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2012年10月31日

最強のふたり(2011)

Gaumontetc

- 思いやりについて -

脊髄損傷で首からしたが麻痺した男。彼の介護人として雇われたのは、犯罪歴のある男。しかし、二人は最強のコンビとなった・・・

・・・これは実話に基づいているそうで、実際の二人の映像が最後にちょっと紹介されている。出来の良い映画だった。ユーモアが基調になって、誰が見ても悪い印象は受けにくそうな作品。ただし子供向きではないし、障害者がどのように感じるかも解らない。

黒人のヘルパーを演じていたのはオマール・シーという人だそうで、彼の魅力が作品の魅力になっていたと思う。鋭い目をさせても、穏やかな笑顔を見せても総てが絵になる。セリフの言い方が上手いかどうかは言葉がわからない自分には判断できないが、少しセリフに無理はあったような気がした。

多少は演出のせいで、わざとらしい印象も受けた。日本人が彼のような演技をしたら、噓くさくてダメだろう。それに現実にヘルパーになるなら、汚物の処理が必要なくらいは知っているだろう。大げさに嫌がるなんて、演出だったのではないか?

彼が病人に言ってはならないと普通なら考えられている内容を話した時に、顔をしかめる周囲の反応がおかしい。よく考えたセリフだった。毒舌ギャグは、間違えなければフランス以外でも受ける。

障害者役はダスティン・ホフマンに似た役者だったが、少しにこやか過ぎる印象を受けた。普通なら、もっと気難しそうな表情を多く見せるのではないか?コメディの要素を高めるために、あえて笑顔を多用したのかも。

作品の構成もなるほどと思った。時間的な順番を変えて失敗する作品が多いと思うのだが、この作品の場合はエピソードが良かったからか、ヒネリが効いていて、しかも端的に二人の関係を表現していたので、大成功だったと思う。

脊髄損傷、略して脊損。あら脊損ね、整形と交渉しなきゃと、救急外来では普通のことのように話すけれど、つまりは良くならない、酷く可哀相、如何ともし難いというイメージがあり、連絡してステロイドの指示を受けるかどうか、どうやって移送するかも指示待ち、つまり何もできない病気の代表格。回復例を見たことがない。

急いでステロイドを投与しても、損傷した組織が戻るわけではない。炎症を起こして腫れるのを抑え、二次的な損傷を防ぐといった効果しかないのではないか?いかに神経伝達をつなげるか、それが大事なことは間違いない。

神経の再生ができるようになったら、対処法に革命が起こりうる。奇跡の回復が、おそらく珍しくなくなるはず。それに期待して、今はとにかく褥創を作らないこと、尿路等に感染を起こさないことに徹して待つべきだろう。10年後が楽しみ。神経細胞は樹枝状の繊維を伸ばそうとするから、おそらく少しくらいなら再生してつながってくれるのでは?

問題は、神経細胞に付随する保護細胞達が上手く機能してくれるかどうか。例えば神経細胞だけ移植しても効果がなければ、グリア細胞と神経細胞を混ぜて移植するという手もある。上手く細胞同士が配列して機能してくれるかは解らない。歩行を目指せるかどうかも解らないが、充分期待できそう。

現状では、脊損の人にどんな言葉をかけてよいか、気を使わざるをえない。普通なら辛辣なギャグは控えるだろう。日本人の患者の場合は、生真面目に理解して冗談が通じない人も多いし、わがままな解釈をする傾向の人は、健常者障害者を問わず、相当多い。

「血色が良いようですね。」「動けなくて運動不足で太ってると言いたいのか!」いや、そんなことは言ってないんですけどと、最初から話にならない人もいる。良い関係を築いてからでないと、話すら危険な場合がある。

だから、よほどの条件が双方で揃わない限り、心を通じ合わせて介護するということはできない。この作品のモデルとなった二人も、何かがちょっと出会い方が違えばケンカ別れしていただろう。

往診していた女性、実に悲しそうな表情を浮かべて泣き叫ぶので、可哀相になって「何か私ができることありますか?」と、聞いたら殴られてしまった。ガン末期患者に説明をしていても、途中で目線を泳がせ、理解できてないか集中力を欠いてしまった様子を感じることは多い。

お前なんかに何ができる!じゃあ、治せよという意志表示か?同情や思いやりだけでは医療や介護はできない。

脊髄機能損傷者の性機能に関しては、直接患者に尋ねたことがないので知らないのだが、理論上は射精や勃起は可能なはず。コントロールが難しいはずなので、パートナーの方と協力して、おそらくはパートナーが主体となってなら性行為も可能だと思う。精神的には大きな満足につながりうる。女性の患者の妊娠は難しいはずだが、男性患者の子供を作ることは可能だと思う。

 

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