映画評

  • 当劇場は劇場主のための映画館です。訪問者を期待しておりません。内容の客観性、正確性は保障できません。でも、真摯な批評を目指します。

劇場主

  • 乙女座 AB型 どの占いでも最悪の運勢 内科クリニックやってます。

Conflict of Interest

  • 特にありません。

おことわり

  • 当劇場は誹謗中傷を目的としておりません。もし権利を侵害されたと感じられた方は、申し訳ありませんが管理会社や公的機関に御相談ください。

« 宇宙兄弟(2012) | トップページ | パッション・プレイ(2010) »

2012年5月26日

ミッション:8ミニッツ(2011)

他人の意識の過去の時間に、8分間だけ戻って連続爆破事件の犯人を捜す特殊任務を受けた主人公は、繰り返し時間をさかのぼって犯人を追い詰めて行く・・・

これは実によくできた作品だった。そもそもの設定は奇想天外なんだが、ストーリー展開には筋が通っていて、悲劇を扱い鎮魂の意味を中心としながらも謎を探索するスリルがあり、しかも見終わった観客には希望を持たせるように配慮されていたようだ。

設定に無理はあったが、SFなんで当然。ある程度は主人公の能力に限界があることが前提になっており、それがラストの微妙な問題 = ラストは主人公の意識の中の出来事なのか、それとも思わぬ副産物を生じたのか曖昧なままで終わるという、凝った内容になっていた。

劇場で公開されていたのか知らない。少なくとも熊本市では大きな広告はされなかったのではないか?DVDを借りたのだが、あんまり宣伝めいたことも書いてなく、主人公役のギレンホールが今まで良い演技をやっていたから、それを期待して借りたのであった。ストーリーが素晴らしいとは期待していなかった。

脚本のベン・リプリーという人のアイディアか、または別のスタッフのアイディアか解らない。とにかく誰のアイディアにせよ、主人公に対して同情を覚えない人はいないだろうと思えるような設定、犯人が簡単に解らない謎解きがスリルと緊迫感を維持していたし、最後は爽快感も味わえた。素晴らしい作品だった。

「デジャブ」も設定は似ていたが、技術的能力に限界があり、運命を変えることはできないんだという重しのようなものは悲しさを演出し、物語としての重みにつながったと思う。「パッセンジャーズ」も意識内部の話であることや、重々しい鎮魂のイメージ、謎解きのスリルなどの点で共通していた。だから独創的なアイディアの作品とは言えない。でも高い完成度を持っていた。

アフガニスタンでは今も犠牲者が多数出ているから、鎮魂の意味を持たせたのは時期を得ていて良かった。悲惨さも表現できていたと思う。軍関係者は嫌な顔をしたかもしれないが。

この作品は家族で楽しむタイプの映画ではないと思う。SFだが、やや重々し過ぎるので、子供の嗜好には合致していないと思う。恋人と観るのは悪くない。恋心が大きく関係している話なんで、感動してくれる人もいると思う。

主人公は、もしかするとジェイク・ギレンホールではなく、女性ファンの多いスターのほうが良かったかもしれない。この作品の魅力はストーリーや設定になるので、たぶんギレンホール以外の役者でも相当な魅力を出すことはできたように思う。ディカプリオなんかだったら、おそらく「インセプション」よりもヒットしていたかもしれない。

ヒロインはミッシェル・モナハンだったが、個人的にはオバサン顔のような感じもした。野心にあふれた、でも実績はない若い女性という雰囲気の女優は他にもたくさんいると思うので、彼女以外でも良かったように思う。見ただけで可愛そうになり、救いたいと思えるような第一印象の強い女優が望まれた。

途中で、鏡に映った自分が違う顔になっていることに主人公が気がつく時、出てきた俳優との動作は必ずしも合致していなかった。細かい点だが、少しシラケた。

いっぽうで、ラスト近く、コメディアンの男が客を笑わせているシーンで時間がストップし、乗客のストップモーションのままカメラが移動していくシーンは、実に悲しみの出る味わいある表現だった。あれは多数のカメラの映像を合成するテクニックによるものだろうか?人形を作ったのか?よく判らなかった。

脳死状態になったと診断された患者さんが、実は特定の刺激には反応することがあると記載されている。ましてや、劇中のように動きが残っている対象の場合は、かなりの神経活動は残っているだろう。ただし、その神経回路に何かの情報通信をつなぐことは難しい。目に見えないほどの細い繊維を介して我々の神経は情報伝達しているのだから、そこにアクセスするためには目に見えないほどの端末が必要では?

情動に関係する脳の基幹部に影響を与えることは可能だと思う。何か知らないが怒りを感じさせる、眠気を感じさせる、恐怖感を持たせる、そんな感情に関することは伝達物質を多く出す特定の回路があるから、ある程度は影響できる。会話することは難しいと思う。

 

 

« 宇宙兄弟(2012) | トップページ | パッション・プレイ(2010) »