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2012年10月 9日

刑事マルティン・ベック(1976)

- ユーモアとリアルさ -

入院中の警官が惨殺された。捜査すると、この警官は違法捜査を繰り返した残忍な人物と判明。ベックを中心とした捜査が進む中、白昼の銃撃事件が発生する・・・

・・・・マルティン・ベック・シリーズは、いろんな形で映画化されており、「マシンガン・パニック」などのように外国映画になったものもあるので、そっちのほうでは知ってはいた。この作品はスウェ-デン国内の作品らしいが、存在を全く知らなかった。DVD版で鑑賞。

主演していたのはコメディアンだそうだが、確かにニヒルではなく、かっこよくもなく、体格の良すぎる老刑事、現場で犯人逮捕に向かうには不向きという印象の俳優。主役らしい役柄に合致していたようには思えない。

ただし、小説を読んでないのでよく判らない。もともとマルティン刑事は、着実だがスピード感に欠けた捜査をする人物で、部下が早くから容疑者に気づいて繰り返し言っているのに、なかなか気がつかない凡庸な面があるキャラクターなのかも知れない。それなら、スマートな切れ者タイプの役者は合わない。

ごく普通の警部が、警察内部の日常を演じながら捜査し、必ずしもよい結果を出さない、そんなヒネたストーリーは、意外性もあるので受けるのだろうか?そう言えば、倒れた警部の傷口から吹き出す血は、ドロドロしていて非常にリアルだった。良いところも悪いところも真に迫ることが、このシリーズのウリなのかも。

同僚を演じていた警官が良かった。さえない表情で、睡眠不足になりながら、しかもかなり嫌われながら着実に捜査を続け、主人公よりも早く真相に近づいている。二人の会話がおかしい。

捜査中なのに緊迫感に欠けたシーンが延々と続く。犯人を監視しながら、主婦がクッキーを勧めたり、ギャグに近い場面も多い。荒っぽい警官が悪役になるのかなと想像していたら、後半は急に銃撃戦が始まり、しかも結構リアルで、安っぽいアクション映画よりもずっと迫力があった。この急展開には驚いた。

ハリウッド映画とは違う流派に属しているようだ。ハリウッド製の最近の刑事ものは、カンフーアクションが得意な警官が無茶苦茶やって、犯人も一般人も皆殺しにして大爆発なども必ずある。70年代だって、バズーガなどを持ち出して敵をふっ飛ばしていた。この作品は、それに比べれば大人しく、全体的に静かだ。

静かだから、論理を展開する推理小説ものの話になるかと思えば、そうではない。独特のユーモアが漂う、ゆったりした展開。良いのか悪いのか判らない。

おそらく、子供達には受けないだろう。静か過ぎて退屈してしまうはず。恋人と観る映画としても、はたして盛り上がるかどうか、何か感じるものがあるかどうか、よく判らない。別な作り方があったような気がする。

ストックホルムの町か地方都市か、何となく田舎町のような飾り気のない街並みが独特。捜査で立ち寄る家も、ほとんど空き家かなと思えるほど古く、よくハリウッド映画で見るアメリカのスラム街とは違った雰囲気。

70年代のスウェーデンは、あんなものだったのだろうか?イメージとしては、絵葉書のような風景が拡がり、ホテルか家か判らないような瀟洒な邸宅が立ち並び、福祉が行き届いて皆が大人しく暮らしているような感じがするのだが、そう言えばノルウェーでは激しい銃乱射事件があった。福祉が進んでも、治安が安定するとは限らないようだ。

移民や景気問題など、どこでも共通の問題はあって、犯罪も、取り締まる側の行き過ぎも、実際にないはずはない。

警察の室内の調度品は、なんとなく質素。アメリカの警察はごった返していて、映画で写される部屋はたいてい広い。タバコとコーヒーの匂い、犯人達と警官の汗臭い臭いまで見えそうな印象。実際の警察署にも、国や地域による違いがあるのだろうか?

逮捕や救出に向かう手法が、素人くさい印象も受けた。

あの太った警部を、細い紐で吊り下げていたが、無理ではないかと思えた。ヒモが体に食い込みすぎて、それでかえって容態が悪化する可能性も高い。

立てこもり犯罪が起こったら、催涙弾を撃ちまくって動きを止め、遠距離からの狙撃に徹するのが基本ではないだろうか?犯人のそばに忍び寄るなら、同時に別な方向からも行かないと危ないと分かっているはず。

今のアメリカ軍の技術レベルなら、はるか彼方からレーザー誘導の小型ミサイルに催涙弾や閃光弾、粘着物質や強化ゴム弾など、なんでもお好みの物を積んで爆発させることもできるだろう。そばに寄って、わざわざ標的になるのはアホらしい。道具で圧倒したほうが良い。

おそらく現実には、数方向から狙撃するのが最も成功率が高そう。どこかからか犯人が見えるだろうし、下からの催涙弾か煙などでの燻し出しと組み合わせれば、犯人は出てくると期待できる。したがって、これからの犯人はガスマスクと酸素ボンベくらいは用意したほうがいいことになる。

ただし、警察側の計画が失敗し、要領を得ない具合は実にリアルだった。ハードボイルド刑事が格好つけてセリフを言うと、やはりリアルな方向からは外れる。実際の作戦も、あんなものかも知れない。

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