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2013年4月23日

アイアン・スカイ(2012)

Ironskyblindspotpicetc

- EUの力 -

月の裏側に潜むナチスの残党が地球にやってきた。選挙を控えるホワイトハウスのスタッフは、彼らを利用して選挙に勝とうと考えるが・・・

フィンランドやドイツなどの製作会社が作ったそうだ。俳優達は素人としか思えないような演技ぶりだったが、実によく出来た作品だった。カルト映画では有名な監督らが中心となって募金を募り、ヨーロッパでヒットしたらしい。ナチスを扱って、しかも彼らが悪役とは言い切れない作品でありながら、よく許されたものだと驚く。

この作品は子供でも楽しめないことはないと思うものの、あんまり勧められる類の作品ではない。基本的にカルト映画で、オタクっぽい人達がニヤニヤ喜ぶのが本来の楽しみ方。老人や子供には向かない。恋人と観るのは悪くないと思える。ただし、ユーモアのセンスによってはひどく気分を害されることもありうる。ナチスを扱ってギャグというのは、本来なら許されない。

ストーリーが素晴らしかった。月に降り立ったのが黒人という設定が話の流れを作り出していた。大統領が人気を得るために黒人を派遣するのは自然だし、ナチスの科学者が荒唐無稽な人体実験をするなら、黒人を白人の、それもナチス信奉者にしたいというのも、いかにもと笑える。流れとして無理が少なく、笑いも期待できるように、おそらく複数のスタッフがアイディアを出し合って決めていたのでは?

大統領選挙のために演出が図られることは有名なので、ナチスを利用しようとする話に一定のリアリティはあった。ナチスの演説が、そのまま大統領の演説の草稿になるという点は実に良くできた話。確かにどこでも演説の文章は美辞麗句だらけで、似たようなものだ。

無駄に大きな戦艦、宇宙服なのにナチスの特攻服のまま、ガスマスク風のヘルメットなど、いちいち笑える小道具が工夫されていて、おそらくアイディアを出しながら作り手も楽しんでいたに違いない。

各国が秘かに宇宙戦艦を構築していた話や、互いに非難し合い、騙しあう国際会議の様子もおかしい。北朝鮮代表まで出ていたが、その扱いにも驚いた。これはさすがに北朝鮮から何かの公的な非難があってもおかしくない。非難すると、また笑われそうだが・・・

日本や中国の出番は少なかった。存在感が足りないようだ。中国はもっと大きなウェイトを占めていてもいいと私は思うのだが、北欧の人達にはロシアのほうが関わりが大きいだろうから、あんな風に描かれるのか?

ヒロイン、敵役とも学生かポルノ俳優か何かの出身だろうか?演技に一貫性がなく、役柄との合致があまり見出せなかった。それでも話としてちゃんと進んでいたので、ストーリーや演出の良さで補えていたのか?

CGに関しては、かなりのレベルだと思った。ギャグ映画だからチャチな手法で笑わせるかと思いきや、真面目な映画と大差ない出来栄え。どこかアメリカのスタジオが作ったのだろうか?

こんな作品を作れるヨーロッパが羨ましい。EU統合の効果がきっとあると思う。この手の話を日本で作ることは難しい。中国や韓国でもそうだろう。例えば日本の軍人が復讐してくるギャグ映画は全く考えられない。どう転んでもギャグになりえない。どうして違うのだろうか?旧日本軍の軍人や内務省等の役人が、そのまま戦後の政官界に居座ったからだろうか?

日本政府が真から謝罪したとは誰も思えない。私だってそう。でも、これから戦犯を裁こうなどとは考えられない。今更過去の過ちを追求しても、死んだ先達が生き返るわけではないから。でも敗戦の責任をとらなかった戦前の指導者達を心から許す日本人は、たぶん右翼にもいないだろう。

素人考えながら、日本政府には謝罪できない事情があると思う。そもそも、今の首相だって戦前の首脳部の末裔である。現首相に限らず、過去の政治家や財閥、役人にも戦争に加担していた人物は多い。米国が支配に有利なように、彼らを温存したからだ。国民も厳しい処罰による破壊的な混乱を望んでいなかったはず。

謝ることは身を危険にする。講和条約を結んだ時点で、国際的賠償の方法はいちおうの決着と言えなくもないが、どんな賠償でも満足を得ることは最初から無理。譲れば次々と請求が増えるだけであろうから、決着がついたと言い張るしかない。もともと講和条約とは、そういうものだと思う。後で何か要求をするのは、国際公約を破ること。

いっぽう、中国や韓国の人としては、公約に従って日本を許すなどと言おうものなら、国内で生きていけない。どれだけ賠償を得ようと、日本と妥協する姿勢は自分の命に関わる。許すことは、数百年経っても難しい。日本側の宣伝戦が上手いか下手かの問題も少しはあると思うが、仕方ない現実。

新聞などの論評を読むと、民主党時代の中韓に譲る姿勢が彼らを増長させたという論調が多い。確かに小沢氏の時代は大勢の国会議員が中国指導部と握手する意味不明の行動があったくらいだから、隙だらけになった。あの握手には、中国指導部もびっくりしたのでは?

私が中韓の要人だったら、小沢氏達を中枢部から排除した勢力には、攻撃をかけるべきと考える。自分達に好意的でない政権には困ってもらったほうが良い。結果として反発を喰らい、親中親韓勢力が日本国内の支持を失って事態が硬直してしまったら、おもむろに何かの譲歩を見せて新たなパイプを作るしかない・・・そんな風に考える。今は、日本に対しては攻撃と揺さぶりを続けるべきと考えるだろう。実際に彼らがどう考えているかは解らないが。

何かのきっかけで日本側が譲歩してくれたら、願ってもない幸運。自分らの功績になるし、緊張緩和にもつながる。例えば、アベノミクスが失敗して安倍氏が失脚し、小沢氏が復活するかもしれない。懐かしい小沢氏など本当はどうでもいいが、誰かパイプ役を買って出る人物が出ないか待ちたいと普通なら考える。尖閣や竹島は象徴的なもので、揺さぶりの材料と思う。

仮に日本を管理しても、得るものが少ないことは明白。資源が少ない国は、基本的に支配する意味がない。通商や投資先としてしか使えない。尖閣諸島を得ても、他に失う物の方が大きいと思う。フィリピン近くの島は、失うものが少ないから奪って良いが、まだまだ日本相手に強奪はマズイ。日本を攻略しても維持管理は大変で、親中国政権ができても長く持つとは考えにくい。揺さぶり続けるだけに留めるのが利口。そう思うだろう。

思いがけない事件が起こって、どちらかが譲らざるを得ない状況になるまで、手を出さずに待つのが基本。手を出したら、敗北につながる。そんな関係だから、EUのように相互連携して対外的発展といった発想は生まれにくい。もちろんギャグ映画もありえない。

 

 

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