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2011年11月 4日

ユナイテッド93(2006)

- 真摯な描き方 -

同時多発テロでハイジャックされた航空機の、乗客と乗務員、テロリスト達の行動、感情、判断をリアルに描いた作品。

テロリストが悪人としてではなく、敬虔なイスラム教信者として描かれていた点が、米国の作品としては異質。航空管制に関わる人達が、何が起こったのか判断に失敗する様子も非常にリアルで、説得力がある。おそらく本人達へのインタビューなどで、詳細に確認していたのだろう。勝手に描いたら、訴訟沙汰になりそうな内容。

航空管制局らしき職場と軍の連絡が上手く行かない状況が描かれていた。軍の担当官がいない、いても明確な判断は上層部待ちという対応で、戦闘機を発進できない。対応が万事遅れてしまう。あのシーンは、日本の事故対応でもありそうな感じだった。

実際の現場が映画と全く同じだったとは思えない。人は、過去の記憶を自分に都合の良いように加工して記憶しがちである。行動に移れなかった人間がいても。彼には彼なりの言い訳があるはず。インタビューで詳細に真実を聞こうとしても、本人の認識のベールを経た内容しか得ることはできない。

確かに想定外の事件だった。いっぺんに複数のハイジャックが発生し、しかもビルに突っ込むなど、当時の現場で瞬時に予想し、速やかに対応できた人はいなかったろう。ベテランの管制官たちでさえ、事を理解し適切に対応することは難しかったと思う。

私も一機目のニュースの段階では、パイロットの発狂だろうと考え、まあテロの可能性も否定はできないな、くらいの認識だった。見ていたテレビの画像に、いきなり2機めが突入し、その段階で初めて理解できた程度。一般人の想像を絶する大きな計画だった。

この作品の特徴は、とにかくリアルに描いてあること。演出もされてはいるが、根本となる姿勢が真摯な感じ。誇張をまじえて何か商業的な成功につなげようというのではなく、言わば「ドラッガー的」というか、本来の立場に立って意欲を持って仕事をこなし、評価を高めることで成功につなげようという姿勢。

家族一緒に観るタイプの映画ではないと思う。恋人といっしょに観て、いわゆる「楽しむ」といった作品ではない。ドキュメンタリー作品だから、覚悟して観るタイプの映画。NHKの特別番組的な内容。

(民間人への攻撃に関して)

日本人の一員としては、テロリストに独特の感情が沸く。単純な敵、絶対的な悪人として見ることはできない。特攻隊などは、欧米からすれば元祖テロリストのような存在だったと思うから。

ただし、民間人を巻き添えにする点が共感できない。特攻隊も自爆攻撃だったが、敵は明らかな兵隊だったはず。テロという性格ではなかった。一般の航空機に乗り合わせた乗客の都合は無視というのは、特攻隊員でも納得できない話ではないか?

ただ、欧米流の覇権は、イスラム圏の民間人を奴隷的立場に置いているという主張も一定の真実ではあるので、既にイスラム圏の民間人は巻き込まれている、欧米のやることに軍人と民間人の区別はないという理屈も、彼らの頭の中では成り立つのかも知れない。

民間人を戦闘に巻き込まないというルールは、欧米が勝手に定めたもの。実際には祖国の一般人たちは経済的に支配(=攻撃)されている。商売と経済的覇権、影響力には密接な関係にあるので、欧米が何かの影響力を発揮し、実質的に支配することが、攻撃に他ならないという感覚は間違いではない。

(TTP)

最近問題になっているTTP。正直なところ、どういった交渉内容で、どんな契約になるのか、さっぱり解らない。報道規制されているような気もする。影響力を行使し、情報を管理し・・・それは支配の手法。

常識的に考えればTTPに加入して喜ぶのは、明らかに米国側の企業だと思われ、おそらく民主党の首脳部が参加に前向きなのは、強力な脅しがあるからだと思う。関税を撤廃すれば、どう考えても農業には大きな打撃があるし、圧力がかかって、アメリカ流の保険、貯金、医療、年金しか条約に合致しない、法規制をアメリカに合わせないと条約に違反するという事態も懸念される。

