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2011年11月20日

感染列島(2008)

- 疲れを知らない主人公  -

新型の感染症が発生した。感染は拡大し、死者が続出、都市機能は麻痺し、避難民があふれ、病院は機能の限界を超えてしまう。救急医の主人公、恋人だったWHO職員らは懸命な対応を図るが、仲間も次々倒れる・・・

・・・妻夫木聡主演のSF。新型インフルエンザ騒動の頃の映画。

ヒロインの檀れいは、ビールのコマーシャルでしか知らなかったのだが大変な美人で、しかもさすがに宝塚じこみで、堂々と演技している感じ。ただし、やや演出がテレビタッチで、心にしみるほどの共感にはつながっていなかった印象を受けた。長いテークで、舞台みたいに芝居させたら、本当に迫力が出そうな感じ。

病院に押し寄せる患者の群れや、患者達の様子は結構リアルだった。過去の、この手の映画では血を吹き出してオーバーに暴れる際に、表情がアップになって苦しそうだったが、視点に注意したのか、わざとらしさが多少軽減していた。

演出は難しい。表現しようとしすぎると、うそっぽくなる。離れて撮影するとドライすぎて味気ないし、緊迫感がなくなる。突き放したかのような、ただ事実を見せるといったカメラのほうが、舌の肥えた観客には受けると思う。

主人公達が度々庭に出て休憩し、会話しつつ、恋心を思い出していたが、本当なら会話もせず疲れきってソファーに倒れこむのではないか?緊張と、睡眠不足、空腹の前に恋愛の意欲も損なわれると思うのだが、主人公達は相当に元気なんだろう。底なしの性欲の持ち主だったのだ、実は!

ところが、本格的なラブシーンがなかった。娯楽作品としては、やや味気なかったかも。もしくは感染が怖くて性行為はできなかった?話すだけで満足せざるを得なかった?

パニック映画で、ヒロイン達が恋を語ったり、ラブシーンを演じたりする時に、うまく場面を挿入するのは難しい。ほとんどの映画ではストーリーから浮いて、無理やりラブシーンが始まるような違和感を覚える。中庭に何度も出て会話するのは、やはり無理やりという印象につながる。仕事をしながら、議論を戦わせながら、緊迫感を失わないままのラブシーンはできないのだろうか?

主人公が、病院の患者をほったらかしにして東南アジアに行って良いのか?感染が蔓延した地域にいた医者が、娘の結婚を祝いにノコノコ来るだろうか?そこで死ぬつもりがなければ、現地に行ってはならない。血を吐いたら自分が感染したことを悟って、隔離病棟に直行しないといけない。

新型インフルエンザが流行しだした時期。空港ではものものしい姿の担当官が体温を測ったり、問診をしたりの騒ぎが起こったが、直ぐに検疫を通り越したウイルスが国中を席巻した。

たぶん、「自分は感染したかなあ?」と何かを感じていたにも関わらず、隔離されたら大変、面倒なことは避けたいという思いですり抜けていった人物も多かったと思う。もともとインフルエンザは熱が出ない人も多いので、検疫で対応できる病気ではなかった。

いかに公的な精神を持った人物でも、あなたが犠牲になって死になさいと言われたら躊躇する。オレだけは助かろうと考える人間が、まさか正直に自分の症状を申告するはずがない。空港で検疫する、感染者を出した学校の校長が謝る、そんな対応は最初から勘違いしていた。

ただし、医者が持ち込むのは明らかに重大な、万死に値するミス。

血清療法については、よく解らない。近所の病院で癌患者に何かやっているらしいと聞くが、血清には求める抗体もあれば、関係ない抗体、抗原も含まれているはず。それが予想外に反応したら、止めをさす結果にならなのだろうか?患者が納得したからやってよいかというと、説明不足で危険度を理解させきれなかっただけという可能性もあり、患者のサインも有効性に疑問が残る。

インフルエンザに対する抗ウイルス薬は、どんどん耐性化が進んでいる。タミフルに対しては2009~2010で既にかなりの割合で耐性だったが、2010~2011のオーストラリアの報告では、既にリレンザでも高度の割合で耐性化しているらしい。新薬を開発しても5年も持たないようでは、製薬会社も考えるだろう。新薬ができなくなる可能性もある。

そもそもウイルスのような小さな生命体は、単純な機序でDNAを複製し発育しており、ウイルスをたたくと人間もへたってしまいかねない。薬も、もともと耐性を生みやすい傾向があるのだろう。今のノイラミニダーゼ阻害剤では限界があるようだ。

 

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