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2012年6月22日

スリーデイズ(2010)

- 地味だが良品 -

殺人容疑で逮捕された妻を救うために、脱獄を計画する夫の物語。地味な作品だが、非常に上手くできていた。

教育上はよろしくないと思う。妻や子供のために戦う話ではあったのだが、犯罪を犯していることにかわりはない。犯罪者相手ではあるが、殺人も犯している。気持ちは判るが家族で観る映画ではない。でも恋人同士で観るなら、この作品は実に良いと思う。すべてを愛中心に考えるなら、素晴らしい作品になる。

主演のラッセル・クロウは、グラディエーターで初めて知った俳優だが、その後はヒーロー路線から外れて普通の中年男を演じることが多くなり、そっちの場合の格好悪さが実に絵になるという不思議な俳優。顔はおよそヒーローらしからぬ、体型も中年太り、表情もやや解りにくいし、どんくさそうな仕草が目立つ。でも主人公たりうる。

シュワルツェネッガーのような一方的に敵をやっつけるヒーローでは、やはり作品の質に問題がある。作戦が成功しても、一方的にではなくヨイヨイのやっとといった結果のほうが観客は満足しやすいのかも。いろんなヒーローがいたほうが良い。

脱獄を計画してからも悩むところが自然であり、今までの脱獄を扱った作品よりもリアルだった。迷いがない犯人など、いるはずがない。相当な凶悪犯でも、金を得るために殺人まで犯してしまうことが正しいのか?と、自問しないはずはない。

この作品で殺されたのは、結局は売人やギャングだけだったようだが、実際の場合は巻き添えで一般人が死ぬ可能性はある。そうなると、自分の行為を正当化するのは無理にならないだろうか?普通ならそうだろう。イーストウッド氏はアルカトラスから出たが、真面目な刑務官がクビになったろうし、マックウィーン氏はギニヤの刑務所を出て何人も殺す結果になっていた。可哀相な敵もいたわけだ。

私のような小市民は脱獄できそうにない。身の潔白を訴えて、そのまま誰かにすがるくらいしかできない。潔白を証明する方法がない場合は、泣き寝入りするしかなさそう。誰かを犠牲にしてまで脱獄する気にはなれない。そもそも脱獄は成功の確率が低い。日本の冤罪事件の受刑者達も、結局は出獄後に名誉を回復できたものの、脱獄はできていないし、その危険を冒していない。

エリザベス・バンクス演じた妻が刑務所に居ながらも、意外なほどに元気な笑顔を見せていたのが気になった。ポール・ハギス監督の意向のためだろうか。控訴が難しいと判って、自殺未遂までしてしまうほどの落胆振りを強調しようと思ったのか?でも、笑顔の裏に悲しみや怒りを込めて、表情をコロコロ変えるのが普通の受刑者だろうと思うのだが?

もし、自分が脱獄したものの、子供は連れて行けないと判ったら、いったいどんな反応をするだろうか?車から飛び出して死のうとするか?頭を整理して考えるのに苦労するだろう。

親達だけが外国に逃げて、子供が取り残されたなら、子供の精神には拭いがたい傷が残るに違いない。置いてけぼりを食ったという悲しさや、自分が脱獄犯の子供であるという罪の意識、いじめ、仲間外れも覚悟しないといけない。普通の成長は望みにくい。でも、だからといって死のうとしても、その状況が改善するわけではない。死んだ脱獄囚が親だったということになるだけ。置いてけぼりには変わりない。

一般的に適切な判断は、やはり親だけが高飛びし、子供のことは後で考えるという方針だろう。実際には監視の目があるから、連絡するのは難しいと思うが。

計画が順調にいったと思いきや、子供を連れに戻らないといけないという想定外の展開も良かった。何か計画すると、想定外の事態はよくあるもんだ。そこで主人公が選んだ選択がどうか、そこが盛り上がりにつながった。

 

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