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2013年3月11日

コクリコ坂から(2011)

- 少女趣味と回顧趣味  -

父親を亡くし、下宿屋の仕事をしながら高校に通う主人公の娘。ある日、彼女は同じ高校の男子学生と知り合い、新聞部の活動を手伝うこととなる・・・

・・・DVDで鑑賞。原作は少女マンガだそうだ。いかにも少女が涙を流しそうなストーリー。舞台が横浜、旗信号や高校生活、学生運動、男女共同での時間外活動、部室などなど、ノスタルジックで乙女チックな雰囲気が漂う作品。

したがって、そんなものに興味のない人間には全くの乙女趣味の変態・・・まではいかないが、監督の趣味の源泉がなんとなく知れてしまう残念な印象もありうる。

時代背景は、戦後のまだ豊かではなかった時代。戦時中の友情が基本的な設定になっているし、夢だけはあるといった健全さが根底にある。「三丁目の夕日」と共通。そう言えば、この作品に悪役はいたろうか?悪役は無理してでも作るべきだと思うが・・・

まさか、横浜を舞台に神と人間が戦う~またはトトロが登場するなどありえないので、舞台に応じた話しかないのだが、それにしても少女趣味に限定された話では、いささか興ざめ気味になったのも仕方ないのでは?

場面の出来は悪くなかったと思う。絵になるシーンが多い。海を進むボートの映像、霧の中を進むボートが大きな船に気づいて避けるシーン、少女が布団の中で夢を見るシーンなど、高度なセンスを感じた。

思春期の少女の感情が非常に上手く表現できていたように思う。・・・思うだけで、当方には少女の気持ちは解らないし、少女達にもそのようにはっきり言われてきた悲しい現実があるので、まあせいぜい懸命に生きるヒロインに憧れるくらいしかしようがないのだが。

ただし、少々あざとい設定のような気はする。少女が朝御飯を作り、下宿人を送り出してから通学し、しかも部活動の手伝いまでやるなんて、1日24時間で済むとは思えない活動ぶり。そんなやり手の少女が本当にいたら、私は直ぐに結婚を申し込みたいほどだ。

その他にも横浜、古い下宿、部室がある古い洋館、学生運動。乙女心に訴えるための、商魂のようなものがあざとい。さりげなさも望まれるのでは?

スタッフがこの設定を選んだ理由はよく解らない。よくぞ選んだ!と納得できる人が多くなければ、きっと作品もヒットしないだろう。誰でも共感できるような普遍性を感じない。

人物の動きも気になった。今はCGでなめらかな動きを再現するのが当たり前の時代。少女らが走る映像は、テレビアニメなら許されるが、映画では少々マンガチックに過ぎるように感じた。周りの技術が進んで、センスとして置いてけぼりを喰らっているようだ。体重の移動の仕方、体のしなり具合などを再現すべきと思う。資金的な問題があったのか?

人物の顔にも飽きを感じてしまった。ルパン三世時代から変わらないような顔も多い。バージョンアップすべきではないか?

ヒーローの高校生や、生徒会長のセリフ、落ち着きぶりも気になった。通常、青年達は迷い悩みながら成長していくものだ。先生や理事長と相対する時にはドギマギしないとおかしい。緊張や恐怖のような感情を持たない青年は、残念ながら存在感が薄い。声の振るえ、汗の一つ二つだけで良いから演出して欲しかった。検討不足だったと思う。

この作品の製作はドキュメンタリー番組になっているそうだが、何を検討し、どんな結論にどのように至ったのか、そこを検討すべきかも知れない。おそらく何か大きく間違った判断をしている。何かにこだわって、「絶対こうすべきだ!」と言いつつ、大事な問題がなおざりになっているはず。

私なりに考えれば、まず題材が良くなかった。少女趣味だけの世界では一般受けしない。大いなる不幸や、誰が見ても深刻な秘密、いやらしい敵、戦いや時代がもたらす興奮や不安、できればラブシーン、そんなものがないと印象に残りようがないはず。

オリジナルの物語でもいいから、映画向きに作品の構想を考えるべきだったと思う。

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