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2013年5月11日

夢売るふたり(2012)

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- においを感じた -

居酒屋を営む夫婦。ある日、店が火事になってしまう。しかし、夫婦は資金を集める新しい方法を思いつく。それは女性に夢を売る商売だった・・・

・・・よくぞ思いついたアイディア。西川監督が原案から脚本までこなした作品らしい。監督が女性だったことで表現も随分と露骨。それによってリアルで、臭いさえ感じられそうな芝居が演じられていた。

市内の劇場でかなり長く上映されていたが、とうとう観ることができなかった。今回はDVDで鑑賞。

この作品は間違いなく日本アカデミー賞作品賞に相当すると思うのだが、選にもれてしまったらしい。ドギツさがあだとなったかも。においを感じるような映画はアングラ的で、賞にはそぐわない。子供にはそもそも良くない。R15指定が付いていたと思う。恋人とこの作品を観る?・・・少々覚悟を決めてからのほうが良いと思う。最初のデートで見るのは勧められない。

この作品、このまま海外でリメイクされそうな気もする。どこの国でも扱いうる普遍性を感じる。その国、その地域なりに演出を変えることもできそう。よくぞ思いついた話。実際に似たような事件はあったかもしれないが。

水木しげるのマンガの中に似たような話があった。戦後の困窮時代の実話らしいのだが、夫婦が共謀して不倫や売春、結婚詐欺をしてトンズラという算段だったらしい。後日、イカサマ夫婦とばったり遭遇するが、「あの当時は皆喰うのに困ってたからねえ・・・」と、許してしまう話。とことん困れば、何でもありうる。

詐欺を描く日本映画の多くで、騙される様子が滑稽に感じられる。役者が真剣に演じれば演じるほど、おかしくなる。だから途中の笑いは約束されたようなもの。でも顛末のもって行き方が難しい。そのまま逃げ切る話にするか、結局はばれて酷い目に遭うか、失敗しても何かの救いを感じさせるかどうか、その辺の加減によっては作品が台無しになる。

惨いだけのラストでは後味が良くない。仮に計画が失敗したとしても、ほのかに微笑むシーンが絶対に必要だと思う。その表現の加減が難しいが、この作品はどうだったろうか?良かったとは思うのだが、最高だったかは解らない。

松たか子がヒロインを演じていたのが凄い。お嬢様の印象がある松だが、近年の役柄は相当激しい。顔つきに弟ほどの品の良さはなくて、かなりワイルドな印象があるので、こんな役には最適だった。ナプキンを変えるシーンはよくぞやったものだ。無表情に手際よくこなすと主人公の考え方が解る。女性監督でないと、なかなかやりにくいだろう。

この役、ちょっと前なら、かたせ梨乃などドスの効いた女優が演じるべき役柄だったと思う。体型で言えば色気が感じられて、スレンダーではなくグラマー。いわゆる肉食系という印象。そうでないと、夫を脅して働かせる迫力が出ない。松たか子は好演だったが、ドスは感じなかった。

田中麗奈の表情も素晴らしかった。彼女は小さい頃から女優になるべくして育ったそうだが、確かに役柄そのままの個性の表現が充分に出来ていた。きつそうな表情が良い。いかにも騙されそうな、ひどく恨みそうな気配が非常に濃厚に感じられた。殴り方も手加減を感じさせず、素晴らしかった。

彼女がヒロインを演じると、おそらく底知れぬ悲しさが表現できたかもしれない。独身OLの悲しさとは違った狂気じみた悲しさを表現できそうな女優さん。

安藤玉恵という女優も目立った。風俗嬢にしか見えないような表情、振る舞いが素晴らしい。重量挙げ選手を演じた女優さんも、本職の選手にしか見えない。選んだスタッフも、選ばれた女優達も見事だった。

男優の阿部サダヲも役柄通り。彼の目が素晴らしい。非常識でどこか違うところに行ってしまっている人間を演じるには最適な目。グループ魂の公演で見せる「中村屋」のギャグで知っていたが、役者としてのほうが知れ渡ってしまった。ただし、この役ではもう少し演技を抑えても良かったかも知れない。

演じる役者によっては別の個性も考えられる。例えばの話、豊川悦司のような俳優が演じて、実際に女性が好きになりそうな色気を強調する手もあったと思う。もっとリアルになる効果は期待できる。でも、実際に詐欺を達成する男は私には意外に魅力の感じられない、ナヨナヨした小男のことが多い印象もあるので、二枚目が演じる必要はないのかも。

結婚詐欺を身近で知らないので、やられる女性の気持ちはよく解らない。田中麗奈の場合を例にとると、涙を見せるタイミングを見計らって取り入った計略が効果的だったようだ。別に計画する必要もない。その場に上手く居合わせたら、タイミングよくハンカチを出すことは出来る。(ただし、私のハンカチのように子供の鼻水がついていたら逆効果だが)

その後、悩みを聞いてあげる段取りも必要らしい。話を聞いて「なんて下らないことに悩むの。」などと正直な印象を言ってしまう私のようなアホウでは、一生不倫はできない。腹に何か隠した狙いがあるなら、我慢して相手をすることは必要。忍耐できるのは、狙いが大きいからだ。

そう考えると、話に乗ってくれる異性は必ず何かの狙いがあると考えたほうが正しいかも。良いヤツ、話の解る人は、即ち詐欺の意図があるか真からの暇人。だから、夜の街や二人きりの部屋で駄弁る場合には、「この相手の真の意図は何か?」という視点に切り替えてみることも考えるべき。

考え過ぎると、一生独身で孤独という事態に陥る可能性も高いが、どっちが良いのか解らない。麗奈嬢も、一時の夢を持てたんだから、全くの最悪ではないと・・・・でも、そんなこと言ったらヒールのかかとで殴られそう。

 

 

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