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2013年1月19日

ドゥ・ザ・ライト・シング(1989)

Universalpic 

- 個性的でリアルかつ劇的 -

極めて個性的過ぎる人間達が、人種間の対立、暑さ、ちょっとした諍いを原因として溜まった不満が爆発する事件を描いた作品。題名は、作品の中でセリフとして紹介されている。ちょっと皮肉めいたタイトル。登場人物がおかしい。

主人公は、ピザ屋で配達係をする若者。仕事はサボり、家族の世話はしないダメ人間。白人には嫌悪感を抱いているが、職がないので白人の店に勤務している。そこが不満の第一らしい。しかも店主が自分の妹に紳士的過ぎる。そこも気に入らない。

ジョン・タトゥーロはピザ屋の店主の息子の役で、黒人に対して嫌悪感を抱いている。そのうえ、弟が黒人と仲良くし、自分に反抗的なのが余計に気にくわない。

ピザ屋の主人役ダニー・アイエロは黒人白人に関係なく、店に来てくれる客を大事にする仕事熱心な店主。仕事熱心でない店員には腹を立てるが、人種差別とは関係ないようだ。ところが、黒人の中には彼を許せない人物がいる。屁理屈に近い細かいことで、腹を立てているが、大勢としてではなく少数派に過ぎない。その少数派が勢いをどう持つか、そこを描写している。

ビル・ナン演じた大男は大きなオーディオ製品をぶら下げて通りを歩く変人。仕事をしているのか不明。体格が良いので、大音量でのし歩いても文句を無視できる。音量にはこだわりがあり、それが誇りにすらなっている。ピザ屋で音量を下げるように言われたことが、店主に腹を立てる理由になっている。

イタリア系の白人達と、黒人達、韓国系の一家、プエルトリコ系?の集団など、人種が混在して一触即発のトラブルに発展しそうな展開を上手く描いていた。

一つ一つは小さな反感だが、記録的な暑さの中、イライラはつのり、日頃の不満とちょっとした出来事が絡んで、一気に暴動に至る、そこがよく理解できた。カタストロフィーの描き方としては古典的手法に従っているのだろう。個々の個性も強調した描き方は、強調され具合が舞台劇としても通用する。

リアルだが滑稽、ユーモア混じりだが悲劇的。変に聖人ぶった説教スタイルではなく、またアジテーション風に何かの教義教訓を訴えようというのでもなく、それに人々への愛情のようなものも感じるのだが、軽蔑に近い表現もする。そんなスタイルには好感を持った。

特徴を生かしすぎると、現実からは多少外れてしまう。アップのシーンを頻回に使うと、劇画みたいになってしまう。カメラを引いて、リアルなドラマもないといけない。互いにイライラしていく様子が解りやすく観客に伝わらないといけない。そのへんの加減の仕方がいい。

パトカーを眺める街の住人達の視線、対して住人をにらむ警官達の視線、その表現の仕方も秀逸。B級映画のにらみ合いのようだ。老人達が、用もないのに道端でだべっている姿もリアル。リアルでいて、漫才のようにおかしい。

あのだべりのような短編的シーンで、非常に上手いセリフの選択のセンスを感じる。奥に潜む感情や、長年の対立、表面上の対応などへの理解がなければ、ああはできない。小柄な黒人であるスパイク・リー監督には、おそらくそれができるだけの体験があったのでは?

監督の演じた青年の歩き方がおかしい。やせた黒人の若者には、あんな姿勢で歩く人をよく見る。演技ではなく、何か格好づけて気取っていたり、骨格の関係でか知らないが、ストリートボーイを上手く現す歩き方だった。

妙なシーンも多い。タイトルバックから続くダンスのシーンは、激しい感情を表現したミュージックビデオ風の映像だったが、ダンスが非常に美しいわけではなく、パワフルだが完成度の点では問題ある動き。あえて映画に使う意図は解らなかった。

韓国系の店が出てきたが、これも中心となる物語からは外れかかっている。何か実際の事件を再現したなら別だが、この店の存在が必須の条件とは思えない。

そう言えば、実際の暴動では韓国系の商店に暴徒が入り込み、盗人にライフルで対抗する店主が紹介されていた。韓国人への反感は絶対にあるはず。黒人よりも羽振りが良いと、ねたみのような感情は必ず出る。勤勉な東洋人は、常に略奪の対象となる。

ただ、この映画に関しては必要なかったような気がした。どうせなら、韓国人達の店も襲って、いかに自分達が酷いことをしたのかをリアルに再現したほうがいい。

ミュージカル映画ではないのだが、全編に当時の音楽が流れている。今のラップ調とは少し違う、ポップ調でロックの雰囲気も残っている感じ。きれいな音楽がBGMで流れる映画とは全く違う作風だが、このテーマには合致していた。

赤みがかった激しい色彩のフィルターも、独特すぎる雰囲気。この世のものではない異様な世界をイメージさせるような意図があったのかもしれない。個人的には、もっと白がかった強烈で乾燥した暑さの表現でも良かったような気がしたが、どんな雰囲気になるか解らない。

ブルックリンあたりの町で仕事がないなら、他の土地に行くか、転職など、何かチャンスをつかむ手口がありそうな気もする。人種差別や、本人の能力、家庭の事情など、いろんな要素がそれを許さないのだと思うのだが、その病状はよく解らない。

黒人でも凄く成功した人物は多い。音楽やスポーツのヒーロー達だけでなく、ビジネスや一般の商店などにも進出できた人は多いはず。ただ、脱落者も少なくはないはずだし、スラム地域に彼らが入り込むのも現実だろう。

そこに至る理由が解るような気がする作品だった。それだけ説得力があったということだろう。

 

 

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