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2012年6月 1日

パピヨン(1973)

Allied_art

- とにかく強烈な印象 -

パピヨンというあだ名の人物が、刑務者から脱走を試みる話。映画らしい映画で、強烈な印象を与える作品だった。

当時の話題作だったが、故郷の村には映画館がないので観れなかった。大人になってから何度か観たはずだが、当直の途中で途切れ途切れにしか観れていなかった。ラストシーンだけ観た時は、何のことやら意味不明の状態。今回初めて全体を鑑賞。長い作品。

作品は長いが、感動が沸く。でも子供向きではないから、今の流行の映画に慣れた観客にはインパクトが足りない印象を持たれるかも知れない。「CGがないねえ。」「何だよ、この主演のサルみたいな男の顔は!」などと酷評されるかも。恋人と観て楽しいとも思えない。

CG映画のような奇想天外な設定ではなく、実話に基づいて物語を作って強烈な印象を与える・・・そのためには、実話の持つ怖さ、俳優の個性、訴える力量、演出で迫力を出せることなどが全て必要なんだろう。

サル顔だが当時の大スター、スティーブ・マックィーンとダスティン・ホフマンが共演しているが、特にマックィーンの演技は迫力満点で、実に男っぽい。今、彼のようなキャラクターの役者はちょっといない。もっとアクションが得意で、カンフータッチの殴り合いが上手い役者は多いし、体格の面でもずっと迫力ある役者は多いのだが、何かが違う。

ダニエル・クレイグやジェイソン・ステイサムがタフな個性としては近い気がするのだが、彼らはマックウィーンより、ちょっと軽い印象も受ける。派手なアクション、鮮やかな技があっても、それだけでは強烈な印象は与えられない。ブルース・リーは派手だったが、物語性のあるストーリーや、斬新な道具もあって印象に残った。殴り合いだけでは難しい。

この作品の中で、独房から顔を出して「俺は思い出せないんだ・・・」と呻く場面は強烈だった。独特の顔貌のせいか、激しい消耗ぶりはさすがに今の若い観客にも伝わるのでは?この場面の演技は難しい。やり過ぎてしまうと、白々しくて台無しになりかねないし、弱々しく見せ過ぎてもいけない。

マックィーンは脱獄囚の役柄が合うようだ。「ネバダ・スミス」でもキャラクター的には近い人間を演じていた。パピヨンのほうが、よりしつこい演技ぶりだったようだ。映画の印象には、彼の強烈な個性が貢献しているに違いない。足を枷につながれたまま移動するシーンの歩き方は年期が入っていた。

齢をとってからの歩き方がおかしい。笑い方も考えて演じているようだ。私の出身地である田舎の老人達も同じような笑い方をしていた気がする。少し笑いがある演出は、映画全体に味をもたらしている。悲劇が続くのは、観てると辛くなる。

モデルとなった原作者も実際に独房に入ったのだろうが、仲間を裏切れなかったのだろうか?

普通に考えると、もし仲間を売ったりしたら確実に復讐される。この作品では相手がダスティン・ホフマンだったから、個人同士の殴り合いなら負けないと思うが、本物の犯罪者相手では安心して寝ることもできなくなる。

したがって、復讐を怖れるから頑張るわけで、友情やなんかは全く関係ないという、なんとも味気ない話にこそ真実の姿がありそうな気がしてくる。でも、それじゃあ小説にも映画にもならない。主人公が頑張って耐えたからこそ、感動につながったというわけだ。

南米ギニアに刑務所があったことは、この作品で知った。ジャングルに紛れて、直ぐに逃げられそうな印象もあるが、原住民に殺されたり、迷ったりで実際にも脱獄は難しかったのかも知れない。私なんぞのひ弱な文明人が入ったら、たぶん感染症で直ぐ死んでしまうだろう。水などはどうしたらいいんだろう?

まず、独房に入ったことも逮捕されたこともないから、相当にショックを受けるに違いない。「どうして自分のようにアホみたいに善良な市民が逮捕されるのだ?」という疑問や怒り、それと生きて帰れるか解らない恐怖、後悔などが精神に影響して、早々におかしくなるかも。

刑務所で自分の精神状態を維持するのは、たぶん相当難しいだろう。日本のようなルールのあるムショなら可能で、かえって規則正しい生活で健康になるかも知れないが、このギニアの監獄はひどい。

途中で原住民に救われるシーンがあったが、よく解らない終わり方で次のシーンに移っていた。印象的な効果を狙ったのかも知れないが、自分には意味不明。全体の流れからもおかしかった。

映画のラストはなかなか味があった。逃亡が成功したことが一目瞭然で解るようなハッピーなラストもありえたと思うが、友との悲しい別れにも焦点を当てたければ、あんな終わり方がベストだったかも。

脱獄の話が多いのは、やはり管理された社会、不当な扱いや束縛から逃れることに我々が喝采を贈るからだろう。「ネバダ・スミス」しかり、「アルカトラス~」、「ショーシャンク~」しかり、本当に多い。

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