つまり、かなりの部分で主権を失うということ。

歴史も地理も無視して経済的障壁を撤廃すべきとは思えない。関税権を手放すと、自国の産業を守る手段を失う。国が政策でもって産業を育成~保護するという政策が、初めから実施不可能になる。高い税率に一定の制限を設けることは理にかなっていると思うが、いっさいの撤廃は最初からありえない。

農業経営の大規模化で対処しようという意見をはく人がいるが、山だらけの日本では最初から限界が見えている。対処できるはずがない。見渡す限りの広大な農地がある国と、棚田が美しい国土の日本とで商品を並べさせることは、明らかに不平等。

輸出企業にとってアメリカとの関税撤廃はありがたい話だろうが、農業を犠牲にすると、安全保障を度外視することになる。食料を半年でも止められたら、どんな国でも耐えるのは難しい。抵抗の可能性すら手放すことになる。それに輸出企業は、もともと国外に出てグローバル企業にならないと生きていけないのが時代の潮流。グローバル企業がどれだけ繁栄しても、国家が破綻して良いことにはならない。

関税撤廃は、国境の撤廃、国の合併を目指すEU的な方向とセットになっていなければならない。その必要性があるのかどうか、自分には解らない。アメリカが合併を意図しているとは、ちょっと思えない。単なる市場としか見ていないはず。

話を戻してイスラム社会。

共産主義が去った今日、欧米の援助は必須ではない。仮に欧米の強い影響がなくてもイスラム圏はやっていけるし、石油がある地域は豊か。石油がない地域は貧乏でも宗教的には幸せな状態で生きていける。欧米流の価値観を持ち込まれることで、精神的には不幸になることも多い。出て行って欲しいと願える状態。

歴史的な根深い対立がある。自爆テロさせるほどの対立。アサシンの伝統がある地域に特有の、過激な戦法も独特の影響を与えているのかも知れない。解決に向かうことは、今の時点では考えにくい。

イスラム圏が急速に社会構造を変化させ、経済活動に熱中し、利害が一致して欧米との対立を避ける方向に向かうとすれば、経済的に順調な状態が続かないといけない。ところが欧米経済の先行きは恐慌さえ予想され、順調とは言いがたい。何か働きかけをしようにも、欧米諸国、投資家ともに余裕がないのでは?

ユーロ圏は、金融安定が最優先で、恐慌を阻止すること以外に予算を使えるかどうか?投資家は、儲けにつながりそうもない国への援助を支持するはずがない。ドバイのような特殊な地域を除き、イスラム圏に資金が流入し続ける可能性は、ちょっと考えにくい。

政府が大きな力を持っている国の場合は、政府を管理すれば国を支配できるが、部族に分かれている地域、軍閥が跋扈する国は管理が難しい。投資の対象ではないと考える。したがって何か大きな事件が起こらない限り、働きかけには慎重になり、効果も不充分な状態が続くのでは?個別のテロを、全て排除することは難しいだろう。

逆にアメリカ側が戦争でもって経済的な問題を解決しようとする動きも、ありえないとは思えない。例をとるなら、恐慌後のアメリカはニューディール政策が成功したとは必ずしも言えない。でも、その後の戦争で失業者対策が成立し、愛国心から予算が動いて好況を確立できた歴史がある。同様の成功を狙う動きがありえるかも。

乗客たちは本当にテロリスト達に立ち向かったと思えるが、最終的には操縦していた人間が飛行機の操縦に失敗しただけの可能性はないのだろうか?どの程度の記録が残っているのか?真相は知らない。

実際に機内にいたら、はたして抵抗しようと考えたかどうか?ハイジャック犯が本当にビルに突っ込むつもりと断定するのは難しい。他のハイジャック機が突っ込んだらしい・・・でも、らしいだけで行動するのか?ガセネタではないのか?・・・そんなふうに考えると、行動に出るのは自殺行為の可能性もある。

何か金銭を要求するだけで、何もしなければ救出されていたのに、余計なことをして全員を死なせてしまう可能性は怖い。今までに体験したこともない、想定外の事件で、思い切って立ち向かうことができた乗客達は非常に勇敢で、勘も優れた人たちだったんだろう。

自分が乗客だったら、おそらく何が起こっているのか理解できないままだったかも。 

 

 

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