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2012年9月15日

戦火の馬(2011)

Dreamworks

- 名画の雰囲気 -

第一次大戦の戦場に大事な馬を送り出すことになった青年。やがて、馬はフランス人の少女、ドイツ軍を経て、戦場の中間地帯に至るが、鉄条網に絡まって動けなくなる・・・

・・・名画の雰囲気を感じることができた。冒頭から映し出される広大な丘陵地帯は、荒涼としてはいるが絵のように美しい。アイルランドの風景に似ていると思ったが、たぶんイギリスの田舎のほうだろう。舞台として絶好の風景だった。

厳しい地勢で、岩がゴロゴロして畑作に向くとは言えない。そこに這いつくばって生きている貧乏な人達の物語は、いかにも映画的。加えて馬との心の交流、繰り返される悲劇・・・大きな物語になる。

この話は、どうやって演じられたのか解らないのだが、舞台でヒットしたらしい。馬をどうやって演出したのだろうか?人間が着ぐるみを着て演じたら喜劇になってしまう。ナレーションの言葉を馬の側に設定し、人間のほうは一人芝居などで演出したのだろうか?

映画に向く話だった。誰か貴族の広大な敷地を利用して撮影したんだそうだが、なんと無駄な土地の使い方だろうか。固定資産税を目いっぱい取って、子孫に権利が渡らないようにしないと、国の経済がおかしくなるはず。でも、不思議とそうなっていないから英国は耕作地も広大だし、過去の資産が大きいんだろう。

War Horseとは、日本語で言えば軍馬に相当するのだろう。戦火の馬とは、良いタイトルだろうか?

壮大な物語だったが、この話は大ヒットするようには思えない。昔の大作映画の題材にはなっても、今の映画の原作にしては、やや面映いというか、クサイ印象を受ける。興行的にはマイナー路線になりそうな予感が漂う話。よく映画化に踏み切ったと感心。

できた作品は子供にも良い話で、どの子にも何かの感動を生みそうな美しい映画になっていた。家族で観ることが教育委員会から推奨されるような、いわゆる良い映画だが、子供が喜ぶ映画とは言えない。

どぎつい血まみれ死体が出ないと気がすまない人は退屈しそうな作品だから、ひねたティーンエージャーには惨敗的な評価しか期待できない。恋人と観る映画としては、やや真面目すぎるものの、マトモとは思う。受けるかどうか、感動してくれるかどうかは解らない。動物好きには受けるだろう。

ジョン・フォード映画をイメージしていたような印象。夕闇に沈みそうな中、普通ならさっさと家に入ってないと危ないよと思えるような時間に、主人公が帰ってくる。そのシルエットは、さながら西部劇かアイルランドの故郷の家に帰ってきたジョン・ウェインの姿をイメージさせる。さすが名画の雰囲気を感じる。

もし、主人公の恋の話があったら、物語の焦点がぼやけたかもしれないが、人間臭い面や叙情性が増して、より名画に近づいたのではないかと、ちょっと思った。

あるいは、主人公がもっと小さい少年で、馬といっしょに大きくなった、戦地で馬を見つけるのは父親、もしくは兄弟がいて兄は戦士として弟は育て役として深い結びつきを持つ、そんな設定もありえた。少年が出ることで、お涙は確実に期待できるという安易な理由なんだが。

少し重さが足りないような印象も受けた。塹壕戦の苦しさ、恐怖で気持ちが悪くなりそうなリアリティは、子供が観ることを考えて避けていたようだった。血が少ない戦争映画とは、考えてみれば難しい設定だが、私が想像するに、この作品はもともと子供が喜んで観る映画とは思えないので、少し演出をリアルにしたほうが完成度が上がったような気がした。

戦場には多くの馬が引き出されたそうで、イギリスも日本も、多くの軍馬を犠牲にした歴史がある。銃で構えた敵に向かって、騎馬で進むなんて無謀でしかないと思うのだが、当時はまだ騎馬の突撃の戦法から脱却できていなかったんだろう。馬にしてみれば、たまったもんじゃない。

馬に対して愛情を注いだ兵士がいなかったはずはないが、無情に扱われたことに結果的にはなっていただろう。古代のゲルマン人やモンゴル人達は、馬に対して愛情を注いでいたのだろうか?道具くらいにしか考えていなかったのか?

今の戦争は、多くはヘリ攻撃の後に歩兵が出撃することが多いのだろうが、もしかするとヘリが格好の攻撃対象になっているのかも知れない。高性能の小型ロケット砲によって、視界に入るヘリは全て撃ち落される時代もありえる。それこそ、ヘリ側から見えないくらいの遠距離から攻撃されるようになれば、また戦法が違ってくるだろう。

病院勤務時代に、馬と衝突した青年達を診察したことがあったが、馬の腸や便を体中に浴びて血まみれ状態だった。暇な若者達で、夜中に山を飛ばしていて、車で馬をはねてしまったらしいのだが、あの場合はアホな人間には同情できず、馬に気の毒な感情が浮かんだ。

 

 

 

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