し、対処する必要がある。責任がある人がそんな態度を持ってくれれば良いが、そんな人が排除される社会構造だと悲劇。

事前の予測というのはテーマとして曖昧になりやすく、共感を得るのは簡単じゃない。人の利害に絡めて話し、納得させるだけの根拠を明確に提示できないことが多い。これからのことだから、確たる証拠がないのは当たり前。したがって、その時点で方針に関して多数決をとったら、妙な結論になってしまう。

個人が利益を守るためには、利害に意識を集中し敏感になる必要がある。そのため、出世や収入などの利害が絡む問題以外には興味を抱かない人間が多い。目に見えない将来の事故を防ぐために何かを言っても、疑うか興味が薄いかして、共感できない。現実的でない、もしくは利益に結びつかないと感じる、それが多数派であって当然。

民主主義の世の中だから、正しくなくとも民意に従って物事を決めないといけない。例えばもし坂本竜馬が民主主義国家に現れたら、おそらく民意とは合わない。大政奉還のようなプランは、民意を反映しないので却下される。合議システムの結果として改革に失敗し日本が植民地になるかも。でも、民意だから諦めろとは思えない・・・・すると悲観的になるって寸法。

会社でも政府でも、楽観論者ばかりが揃っては危ない。もちろん悲観論者だけでも沈滞する。両者のバランスを保つために、イエスマンでない人間をも揃えるセンスが必要。実際には滅多にこれが実行されることはなく、偏ってしまうことが多いような気がするが。

ともかく、自分の生き方に自信を失ったら、騙されたと思って、そして私のように実際に作者や書店の思惑の餌食となって、この本を買ってみることをお勧めしたい。視点を変えるきっかけになるかもしれない。読んで気分を害する可能性もあるけど・・・

 

 

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