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2013年4月 4日

ハリーとトント(1974)

20cfox_2 - 時代・・・-   

住み慣れたニューヨークのアパートを強制退去させられた老人。飼い猫のトントといっしょに、子供達を頼って米国横断の旅に出る・・・

・・・長いこと観たかった映画。DVDを探しきれなくて、今回やっと鑑賞。独特の味がある良い映画だった。

ロードムービーでありコメディなんだが、大爆笑するような大きな出来事はない。テーマはかなり真面目で全体として大人しい、静かな作品。子供では飽きられてしまうだろう。恋人と観る映画とも思えない。古くなってきたので、若い観客にはまず向かない印象。でもクラシック映画とも言えない微妙な状況か?

ただ、恋人とこの作品を観ても特に悪いとは思えない。なんとなく暖かい、ほんのりした気持ちになれそうな気がする。当時の時代を知らない観客には、やや受けが期待できない気もするが。

当時の時代を思い出すと、多くの人がこのような雰囲気の作品を欲していたと思う。ベトナム戦争や人種差別に絡む対立で殺伐としていた。くだらなくても、心地よく優しい視点が欲っせられた時代だった。ピースだぜブラザー・・・

主人公を演じていた俳優が、ほとんど素人の老人だと公開当時に聞いた記憶がある。亡くなった時の報道も覚えているが、大きな話題にならなかった。つまり、強烈な印象を残す不朽の名作ではなかったということか。大仰な大作ではないから仕方ないかも。

でも実際はボードビリアンで、知ってる人は知っている芸人だったようだ。一世一代の演技で、彼の人生は、この作品のために合ったのではないかと思えるような、そんな役者だった。

原作の記載がないので、映画用のオリジナル脚本だったのだろう。ストーリーは大したことないような気もする。でもセリフや役者達の個性、演技の的確さなどが素晴らしく、レベルの高い作品に仕上がっている。

ヒッピースタイルの若者達が出演している。いかにも当時の雰囲気がする。無言の行をやる若者の表情がおかしい。体型も、いかにもあんな若者がいそうである。アーパーな娘さんも、その表情が懐かしいような気がする。

映像の質も、今の映画より解像度が低いようだ。今の映画はカメラも高解像度の機種が使われているようだし、デジタル処理されている場合が多く、景色にさえ加工を施してあって、自由に表現を変えることができる。この作品とはずいぶん違う。画質のせいで古ぼけた印象を受ける。

老人同士の会話が面白い。いい歳こいて、色恋沙汰のジョークを繰り返している。あれが若い人間なら笑えないかも知れない。爺さん同士だからおかしいのだろう。

老人の個性が上手く描かれていた。極端に偏屈者ではない、普通の人物だが、住む場所からの退去には頑固に抵抗することに、多くの人は共感するだろう。住む場所を自分の意に反して追い出されることは誰にも耐え難いから。

実際にも強制退去は大きな悲劇だ。父が昨年脳梗塞を起こして施設に移ったが、明らかに一人暮らしは難しい状況なのに帰宅したがった。強制退去に近い感じになった。長年住み慣れた家から出て行くことは、私達の世代とは違った思いがあるだろう。

私の年代なら、例えばアパートに移るといっても、狭くなること以外は困らない。今の家は管理が面倒だし、夏は暑く冬は冷たく、マンション時代が懐かしい。でも、齢をとったら自由が利かないことのほうが嫌かも。

欧米の都会の場合はアパートが当然であり、郊外の邸宅に暮らせるのが希少のはず。主人公と私とでは、アパートに対する感覚は違うだろう。アパートで生まれ育ち、アパートで死んでいくなんて自分には考えられないが、今後は日本でもそんな人が増えるだろう。一戸建ては、無駄が多いといえばそうだから。

マンションの折込みチラシが二~三日毎に入ってくるが、最近はよく見るようになった。景色が良い部屋なら考えてもいい気がする。普通の家だと、周りをビルに囲まれたら何にも見えない。土地の価格も上昇傾向は薄いので、資産価値が上がる期待は持てない。管理も面倒、買い物もマンションのほうが便利だと考える。そんな齢になったんだろう。

親子であっても、大人になったら自活していくべき。その結果、心まで離れていくかのように疎遠になる場合もある。今のようにバラバラの核家族だらけになると、親戚が集まる習慣は全くなくなり、親子でもそうだ。広大なアメリカと日本では状況が少し違うものの、県が違うだけでも兄弟に会うのは大変になる。情けないが、日々の暮らしに追われてしまっている。

 

 

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